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【フィステーラ/スペイン】昨日までの君を苦しめたものすべて、この世の果てまで投げ捨てに行く話

2020年5月13日

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今日の旅の一曲!Bob Dylan の “like a rolling stone “!
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昨日、ついについに、世界の果てフィステーラに到着したおれ。

その崖の下のビーチで出会った若者たちと奇跡のような夜を過ごし、いつもこの浜辺で寝ているのだというドイツ人のオラの隣で、一緒に砂浜で眠った。

目をさますと朝9時。

崖のむこうから上がった太陽の光はすでに強力なエネルギーで大地と海を照らしていた。

近所の散歩のおっちゃんだろうか?犬を連れて1人だけ浜辺を歩いていて、そのワンコが、

「む!こんなところに一週間パンツ変えてない汚い人間がおちてるぞ。」

とくんかくんかしていたようで、その物音で目が覚めた。

オラは…

まだ寝てるか。

…へ!??

寝てるだけよな!??

全然動かんけど!!?へ!??うそ!??

一緒に隣で眠っていたオラだが、寝袋に全身くるまったまま、ほんまに呼吸による胸の動きすら感じさせぬほど、ピクリとも動かない。

え、うそやん生きとるよな!?昨日夜、寒いだろっておれに使ってたクッションを貸してくれて…

それでまさか!!?寒くて!!?へ!?

「お、オラ??」

むくっ!!!

「ひ、ひぃぃ!!!」

「あ、あぁ、もう朝か。グッモーニン。よく寝られた?」

よ、よかった。生きてた。

「はぁ、あまりにも寝相が良さすぎて、まじミイラみたいだったわ。クッションありがとう。おかげでよく練られたよ」

「え?かまぼこでも作ったのかい?ふう、今日もいい天気だね!今日はどうするの?」

「うん、考えたんだけど、おれはここに来るまでが目標だったから、長居するつもりはない。今日もう出ることにするよ。」

50日かけてたどり着いたこの世界の果て。

やっとこさ来ることができたんだから、少しゆっくりしてもいい気もしたんだけれど。

昨日の夜が素敵すぎて、なんだかこのままだらだらとここに居座っていたら、昨日体験した幻のようなフィステーラのイメージがだんだん、リアルに溶けていって美しさを失ってしまうような、そんな直感がした。

べたべたと触れすぎて、完全に輪郭を知ってしまいたくなかった。

初めて触れ合った手のひらのそのぬくもりや優しさ、匂いそのままに、ずっと焦がれていたくなったんだ。

「そうか。素敵な夜をありがとう。バスは村の中心から、10時と3時に出るよ。岬の端の灯台にはまだ行ってないよね?あそこが"世界の果て"フィステーラの、その中でも最西端のポイントなんだ。」

あれこれと聞かずに、さらりと別れを受け入れてくれる。

彼も長く1人で思いのままに歩を進めて生きてきた旅人。この、言葉にできない微妙な心の揺れというか、直感を、ニュアンスで受け取ってくれている気がした。

「ありがと!いい旅を!」

お互い声を掛け合って、男握手して、おれは丘を登り、小さな港町を抜ける。



再び西へ続く山道を歩いた。

彼が言ってた、西の果ての灯台を、最後に見てから行くのだ。

2キロほどの山道をくねくねと海沿いに歩く。

その灯台こそが、フィステーラ(巡礼道)の最終地点でもあるらしく、到達を終えて清々しい顔で街へ戻る巡礼者たちにすれ違い、

「オラ!」

と互いに声を掛け合いながら進む。

アンダルシアから、約1000キロくらいの、とんでもない距離を歩きとヒッチハイクで駆け抜けてきた。

あとたった2キロの道のり。

断崖絶壁の下に広がる大西洋の景色をながめながら、音楽を聴きながらゆっくり、噛みしめるように歩いた。

そして、ついに!!

世界の果て、フィステーラ、その最西端地点に到着じゃぁぁぁぁ!!!!


ポツポツお土産屋さんがあったり、"最西端!"とでも書かれてんのかな?みんなが記念撮影してる石像があったりして、その奥、灯台を回り込むと。


永遠に広がる大海原。

息を飲むほどの、ひたすらの青の世界が広がってた。

水平線の向こうはゆっくりと曲線を描いていて、ここが"地球"というひとつの星なのだと実感させられる。

その遠く見えないアメリカの方向から吹き付ける強い風にのって、何羽ものカモメが気持ち良さそうに旋回する!

とんでもない、100パーセントの自然のエネルギーを感じる。


ここだよ…。

ついにおれは到着したのだ…!!!

世界の果てに!!!

汗でべた付いた服は脱ぎ捨てて、100パーセントの大海原に心を溶かすように、歌ってみた。

ドキリとする。

今までの、ヒッチハイクと路上ライブで駆け抜けた日々や、もらった優しさ、孤独に寄り添ってくれた真っ赤な夕暮れの景色、透明な夜…

全部全部、担ぎ上げて、たどり着いたこの世界の果てで。

それを全部ぶちまける勢いで、ギターを弾くんだ。

大きく息を吸って、吐いて、でもなんか鼓動が高鳴るのがくすぐったくて。

ずっと歌おうと思ってた、pillowsの"この世の果てまで"を歌ってたんだ。

“街のルールに汚されない。今日も奴らロボットみたいだ。

無駄な日なんて、ありえない。そうだろ?はしゃいで、息が切れても。

行こう。今空に高くこの声は突き抜けて。会えない夜も、君に歌うよ。"

その時、まるで奇跡のような美しい景色を見たんだ。

歌ってると、1人の女の子がおれの座ってる崖の方へやってきた。

「オラ」

歌いながら、お互い軽く微笑んであいさつした後、彼女はおれの歌ってる前の、少し下の岩に腰掛けた。

彼女、座禅を組んで、華奢な体をピンと伸ばしてなんかメディテーションのような事を始めた。

気にせず好きに歌ってると、パッと目を覚ました彼女。なにかひらめいたように、バッグから使い古されたようなノートを取り出して、スラスラと文字を書きはじめた。

しばらくして、何か満足したようにペンを止めた彼女、コクリと頷いて、なぜかそのページを丁寧に手で切り取って、折りたたみ始めた。

紙ヒコーキだ。

あっ…

優しく彼女の手から放たれたその紙ヒコーキは、風に乗って、ゆっくり、ゆっくりとどこまでも飛んでいった。

永遠の青の世界、大西洋を切り裂いてく。

やがて海に落ちたのだろうけど、まるで宇宙の果てまで、飛んでいきそうなイメージが見えた。

“聞こえてくるのは君の声、それ以外は、いらなくなってた。

あふれる涙はそのままでいいんだ、もしも笑われても。

行こう。昨日までの君を苦しめたもの全て、
この世の果てまで、投げ捨てに行こう。"

まるで、ミュージックビデオでも見ているように、歌うおれの心と、軽く会釈しただけの、名前も知らない彼女の心とが重なった瞬間。

まぁ、おれが勝手に盛り上がってるだけなんかもしれんけど。

歌いながら、なんか涙が出そうだった。

心の底から、美しいなって思った。

この瞬間に出会うために、歩いてきたんだな、なんてまた大げさに納得してみる。

満足げな表情を浮かべて立ち上がった彼女。

にこりとおれに一度微笑みかけて、立ち去っていった。

またどこかで!

心の奥底まで満たされた気持ちになって、3時のバスに間に合うように崖を下って、街に戻った。

定刻通りやってきたバス。荷物を預けて、乗り込んだ。


行き先はこのエリアの州都になる都市、サンティアゴ、コンポステーラ。

ブルルンとエンジンがかけられて、フィステーラの小さな小さな港町を抜けていく。

くるくるとフィルムを巻き戻すように、死に物狂いで歩いてきた海岸沿いを、この世の果てからすごい速さで巻き返していくバス。

むなしい?

いや。

そんな風には感じない。

儚い夢のようだったけれど、確かにあの時間はこの胸の中に残ってて、愛や喜びや、不安に孤独も全部詰め込んで、キラキラとリフレインしてる。

まるで、長い長い青春映画を見ていたよう。

車窓からの景色が、そのエンドロールみたいで、うとうと眺めた。

ありがとう。

なんか知らんが、この日々の中で、一生忘れられんような、宝物を見つけられた気がするよ。

バスは二時間も走ると山道を乗り越え、やがて、ここ最近じゃ見たことないようなたくさんの建物や雑居ビルが立ち並ぶ、市街地に入っていった。

サンティアゴ・デ・コンポステーラに到着だ!!

無事フィステーラまでたどり着いたので、ペルーリマへのフライトの、二週間後までは稼ぎに重点を置いて、都市間を渡り歩く予定!

歌って歌って、歌いまくって、最後までヨーロッパとじゃれていたいのだ!!

到着したバスから吐き出され、早速おれはギターを担いで路上へ向かった!!

そんなところです。

※10月16日(日)、岡山の老舗ライブハウス、"岡山ペパーランド"にて、この旅のツアーファイナルをやります!チケット2000円(1ドリンク代込)。17:00スタート、僕の出番は19時過ぎの予定です!ゆるい雰囲気の大好きな箱でのライブです。のんびり飲みながら、みんなで音楽に恋しよう!詳細ご希望の方はコメントかtwitterにて!良かったら来てね!

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