【バラナシ/インド】さらばバラナシ!路上ライブとマザーハウスの話
ありがとうバラナシ!!!!
前回の旅の時と同じく、来た時から出る時までずーっと風邪ひいて体調不良でしたが、やっぱなんだかんだバラナシの生身の宗教観と、その中で暮らす人々が生み出す深い深いガンガーという世界観。
これがたまらなく美しい場所だった。
宿で出会ったジャンベ奏者のタカくんと、ダンサーのサトシくん!
二日連続で、3人でガンガー沿いで路上ライブをした。
ファンクとかヒップホップとか音楽理論はようわからんけれど、タカ君の生み出す軽快なビートにマイナーコードのペンタでカッティングを刻む。
感覚で動き出すサトシくん!
ロボットのような、しかし繊細で彼の鼓動が全身から伝わるような躍動感あるダンス。
3人の音と体の動きがキュッっと締まった時がたまらなく心地ちいい。
ダンサーとのセッション、なんておれははじめてだったけれど、彼のダンス、表現者としての衝動に満ち溢れていて、おれは好きだ。
彼らと"表現すること"について語った。
サトシ君は言う。
「ダンスは音楽が鳴ってるからこそ成り立つアートであって、そこを生み出せるって意味でやっぱり音楽は凄いなぁと思います。」
おれにとっては体全身で表現できるダンスの方がすごい気がするけど、なるほど、だとするとダンスも、バンドと似ているのかも。
大学の時バンドをやってて、ギターボーカルなんかするといつも似たようなことを思ってた。
ドラムがいて、ベースがいて、リードギターがいて、はじめてボーカルとして思いっきり表現ができる。
そのメンバーと息を合わせて一つ一つつじつまを合わせていく作業は、時に難しいことでもあるんだけれど、だからこそバンドは面白い。
ダンスって、なんか遠い世界の人たちのものってイメージがあったけれど、同じ表現者なんだって思うと、急に見るのが面白くなった。
またタカ君のビートで、彼に踊ってほしいな。
路上ライブではサトシ君とのダンスセッションの他に、毎回ふらりとやってきてハーモニカを吹いていくイギリス人や、俺たちのメロディに合わせて「ナマーシバーヤー」と威風堂々アドリブで歌いあげたサドゥー風の物乞いとの出会いがあった。
ハーモニカの彼と、アドリブの歌詞でバラナシの歌を歌った。
川の流れはゆっくりだ。
空は青い。
子供達のタコがやけに高くまで飛んでる。
君にも見えてる?
君にも聴こえてる?
歌ってないと疑っちゃうんだ、
笑ってないと泣き出しちゃうんだ、でも
腹から声出せば分かるよ。
あぁ、なんか、間違えたって、たいしたことねぇなって。
大胆に生きようぜ
スニーカー鳴らして行こうぜ
ほら、ちょうどこんなメロディのように。
ラララとサビのパートを歌うと、彼がメロディーをそのままフォローしてきて、すごくいいアレンジだ。
もうどんなメロディだったか、上に書いた歌詞も全然おぼろげだけど、一生に一度しか歌えなかった歌、バラナシで、彼と出会えなければ歌えなかった音楽。
素敵な歌になった。
いつもおもうんだ、あぁ、おれはこいつとここで音楽するために、ここまで旅をしてきたんだなぁって。
とんだ思い上がりかも知らんけど、本当に音楽はそんな奇跡をいとも簡単に運んで来やがるんだ!
ネパールチャリティ募金路上ライブもここバラナシで最後となった。
最後の二日間で計480ルピー、約1000円。
本当にたくさんの人たちが協力してくれた。
この暖かさを忘れず、行くぞ!まってろネパール!!!
最終日にはマザーテレサによって建てられた引き取り手のいない高齢者や障害者の施設、マザーテレサハウス、通称"死を待つ人の家"でちょっとだけボランティアで働かせてもらった。
ボランティアといってもたいしたことはなく、ただベッドの掃除や食事の配膳、食器洗いなどの雑用仕事ばかりだったけれど、本当に必要なのはそういう地味な仕事だとは分かっていたから、ちょっとだけでも役に立てたかなと思うと嬉しい。
おれが受け持った男性棟の施設の中には、歩くこともままならないじいさんや全身の関節が逆に曲がって立てない車椅子の青年、目が白く濁ってしまっている全盲の少年など、症状も年齢もバラバラ。
しかし誰もがなにかしらの苦悩や孤独を抱えてここへ受け入れられてきた。
“貧しさ"とは、お金がないことではなく、誰からも愛されなくなる事です。
というマザーテレサの言葉のように、この施設に受け入れられる条件は金銭的なものは関係ない。
受け入れ条件の唯一の共通点は、一人では生きていけない病気や老いを抱えているが身寄りがない、という点であるという。
おれに仕事を指示してくれてた、管理人のおじいちゃんからそんな話を聞いた。
彼は昔、貿易商としてかなりの富を築いたらしいが、その仕事を退職後、本当に大切なことはお金を稼ぐ事だけじゃないなと悟り、この施設での仕事をボランティアとして始めたらしい。
すごいなぁ。本当に頭が上がらん!
任されてた仕事が終わったので中庭に出て利用者さんたちと、昼食ができるのを待つ。
ただぼーっと待つだけも暇なので、利用者さんたちに話しかけるんだけれど、英語どころか"ナマステ"の挨拶すら通じない。彼らは彼らでそれぞれに、ぽかぁんと空を見上げてるだけだ。
それなら、と、こっそり持ってきていたギターをお手伝いのシスター達に怒られるかも!とそわそわしながら取り出してみる。
いらんおせっかいか知らんが彼らに弾いて、歌って見せた。
ノリノリでstand by me を歌った。
一緒にボランティアに来てた韓国人のにいちゃんが、手拍子をしてくれる。
そのリズムに合わせて、さっきまで無表情だったおやじが、目を輝かして踊り出す。
それにつられて、さっきまで無口だった全盲の少年も踊り出す。
みんなが、足が悪くて立てないおじいちゃんも周りに支えられてリズムをとる。
なんか分からんけど、ちっちゃな奇跡を見せてもらえたような気がして、ちょっと感動した。
ボランティア終了後、帰り際に車椅子の青年、カレンから声をかけられた。
「明日も来るの?」
彼は優しい声で、英語でそう聞く。
「いや、今日だけなんだ、明日はカトマンズに出発するから。」
「そうか、またね。」
「うん、またいつかね!」
またいつか、なんてとても便利な言葉で。
こうやって気が向いたらやってきては去っていく旅人のボランティアたちがよく来るのだろう、彼も慣れているといった感じだ。
しかしたった1日だったけれど、おれにとってはなんかとても濃く充実した訪問だった。
彼らに有益なものを残せたかどうかは知らんが、やらんかったよりマシだ。と変に納得できるものがあった。
それは一方的な思い込みにすぎないかも知らないけれど、あぁだこうだ考えて、結局やらないなら無意味なのだ。
これからも、なにか興味があればどんどんチャレンジしていこうと、そういう風に思う。
出発の日の朝。
ちょっとだけ早起きをして、戦後の日本みたいなメインストリートから
ガンガーに出て、朝日を浴びる。
真っ赤な光が川に帯を伸ばしてキラキラと揺れる。
真っ白な息を吐いたら、
チャイ屋が、ボート乗りが、牛が、
街が動き始める。
おれもそろそろ行こう!
バラナシ。大好きなインドの、ハイライトにふさわしい素敵な街だった。
そんなところです!!!
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