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【クラーゲンフルト/オーストリア】オーストリアにはどうやらカンガルーはいないっぽい話

2020年5月13日

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今日の旅の一曲!コンテンポラリーな生活の “笑え無い日々、笑える毎日"!
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………………..

ベニスから、オーストリア、クラーゲンフルトへの深夜特急は、四人が横になれるくらいの長いすが並んだ、コンパートメントタイプだった。

ギリシャから来たというおやじがなにか話している。

「オーマイガット!ガバメントはおれたちを見放した!病院も年金も今となっては&(@;$:&);,-,……………」

絶望的な経済状態についてなにか語っているが、1マイクロミクロンも頭に入ってこない…

時刻は午前4時!

鉄道の、ガコン!と鳴った音に目をさますと、電車は深く、暗い森を抜けていた!

グーグルマップで見てみると、もうすでにイタリアからオーストリアに入ってしまってる!

さすがEU。なんの入国チェックもなく、21ヶ国目、オーストラリア入国だ…ん?ローマでバチカン市国行ったから22ヶ国目?ん?

まぁええわ………

おやすみ………

おれは再び目を閉じ、眠りの中へ落ちようとしたのだが……

「ヘイ!ウェアアユフロム!??」

「……………ん?おれ?(うわーめんどくせぇ寝かせろよ……)」

向かいに座ったおやじは、おれがジャパンだよ。と寝ぼけまなこで答えると、そこから口火を切ったように、

「おれはギリシャから来たんだが、今おれの国は深刻なプロブレムをかかえていて………!!」

と、延々と語り出した。

勘弁してくれ…とか思いながら、半分眠りの中で、

「イエ… イエ…」

と適当に相槌を打ってたんだが。

ゴゴゴ…

ゆったりとブレーキをかけながら、電車が速度を落としていく。

森が途切れて、なにやら田舎の駅のホームに停車する様子…

外は相当寒いようで、窓ガラスは結露している。

「どこだここ…」

ふわふわの頭で、指で水滴を擦って、ホームの立て看板を見る。

「であるからして!ワーカーのコンディションの改善がガバメントが早急に取り組む事であって……」

「イエ…イエ…(KL….Aguen……

クラーゲンフルト!!!!???」

やべぇぇぇここじゃねぇか!!!!

大急ぎで荷物をまとめて、バックパックを背負う!ギター持って!テント持って!よし!!

「つまりは我が国のみならずEU諸国全体の問題としてソリューションを…」

「ごめんおっちゃんおれここで降りるわ!!さいなら!!」

「さもなくばスペイン、イタリアも巻き込んだ経済危機が…」

どたどた!!!

プシューー!!!

はぁ!はぁ!

あ、危なかった!!!まさに間一髪!おれが降りたと同時にドアは締まり、またゆっくりと走り出した電車。

めんどくせぇと思っていたが、おっちゃんに語りかけられてなかったらおれ完全に寝過ごしてたな。

そんなで、無事オーストリア最初の街クラーゲンフルト到……さむっ!!!!寒すぎるっっ!!!!びやぁぁぁ!!!!

イタリアからほんの5時間電車に乗っただけだと言うのに、山あいの国、オーストリアの早朝はえげつない寒さであった!!

とりあえず、そのまま駅の、暖房の効いたロビーに逃げ込み、コーヒーをすすりながら朝を待つ。

駅構内にはフリーWi-Fi!しかもアフリカいた頃からしたら考えられんほどの高速だ!!

あたりの文字は、イタリアと同じでアルフレッドのままだけれど、Oの上に点々がついたり、HBFだとかJAとか、英語じゃ見慣れない表記が目立つ。

駅のアナウンスの声も、巻き舌ではっきりした響きのイタリア語から、空気を口に含んで話すような、まろやかな響きのドイツ語に変わった。

こんにちわが、チャオ!からグーテン!になり、ありがとうが、グラッツェ!からダンケ!に変わった!

寝てたのもあって、ものすごく近く感じたけれど、明らかにここはもうオーストリアだ!!!

朝6時。

空は明るくなったが、まだまだきんきんに冷えた空気の中、街に出てみた!


とんがり帽子のような屋根の木造の家が立ち並ぶ!

雪国向けの、あきらかにイタリアとは違う街の雰囲気がある。

適当にチケットを買ったこのクラーゲンフルトという街。

思ったより街は小さくて、メインストリートでも小さな商店街が数十メートル続いて終わりな田舎町な雰囲気。

どうやら有名な観光地とかでもないようで、珍しいアジアンに、通り過ぎる人たちも

こんな風に見てくる。

どうやらこのドラゴンの銅像が街一番の見どころみたいだ…

うーぬ、こんなに小さな街なら路上は難しいかもしれんな…とか思いながらぶらぶら歩いていると、小さなマーケットを発見!


切り売りの大きなチーズや、カビ生えまくったソーセージ(そういうもんらしい)、野菜や果物がそれぞれ屋台に並べられている!!

朝早くから地元のばあちゃん達がころころカートを引いてお買い物に来ていて、和やかな雰囲気だ。

リンゴがキロ1ユーロとめちゃくちゃ安かったので、二つ買ってみる!たった50円!

「ダンケ!どこから来たの?」

「ジャパンだよ!」

「そう!珍しいわね、こんな街まで来るなんて!あなたの滞在が素敵なものになる事、願ってるわ!ハバナイスデイ!」

田舎の八百屋のお姉さんでも、英語が超上手!!!

すごい!!もし外国人がおれの地元のJAの青空市場とか来たとして、こんな喋れるおばちゃんいるだろうか!!?

旅先で出会う人達で、非ネイティヴの国でもドイツ人とスイス人はみんな英語を超上手に話してた。

スイスもドイツ語をしゃべるし、ここオーストリアもドイツ語だ。

ドイツ語は英語と似てる部分があるんかな?

卑怯だぜ…!!!

そして、朝ごはんとしてリンゴを貪りながら、人通りがある程度あるのはこのマーケット周りだな。路上やるならここか…

と目星を決めた後、あまりもの眠さに、お昼寝をすることに!

2キロほど西に行くと、湖があった。

針葉樹の森に囲まれた、まるでおとぎ話にでも出てきそうな場所で気持ちいい。

コンクリ舗装もなにもされてない自然のまま残された温かみを感じる。

素敵な場所だ。

…と一応感動のコメントをした後、おれはそのほとりにテントを張り、泥のように眠った。

芝生がマットの代わりになって、優しく体を包んでくれるようで、3時間ぐらい眠った。

気分爽快で目を覚ましたおれ!湖でのんびりしてから、テントの中で新しい路上ボードを作成した!!

路上ボードもろとも、ローマで盗られたおれ。新しいのを作らねば、と思ってベニスで写真をプリントしておいたのだ!

うぬ、昔はこういうボードなんてなにもおかずに歌っていたけれど、あった方がいいなぁと思う。

街中に突然、ギターを置いて歌い出す。

そんな行為を見て、特に海外で路上ライブするとなると当然、「なんだあいつは!?」と、いい意味では関心を持ってもらえるし、悪い方では不審がられる。

“日本から来た"

“世界を旅してる"

“こんな国をまわってきた"

なんて、自己紹介する意味を持ってるのだ。

そんなで、おニューのボードを使って歌ってみるか!と街に戻ってみたんだけれど!

あら!

マーケットがあった場所は、綺麗さっぱり屋台がなくなって、ただの石畳の広場になっている!!!

どうやらあのマーケットは朝だけ開かれているよう。

えーどうしよ…

一応のメインストリートを歩いてみると、そのホコ天通りの終わりにマックがあって、向こうに車道が走ってる。

ホコ天自体人通りは全然なんやけど、マックの前の信号まちで人がたまっていく。

むむ!これはボローニャの時と同じだ!

イタリアでもなかなかいい場所を見つけられず困ってたけど、商店街の、人が溜まる信号前で歌うと、数秒は聴いてもらえる。

それでいいな、と思った人が、くるりと振り返ってコインを入れてグッと親指を立ててくれたりした!

よ、よし!!やってみるか!!

とギターを置いてみるんだけれど…

いかん!!怖い!!!

とにかく小さな街である。

町中みんな顔見知り、みたいなアットホームな雰囲気は、逆に部外者のおれからしたらとんでもない閉塞感を感じさせる…!!

しかし、イタリアよりも物価の上がった感のあるオーストリア!

次の街へ行くためにも、歌わなきゃ…

(こんなとこで、アジアンが何やってるんだ?)

(ギターを地べたに置いてるぞ?まさかここで歌うんじゃないの??)

うぎやぁあまわりの人達がみんなしておれの一挙手一投足をじとりと観察している!!気がする!!

うるせぇうるせぇ!!やってやるんだぁぁぁ!!!

圧倒的異物感のなか、たった一人震える手でコードを抑える!!

震える手でじゃらんとGコードを鳴らして、声を上げた!

見えない空気圧に圧死しそうな心…

しかし一曲目の途中で、買い物帰りのおばちゃんが1ユーロコインを投げながら笑いかけてくれた、その表情で、そんな重さはふわりどこかへ消えて無くなった!!!

2時間ほど歌った!

みんな最初は、なんだこいつ!という驚いた表情を見せるんだけど、すぐに優しい表情をして信号が青に変わる時間、音楽に耳を傾けてくれた!

ベビーカーを押すお父さん、学校帰りの学生、自転車のお兄さん、信号が青に変わったのに、くるり振り返ってわざわざコインを入れに来てくれたOLのお姉さん!

なんだか、街に受け入れられた様な気がして嬉しかったのだ!

結果は44ユーロ、約5400円!!ありがたい!!

スーパーで晩御飯とビールを買い、昼間のレイクサイドでテントを張る、

ドイツが近いからか?ビールめっちゃやすい!!!500の大きなカンがたった50セント!!え!?60円!??そんなでええの!?アル中になりますよおれ!??

一ユーロの激安生ハムをパンに挟んで食べた。

夜はとんでもなく冷えて、寝袋にくるまり、そのまま、中身を出したバックパックに足を突っ込み、なんとか寒さをしのぐ。

オーストリア、この寒さはきついけど、なんとかやっていけそうな気もした。

そんなところです。

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