【ザルツブルク/オーストリア】降り注ぐ憂鬱の雨の話
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昨日、ついにヨーロッパのヒッチハイクを成功させ、意気揚々とやってきたオーストリアはザルツブルク!
路上でもなんとかトータル60ユーロほど稼げたので、うまくやっていけそうな気がしていたのだが…
郊外の草原で、テントのジッパを開けると、しとしとと雨が降り注いでいた。
もうどうしよう…。最近ダメだ、雨が降ってて路上ができない、ただそれだけでものすごく心が落ち込んでしまう。
雨か!なら今日は観光だなぁ!うぉぉ!!
なんてすぐ切り替えられればいいのだけれど、とにかく昔から思い通りにならないとすぐに落ち込むプラスチックの人形みたいなめんどくさい男である。
この日もうつむきながらとりあえず街へ向かう。
途中水たまりに足を突っ込んでしまって、ネパールで買ったニセモノのノースフェイスのシューズはこれでもかと水を吸って、歩くたびに
グシュ!グシュ!
と音を立てて不快。
ちくしょう、3000円で買って、分かってはいたが、
(くそが!全くゴアテックスじゃねぇじゃねぇか!)
なんて、バカなことに気がピリピリしてまいる。
もういっそ脱ぎ捨ててしまいたくなるけれど、ここはバリバリの先進国。
靴を履いていないと暮らしていけない生活のアベレージがそこにある。
当たり前のことなんだけれど、なんか息苦しくかんじちゃう。
冷たい視線なんて関係なく、裸足で子供みたいにかけ出せたなら、少しは晴れやかに生きれるだろう。
どうしようもなく中途半端に、大人なのだ。
ザルツブルクは、川を挟んで、観光地で人で賑わう旧市街と、メインステーションがあって雑居ビルが建ち並ぶ、どこか閑散とした新市街に分かれている。
昨日、旧市街を歩き回った感じ、路上ライブが出来そうな場所は橋の上だったり、アーケードなんてないストリートだったり、雨が降ってもできそうな場所はなさそうだった。
しかたなく、新市街の駅前のマックに入って、雨が止んだらすぐ飛び出せるように窓際のカウンターで街を眺めながら、コーヒーを飲んだ。
しかし、しとしと降りだった雨は止むどころかどんどんと強くなっていって、駅前の広場の石畳をバチバチと叩く音が聞こえる。
ただぼんやりと、そんな雨の降る様子や、タクシーを拾うサラリーマン、相合傘で幸せそうなカップルなんかを眺める。
駅前に目をやる。
なんだろ、ぼろきれを何枚も羽織って、男女、子供も含めて20人近くがたむろしてる。
二階部分が突き出ているので、一応雨が当たらない屋根にはなっているけれど、風にあおられて時折内側まで吹き付けてくるのか、みんな壁にぴたりとそうようにして雨をやり過ごしてる。
男たちは一本のタバコを回し合っていてぼんやりしていて、女性は、はしゃいで水たまりを踏んで水しぶきをあげる子供達を叱りつけている。
最初は、ホームレスかなぁ、ぐらいに思ってたけれど、髪を隠す女性の服装や肌の色から、彼らがアラブ人である事がわかる。
もしかしたら彼らが、シリアからの難民なのかな、と気づいた。
ここザルツブルクは最大の難民受け入れ国、ドイツまで十数キロの、いわば玄関口のような街である。
ドイツの難民受け入れを待つ人達が、ここで足止めをくっているのかな?
ちょっと気になったけれど、嬉々と
「あなた達は難民ですか?シリアから来たのですか?」
なんて聞くのもふざけているし、話すきっかけも見当たらない。
まず話しかけて、なにか支援できるようなものを持ってるわけでも、お金があるわけでもない。
おれは彼らのその姿を遠巻きに眺めるだけだった。
その、無関係を装う心こそが一番の悪だという事にも気付いているだけに、胸糞は悪い。
彼らがこうして、住む場所も見つけられずにひたすら駅に滞在するような状態のヨーロッパで、おれは路上で歌って稼ぎ、娯楽だけを求めた旅をする。
彼らが命がけの旅を続ける、そのすぐ隣で。
おれは間違えてないか?
なんて考え出して、自信がなくなる。
おれは昨日60ユーロ近くを稼いだ。
ヤフーニュースに載ってた、ドイツの難民への仕事支援で、彼らに与えられる給与は時給1ユーロだと書いてあった。
不公平すぎるよな。
まぁ自信がなくなったところで、おれはおれのやり方を辞める気はない。
やりたい事だから、自分の人生に嘘はつきたくない。
でも、それがもし誰かを傷付けるのなら、それはとても悲しい。
なんだか考え出すと悲しくなって、自分を納得させるために、余裕がある日本の銀行口座から引き落とせる、ネットの募金を少しだけ、する。
難民支援の力になりたい!っていう信念からじゃなくて、ただただ、自分を肯定したいだけの行動。
まわりくどいよな。
目の前の彼らの元に駆けつけて行って、ぎゅっと抱きしめたほうが、いくらか美しい事のような気もする。
“やらないよりマシ"
っていう言葉だけが救い。
おれは所詮うわべだけの人間だ。
みんなで難民問題について考えよう!とか、そんなんじゃなくて、ひどくじめじめした閉塞感にあふれた1日にも意味を見つけたくて、無駄にしたくなくて、日記に書く。
この葛藤も全部、旅に出ないと出会えなかったかもしれないから。
そんなところです。
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