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【カルデスデルイス‐パドロン】サンティアゴ道に恐れおののくおのののかかな話

2020年5月13日

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今日の旅の一曲!くるりの “ロックンロール"!
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………………..

世界の果てを目指すヒッチハイク旅!

都会だったポンテベドラを出てひたすら北へ歩き続けること2日!

おれはカルデスデルイスという小さな田舎町の外れ、完全なる山の中で目を覚ましたのだ!

昨日はどの店も閉まってしまう日曜日だったのもあって、北へ向かう幹線道はほとんど車通りもなく、ヒッチハイクを諦めてひたすら5時間歩き続け、たどり着いた場所である。

おらぁぁおれには時間がねぇんだ!!何としても2週間後の飛行機までに世界の果て、フィステーラまで行って、空港のあるマドリードまで戻らにゃいかんのだ!!んでその頃までにはできてるであろう小柄で気取らない笑顔が素敵なブラウンアイズの彼女を出発ロビー前で抱きしめながら、

「セニョリータ。たとえ僕たち二人の間に"距離"という邪魔者が現れたとしても、そんなものはこの世の果てまで投げ捨てに行こう。あの日、フィステーラで眺めた夕日のようにね。」

「ええ、きっとよ。」

「あぁ、きっとさ。」

とか言わないといけないのだ!

あぁ忙しい!!おれ世界一忙しい!!急げ急げ!!!

と、ふしだらな衝動に急かされるままにおれは幹線道に立った!

ノートに書いた名前は、ここから20キロ先の町、パドロン!

地図で見る限り、ある程度の街のサイズなので、行く人も多いはず!!もしかしたらヒッチハイクがきっかけでブラウンアイズと…どぅふふ…

希望にHカップまで胸膨らませ、ワコールにおニューのブラを特注したりしながら意気揚々とやって来る車を待つんだが…!!

来ない!!!!!!!!!!

こ、こないぞ!!!??

巨乳フェチの変態キモオタの読書のみなさんにはことわっておくが、来ないのは特注のブラの方ではない!

車だ!!

なんで!!?昨日は日曜日だったから車通りがないのは仕方ないと諦めたが、今日はバリバリの月曜日である!!

この朝の出勤ラッシュの時間帯!いくら田舎道と言えど、どう考えてもポツポツとは車通りがあってもいいもの!

それがほんとにマジにリアルに、5分に一台とかしか車がこんのだ!!!

ええええええええ!!!!

なんで?え!ま、まさか今日祝日とか!!?

…いやいや!!

そない事言いましても奥さん!ついこないだも祝日あったし、いくらおやすみ大好きなスペインでもそんな頻繁に祝日に当たるわけが…!

さてはワコールめ!発注取り違えたか!?別の店舗に発送してるんちゃうか!?くそやろう!!クレーム入れてやる!!

分かりやすい伏線をおきつつ、訳のわからない言いがかりをつけたおれは考えていた。

(ちくしょう!こんなもん待ってたら日が暮れる!!ヒッチハイクがダメなら歩くまでだ!おれはアンダルシアを150キロも歩いてきた男なんだ!20キロくらいなんだってんだ!なめんなよスペイン!!かわいい女の子に首筋を舐められる以外、こんな事でなめられてたまるか!)

おれは勇んで歩き出した!!

(え…でも、"分かりやすい伏線をおきつつ…"ってなんのことなんやろ?)

という淡い疑問もガリシアの爽やかな風に吹かれて忘れ、森を行く国道沿いを歩き出すのだけれど…

ぐぎゅぅぅぅ…

豪快にお腹がドラミングする。

腹減った…

昨日が日曜日だったので、スーパーで食料を買うことが出来なかったおれ。

昨日1日で保存食のパンとトマトをかじっただけで、あとは水しか口にできてない。

もちろん今日は朝からなにも食べられていない。

うーぬ、腹減った…早くパドロンまでたどり着いて、スーパーでご飯を食べなければ、お腹と背中がセニョリータしてしまう…

歩けば歩くほど体力は消耗していく訳であるが、しかし歩かなければ街にはたどり着けない。

残酷な反比例を続けるライフポイントの方程式を気合と根性で捻じ曲げながら、おれは焼けたアスファルトを進んでいくんだけれど…

うげげ!!す、すごい坂だ…

目の前には、そんなおれをあざ笑うかのように、そそり立つ壁を登るような坂道が見えてくる…

まじかよきちぃぃ…

たじろぎ、立ち止まってしまったおれ。

その時である。

イェェェェイ!キャホォォ!

(む。)

なにやらクラスのカースト上位のDQNたちのような、やんちゃな若者たちのはしゃぐ声が聞こえてくる。

本能的に身を隠した陰湿カースト漏れ青年のおれ。

茂みから見えたのは、中学生くらいだろうか、リュックを背負った若者たちが数人づつのグループになって、国道から10メートルほど外れて並行して伸びる、未舗装の林道のような小道を歩いてる。

みんな、お揃いのホタテのような貝殻のアクセサリーをカバンにつけてて、女の子同士おしゃべりしたり、そんな彼女らに男子が持ってる水鉄砲でイタズラしたり、なんとも青春な絵を醸し出している。

少し先には、大人が彼らを振り返りながらなにか言ってる。引率の先生かな。

そう、どうやら見た感じ、中学の遠足かなにかっぽい。

(こんな田舎のなにもない山に遠足とは、DQNプギャー!( ^ω^ ))

とほくそ笑むおれであったが、その小道をよく見てみると、看板が立ててあるのが見えた。

看板には、"カミーノ・デ・コンポステーラ"という文字。

コンポステーラとは、おれが今向かってるパドロンのさらに北、100キロほど先の都市の名前である。

そして、カミーノはたしか、巡礼道のこと!

あぁ、ここがサンティアゴ巡礼道か!!

スペインには、四国お遍路歩きのような、有名な巡礼道があって、そのゴールにあたる街が"コンポステーラ"なのだ。

巡礼者は、全長500キロにも及ぶ専用の巡礼道を歩き、各地で礼拝をしてスタンプをもらいながらコンポステーラを目指すというわけである。

なんか聞いた話によるとコンポステーラから北スペインを抜けて南フランスまでその道があるという話だったけれど、コンポステーラから南に、ポルトガルへ抜けるルートもあるとか、こないだのバーのおっちゃんが言うてた。

これがそれということか。

この巡礼道も北へ向かって伸びているわけで、目的地のパドロンも通るはず。

ものすごい坂道の国道とは外れるように伸びていて、見る限りは平地が続いていていくぶん、歩きやすそうだ。

しかし、以前、スペイン南部アンダルシアを歩いた時である。おれはこの巡礼道を歩くことをこんな風に書いていた。

“整備された道、安全が保障された旅路を仲良しこよしで歩くなんてそんなの旅じゃねぇ!男は黙って未開の地を行くものなんだよ!!!"

そして500キロを歩くこの巡礼道からしたら近所のコンビニ行くぐらいの、150キロという距離を歩いて悦に浸っていた、アブノーマルなことするおれかっこいいアピールが鼻に付く系ブロガーのおれ。

そして、今も思っていた。

(へ!こんなのやっぱり中学生の遠足レベルだったんだろ!まったく、みんな仲良くゴール目指して頑張ろー!なんて、しゃれくせぇんだよ!男は黙って国道沿いよ!!)

そして一瞥をくれたおれは、進むべき国道に目を向けるのだが…!
国道は直角に折れ曲がっとるんちゃうかという急な坂道が続いており、焼けたアスファルトからは陽炎が立っている。

(………ふう。まぁたまには庶民の暮らしぶりを拝見するっていうか?経験として、巡礼道とやらも歩いといてやるか。生ぬるい道のりならすぐ国道戻ってやるからな!覚悟しやがれ!!?)

いろいろとブログでの体裁を保ちつつ、おれは国道のガードレールを超えて、土埃立つ巡礼道を歩き出した!!!

巡礼道は、見える限りは平地が続いていた。

歩道専用なので猛スピードで飛ばす車を気にする必要もなく、歩きやすい。

(おいおい、こんななまっちょろい平たんな道でおれが満足すると思ってんのか!?おいこら!もっとこいよ!?がはは!!)

しかし、こんなおれの言葉が通じたのか…

10分後。

あじぃ…

最初ばかりは平地の続く緩やかな田舎道を進んでいた巡礼道であったが、どんどんと森の中に迷い込んでいくかと思うと、勾配も急になってぐんぐんと坂道を登りだした!

あたりはターザンやらバービーやら、なんか得体の知れない生き物でも出てきそうな森に包まれる!

地面は石ころだらけで歩きづらく、アスファルトのほうが三億倍ぐらい楽である。

(おいおい、まさかこんなに困難な旅路だとは…!!これで500キロ!!?なんなの?巡礼者ってみんなオリンピックメダリストかなんかなの?ひぇぇぇ…)

とおそれおののきながらも、

「ふっ…ちょっとはやるじゃねぇか…」

などと誰も聞いてもないのにぶつぶついいながら、ゆっくり、ゆっくりとおれは北へと進んでいった。


そんなで、予想をはるかに上回る険しい悪路に空腹と戦いながら、歩き続けたおれ。

森の中を抜け、下り坂に差し掛かろうとした時。

ザザザザ….

む。なんか爽やかな水の音が…

川だ!!川がある!!

木々の生い茂る斜面を、転げ落ちそうになりながら下ると、そこには飲めるんちゃうかぐらいの抜群の透明度の川が勢いよく流れてた!

うぉぉ最高!!

すぐさま、牛乳拭いたあと三年洗わなかったぞうきんみたいな芳しい匂いのするTシャツを脱ぎ捨て、

バシャン!!

と飛び込む!!

うぎやぁぁ冷たいっ!!!

きっとすぐそこの山の頂上らへんから湧いてきてるんだろう、心臓止まりそうなくらい冷たな水が、歩き疲れて火照った体を急激に覚まして、極上の心地よさ!

四半世紀ぶりにしっかり体も洗って、体中についていた汚れや泥やセミの抜け殻もスッキリ落として純白のバディが帰ってくる!!

最高!!


こんな大自然の中で、こうやってシャンプーして、岩の上で日光浴しながらタバコをふかす…

こんな贅沢ってないぜ!

なんだかんだ、おれは自然が好きなんだなぁ、なんて実感しながら、川の流れや、そこらに飛んでいる青や緑の、キラキラしたボディのトンボなんかぼんやり眺めるんだけど。

ぐぎゅぅぅぅ…

お腹が、もたもたしてないで早く行け!と急かす。

いかん、行かねば!こんなところでのたれ死んだら確実に30年は誰にも見つからん!

再び崖を、ツタを握り締めながら這い上がって歩き出したおれ。

山道を抜けた頃、さっき見つけた中学生の集団に追いついたようで、彼らの背中を見ながら歩く。

夜のピクニックって本を読んだことあるけど、学校の遠足でこうやって何百キロも仲間達と歩き続けるって、なんか青春だなぁ。

あれなんやろな。ペアになった女子と、なんか急に親密になって、恋が始まったりするんやろな!

(どすこぉぉぉん!!!!)

「あいた!」

「あ!大丈夫、ゆうきくん!?」

「ち、ちょっと足くじいちまって…ちょ、ちょっと休んでく!大丈夫!鈴木!お前はおれはおいて先行って!」

「行けないよ!立ち上がれない!?どこ、みせて!…あぁ、足首、すごく赤く腫れてるよ!?しかも、セミの抜け殻までついてる!すぐ保健の先生呼んでくるから!」

「ば、ばか!やめろよ!」

「なんで!?すっごく痛そうだよ,,」

「いいよ!こ、こんなのなんでもねぇよ!!」

「で、でも!すっごく腫れてるもん!せみの抜け殻だってついてるし…!無理しないほうがいいよ!?」

「う、うるせぇ!だってよ…保健の先生来て救護車で運ばれちゃったら…

…せっかくお前とペアになれたのに、もったいないだろ…?」

「えっ…!?」

「な、なんでもねぇよ!とにかく、ほ、ほら!もう立ち上がれるから!行こうぜ!」

「う、うん…。」

足を引きずり強がるおれを心配して、そっと手をつないでくれるちなみ。

足の痛みは本当はすぐおさまってたのだけれど、まだ痛むふりをして、しばらくそのまま、歩いたんだ…。

みたいな!!!!!みたいな事になるのか!!!ぷひよぉぉぉ!!!

うぉぉぉおれの青春!!おれの青春カムバックーー!!!!!!!

と鼻息粗めに彼らの背中を見ていたんだけれど、うむ、まぁもちろんおれにも彼らと同じ時代があったわけで。

でも理想の青春時代と現実なんて、月とキャベツぐらい離れてるわけで。

しばらく見てると、なんだか自分の中学時代の、クラスの雰囲気とか思い出す。

大げさにゲラゲラ笑いながらはしゃぐ男子グループ、何かを熱く語ってる女子グループ、いきったサングラスで半裸になって、イケイケ女子達にからんでくDQN達、邪険に扱いながらも、どこかまんざらでもなさそうな女子達、おれはお前らとは違う!なんて決め込んだように一人黙々と歩く痛いやつ…

中学生の行動スタイルなんて、どこも一緒だなぁ、なんて思う。

みんなそれぞれに威勢を張って、必死に自分を守ってるんだ。

社会のルールにあらがったり、なんでもクールにこなしたり、クレイジーでファニーなヤツだったりを、必死に演じてる。

大げさにケラケラと笑って見せるその手のひらににじむ汗が、震えが、弱さこそが、青春そのものなんだよな。

おれもそういや、中学の時こういう行事あったな。

林間学習みたいなので田舎の海辺で3泊4日の合宿があったわ。

いろいろ思い出す。

地元の漁師さん達と地引網漁をみんなで体験して、そん時獲れたスズキやアジやが夜のご飯で味噌汁に入って出てきた。

おれは腹も減ってたし、さっき捕れた魚だぁぁ!と思ってテンション上がってうまいうまい!と思いながらもくもくと食べてたんだけれど、クラスの中心的なヤツらが、

「これ、骨多くて食べられんよな!なんか生臭いし!」

とか言い出してほとんど手をつけずに残すと、みんな

「ほんまそれ!おれも残そー!」

なんて右にならえでみんな残したんだよな。

おれも、ほとんど食ってしまった自分のおわんを見て、

(しまった!恥ずかし!)

なんて思ったのを覚えてる。

ばかだなぁ。

前にも書いたが、おれはこのころいじめられてた頃なので、余計にそういうクラスの空気を読んで、はみ出したことはしたくない!って怯えてたんだと思う。

でも、そういうくだらんしがらみの中で、ほんの少しだけれど暖かな気持ちにさせられたことも、この林間学習ではあった。

最終日だったかな、5人ずつぐらいのグループに分けられて、森のいたるところに貼られてるキーワードを地図を頼りに集めてくる、みたいな、ちょっとしたグループワークみたいなのがあったんだ。

(当たりませんように…)

なんて願ってたけど、運悪くおれはいじめっ子DQNグループの中の一人とおなじグループに割り振られちゃって、いつ殴られるんかとおびえながらのこのこみんなに続いて歩いてた。

開始後しばらくして、前を歩いてた別のグループの奴らと合流するような形になった。

学級の中でもズバ抜けて悪い不良の親玉みたいなヤツがいるグループ。

おれは怯えていた。

(エェーもう最悪!絶対なんかやられるやん!)

と半泣きだった。

その親玉が、みんなの前で突然「こいこい!」なんて言って、道端のネコをおびき出したかと思うと、近寄ってきたところでばこん!と蹴り飛ばしやがった。

「ギャハハー!!!!」

悲鳴をあげて逃げていくネコを指差して、みんなに見せびらかすように、または、

(お前らも面白いと思うだろ?笑えよ?笑って賛同しろよ??)

とでも言いたげな、サルのマウンティングにも似た下品で強要じみた笑い声を上げる。

もちろん、みんな苦笑いで同調しかない。

おれも、最低だなこいつ。と思いながらも、苦笑いしてたと思う。というかまずその集団の枠の中に入っていなかったやろうな。

そんな時だった。

おれと同じグループのいじめっ子のやつがただ一人、急に冷めた声で言った。

「ネコ蹴るとか、サイテー。なに考えとん。」

行こうぜ!なんて言って、親玉のグループからおれらグループを引きはがして、歩き去っていく。

えっ??…

びびった。

おれはてっきり、こいつも親玉の手下だろうとばかり思っていたので、そいつの口からそんな言葉が出たということが驚きでならんかったし、長いものに巻かれなければ死を意味するこの社会の中で、そうやって言えるのが素直にかっこいいと思えた。

まぁ、今思えば(ネコ蹴るのはダメでおれ殴るのはアリなんか!)という心の叫びも湧き上がって来るが、単純なおれは、その時だけはそいつの事を少し、好きだなぁなんて思わされた。

その後そいつが不良グループからハブられたりとか、なんかあったのかは、カースト外のおれからしたら知る余地もなかったが、その時思ったんだ。

人間、悪いところもあれば良いところもあるんやなぁ、と。

できたら、どんなやつにも良いところを見つけ出して、すべての人を愛せられたら、幸せなんだろうなぁ、なんて。

なんか、前を行く中学生たちを見てると、そんな痛々しい淡い記憶が次々とフラッシュバックしてきてまいる。

カムバックおれの青春!!なんて言ってたけど、いいや。

おれはやっぱり、過去には戻りたくないわ。なんだかんだ、今が好きだ。

そうやって、明日も明後日も、50年後も素直に思えてたら、きっと幸せだ。

そんなで、休み休み土ぼこりをまわせながら、なんとかアスファルトの国道沿いまで戻ってきて、さらに歩き続ける事、合計5時間!!!!

ついに…

ついに到着だ…

おれはついに、20キロの道のりを歩ききり、そこそこの町であるパドロンに到着した!!!

ぐぎゅぅぅぅ…

もう限界!もう限界でごわす!!

昼間、立ち寄った集落で、唯一の小さなカフェがあり、コーヒーと、それについてきた砂糖を舐めただけである。

もうだめ!はやく!!速くスーパーでなんか買って食べなきゃ!!!!!!

えっ!!??

ここも!!??

こっちも!!??

なんで!!!????

おれは驚愕した。なぜだ!??どのスーパーもシャッターが閉められてしまっている!!!パン屋やレストラン、その他の店もほとんどがシャッターを閉めてしまって、街はがらんとしてしまっている!!!!

…嫌な予感がした。

さっき、未来のおれが言ってた伏線ってまさか…

「あぁ、今日はホリデーさ!明日までお店は開かないよ!はっはっは!」

祝日に浮かれた行きすがりのおっちゃんは、笑顔で連続殺人犯のような事を言う。

おれの顔は顔面蒼白。漫画だったら石になってピキキ!と割れて砂になって消えていくやつである。

ま、まじかよ…

この前も祝日やったやん!!どんだけ休む気!?まじどっこも店開いてないんやけど!!死ぬ!!マジガチンコ飢え死ぬ!!!勘弁してくれぇぇぇ!!!!!おえぇぇ!!!

伏線回収を無事に終了したおれは、ふらふらと魂の抜けたしかばねのようにさまよい歩いた…。

気づけば、フィステーラを目指す、西へ向かう山道を登り始めていたおれ。

本当に腹減った…もう何も考えられん…

極限状態の中、とにかく進まねば!という思いだけで必死に坂道を登った。

今思えば、祝日でも個人営業のカフェやレストランは開いてたりするので、パドロンの市内で探せばどこかしら開いてたのだろうけれど、この時の俺は、そんな事を考えるエネルギーすら残っていなかった。

ただひたすら、ぼんやりと消えそうな希望を追いかけるように、次の街を目指してよたよた山道を登る。

本当に、本当に空腹って辛い。

俺はとてもノーマルな日本人なので、今までの人生で、食べられないほどの貧しさや食べ物を買えないような状況を経験した事がなかった。

けれど旅を始めてから、こういう店が閉まったケースなんかで丸一日食べられない!みたいなのをたまに経験するようになったけれど、本当にきつい。

きっとイスラムの断食も、こういう気持ちを忘れないためにあるんだよな。

いつも地元に帰ると、戦争世代のばあちゃんが、

「ちゃんと食べよんな!?お腹すいてないんな?お菓子あるで!?」

なんて聞いてきてた気持ちがよくわかる。

飢えは苦しい。

でも、今も世界中の三人に一人が、毎日満足に食べられない状況にあるという。

飢えないことは当たり前じゃないんだ。

当たり前に三食食べられるという幸せを、少しは感じられるようになったかもしれない。

1時間ほど、しばらくひーこらと山を登ると、アンテケーロという、小さな村に出て、

や、やったぁ、カフェが開いてる!!!!

「はぁ…な、なにか…なにかフードはないですか…」

「に、2ユーロでサンドイッチなら出来るけど…」

「ぐださい…サンドイッチ、たべさせてくだざい…うぐ…うぐ…」

突然小さな集落にやってきた怪しいアジアンに驚きながら、お姉さんがチーズとハムの挟まったホットサンドを出してくれる。

うま…うまいぃぃぃ!!!!!!

たぶん、なんでもないただのホットサンドなんだけれど、とんでもなく、とんでもなく美味しかった。

たぶん、世界一美味しいご飯は、一流ホテルのレストランでもなけりゃ高級なディナークルーズでもなくて。

遭難した山小屋の一枚のチョコレートであったり、砂漠で飲む一杯の水であったり、ひさびさに実家に帰って食べる母さんの味噌汁とご飯だったり、するんだろうな。

ごちそうさまでした!


暮れていく山の中で、テントを張って、今日1日を振り返る。

空腹の中で歩きまくって、超絶ハードな1日だったけれど、なんだかたくさん考えさせられたいい1日になった。

こういう感覚のなかで出会える、素朴な、純粋な幸福感を日本に帰っても大切にして生きたい。

そんな風に思うんだ。

一番星が輝いて、綺麗だった。

そんなところです。

※10月16日(日)、岡山の老舗ライブハウス、"岡山ペパーランド"にて、この旅のツアーファイナルをやります!チケット2000円(1ドリンク込)。17:00スタート、僕の出番は19時過ぎの予定です!ゆるい雰囲気の大好きな箱でのライブです。のんびり飲みながら、みんなで音楽に恋しよう!詳細ご希望の方はコメントかtwitterにて!良かったら来てね!

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