中華圏のお盆に行われる『死者に見せる舞台』神功戯には気をつけろ!って話【恥ずかしい旅の思い出】
ネイホウ!ぼっちシンガーです。
路上ライブで世界一周の旅などを経験し、現在は東京で音楽活動中。
旅と音楽、香港人妻氏との日常などを語るブログだよ!
皆さんにはあるだろうか?
『今すぐタイムスリップして、あの日の自分を止めに行きたい…』
そんな、思い出すだけで恥ずかしい失敗の思い出は。
おれは、ある。
数年前、マレーシアを旅していた時に、顔を覆いたくなるくらい恥ずかしいとある失敗を犯してしまった。
しかも、「それが恥ずかしいことだった」と気づいたのは、ずいぶん時間がたってからだったんだ…。
その失敗に気づいたのは、香港人妻氏と香港の文化博物館みたいなところを見に行った時のこと…
もくじ
香港などで行われる中華圏のお盆『鬼節(クヮイ・ツィ)』とは?
その日はミニチュア模型で香港の文化を学べる展覧会を東京でやってて、妻氏と見に行ったのだ。
なにやらカラフルな舞台演劇会場みたいなのの展示を見ていると、香港人妻氏が言う。
これは香港版オペラみたいなやつや。
香港ではこういう舞台演技をお盆にやる風習があるんや。
ほぇぇ、香港にもお盆があるんですねぇ!
なんでも、香港にも『鬼節』、広東語読みで『クヮイ・ツィ』というお盆にあたる期間があるらしく、
その時期は日本と同じようにあの世(地獄の門)から死者の霊(鬼)が返ってくると考えられているそう。
香港では正式名称で盂蘭勝会(マン・ラン・セン・ウイ)と呼ばれ、かつては古く南北朝時代からの文化だったのだが、中国本土では毛沢東の文化大革命による弾圧で消失、
今では香港や台湾、東南アジアの華人圏など、中国共産党の影響を受けなかった中華圏の国々を中心に継承されているのだそうだ。
旧暦の7月15日を中心に4日間ほどが鬼節の期間にあたり、この演劇のような祭事や、悪霊たちを鎮めるため、ペーパークラフトを道路の隅で線香とともに燃やし弔う儀式『焼街衣』などが町中で行われる。
こんな風に、日本とは似てるようでちょっと違うお盆の文化を持つ香港。
ちなみに、日本でも「お盆には海に入るな」って話があるように、香港でも、
・霊が怒るので、「焼街衣」の燃えカスは踏んではならない。
・眉間には霊を退治するパワーが宿るので、眉間を髪で隠さない。
・妻が鬼嫁になるから鬼節に結婚してはならない。
などなど、『鬼節時にやってはならない』タブーが多数存在するらしい!
ただし我々は冬に結婚したにもかかわらず妻氏は怖いので、結婚に関しては根拠のない迷信である可能性が高いとみている!
そしてもう一つ、鬼節に披露されるというこの伝統舞踊についても、犯してはならないタブーというのが存在する。
それが、
・客席の一列目は空けなければならない。なぜなら、この踊りは鬼(霊)に見せるものだから。
というものだ。
お盆に行われる死者に見せる舞台、『神功戯(サン・ゴン・ヘイ)』とは?
この、香港で鬼節に行われる伝統オペラは『神功戯』、広東語で『サン・ゴン・ヘイ』と呼ばれ、
古代中国から受け継がれる恋バナや笑い話など様々な演目を、芝居役者が演じたり、人形劇で表現したりするそう。
日本でいうところの歌舞伎みたいな感じか。
面白いのは、これらの舞台は人間ではなく、『鬼(幽霊)』に見せるために行われている、ということ!
地上に降りて来た悪霊たちに芝居を見せて楽しませることによって、彼らが人間界に悪事を働かないようにさせるのが目的らしく、
鬼節に合わせて行われる舞台初日は完全無観客で霊のためだけに開催し、2日目以降も霊が座るため客席の最前列は必ず空席にしなければならない、
という不思議なしきたりが存在するのだ!!
この季節になると舞台会場だけでなく、街中の広場とかいたるところで演劇をやるんや。
初日は幽霊のためだけの舞台やから、誰も観客のいない芝居を見たら、そっとその場を離れないといかんのやで。
・・・・。
そんな話を聞きながら、おれは数年前、マレーシアのペナン島で体験した不思議な夜の出来事を思い出していた…!!
そして、思い出せば思い出すほど恥ずかしすぎて、
今すぐタイムマシンに乗り込んではあの日のおれを黙らせに行きたい衝動に駆られるのであった…!!!!
そういや、昔ペナン島で…
それは、マレーシアのマレー半島に位置する島・ペナン島を旅していた時のことである。
夜10時とか回っていたと思う。
旧市街を一人で散歩していると、路地の少し開けた広場みたいなところに特設ステージみたいなのが出来ていて。
何だこりゃ?と見ていると、爆音で音楽が鳴り始めて、ステージ脇から中華風のお化粧と豪華絢爛な衣装をつけた演者たちが続々と出てきて、伝統舞踊みたいな踊りを交えながら劇を始めたのよ!
え…こんな時間に演劇!!?そして周りめっちゃ住宅街だけどいいの!?ってかこれ無料!?結構大掛かりな舞台なんだけれど!
様々な疑問が湧いてきたのだけれど、一番の謎はそのステージの観客席・・・!!
そう。結構大掛かりな演劇であるにもかかわらず、誰も見ていないのだ。
それはもう、不気味なほどに…!!!
周辺では裏方っぽい人たちが数人仕事しているだけ、あとはそんな閑散とした雰囲気など気にも留めていないように、優雅な演技を続ける役者たちと、それを眺めるおれ一人…!
無料で、こんな派手なステージをやってたら、近くの住民の一人や二人見に来ててもおかしくないのに…!!
奇妙な夜の演劇団、あまりに怪しい無人の雰囲気、それは蒸し暑い夏の夜のこと。
そう、まさしくこの日出会った演劇団こそ、鬼(幽霊)に見せるために行われる無観客の舞台演劇、『神功戯(サン・ゴン・ヘイ)』なのであったッ!!!!!
後から調べたところによると、イスラム国家マレーシアではあるが、ペナン島は華人が非常に多いエリアとして有名らしく、
香港やシンガポール、台湾などのほかの中華圏国家と同じように、このお盆文化が色濃く残っているんだとか!
そして妻氏いわく、この神功戯は「鬼(幽霊)が悪さをするのを防ぐ」という意味合いから、幽霊が活動する夜に行われることが多いらしく・・
そんなことなどつゆ知らずなこの時の俺。
ここでこの怪奇な空気を読み、そっと立ち去っておけばよかったのだが…
しかし、このときのおれはこう考えたのだ。
なるほど…駆け出しの役者たちだから、こんな時間に無料で舞台やってるんだな!どれ、未来のスターたちを応援してやるか!
馬鹿やろぉぉぉぉぉぉおーーーーーー!!!!!!!
そして、高校野球でベンチ裏に陣取っては球児にヤジを飛ばしたりする玄人気取りな勘違いおっさんのごとく、
ずかずかとステージ中央の目の前に立っては、腕を組み演技を眺める!!
演者が抑揚のある歌などを歌い出したらうんうん、と分かった顔をして頷き、
シーンの切り替わり時には応援の意味を込めた拍手を送る!!
舞台袖に消える演者たちに「(ちゃんと見てるから!がんばってね!)」と目線でサインを送る!!
演者たちは皆、なぜか怪訝な目をして俺を見てくるのだが、
初めて観客に演技を見てもらえて、緊張してんだよな~わかるわかる。
おれも若いころ初めてライブのステージに立った時はさぁ…
などと、誰も聞いていない昔話に花を咲かせては、勘違い甚だしい使命感でしばしステージ中央に仁王立ちッ!!!
ぎやぁぁぁぁぁぁ!!!!だれかっ!!だれか●してくれッ!!!あの日のおれをどうか●してくれないかッ!!!
最終的には、
”今日はペナン島で駆け出し役者たちの演劇練習を鑑賞。粗削りな部分もあるけれど、みんな輝いてる。夢見る若者に拍手を。”
などとさすらいの旅人きどりでポエムなブログ記事まで書いてしまい、無事死亡が確認されたおれ氏(心因:恥ずか死)。
まじでイキって勘違いしてめちゃくちゃイタすぎる思い出…!!!
思い出すだけで…グハッ!!!!(吐血)
まとめ
以上、中華圏で伝わる奇妙なお盆の風習と、おれが恥ずか死する話でした(号泣)!
霊に見せるための芝居なんて奇妙な風習だなと思ったけれど、よく考えたら日本の盆踊りも元は霊を迎え入れるための踊りであるって話も聞いたことあるし、なんか近い感覚なのかねぇ。
とにかく、みんな中華圏の街で夜に誰も見てない演劇集団を見ても、
「どれ、駆け出しの演劇集団たちを応援してやるか」とか上から目線で眺めたりすんなよ!!
それを得意げにブログに書いたりなんかして、あとで大やけどする羽目になるからな!!
そんな、かき捨てられないほどの旅の恥に発狂してしまった思い出なのでした…。
そんなところです。
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