【陰謀論に極右・極左…】浅野いにお作品『デデデデ』で描かれてた世界がコロナ渦やウクライナ侵攻後の現代にそっくりな話。
ナマステ!ぼっちシンガーです。
路上ライブで世界一周の旅を終え、現在は東京で音楽活動中。
好きな事を鼻息荒く語るブログだよ。
世界中からため息が聞こえてきそうな2022年。
長引くコロナ渦に、世界では凄惨な戦争も続いていて、世界的にくらーいムードが漂っております。
そんな中、我々サブカルクソ野郎界隈の住人にとって一筋の光とも言うべき、うれしいニュースが入ってきた。
浅野いにお作品、「デッドデッドデーモンズ・デデデデデストラクション」、
通称「デデデデ」がアニメ化決定ーーーーっ!!!!!
いにお作品初のアニメ化!!アニメ制作にはいにお氏本人も携わるという事でクオリティは折り紙付き!!
期待しかねぇぞぉぉぉぉおぉ!!!!!!
大興奮でひとしきり盛り上がったと同時に、おれはこんなことを考えていた。
「この世界情勢の中で、デデデデをアニメ化するとはなんて挑戦的なんだ…」
と。
なぜならデデデデのストーリーは、2014年に連載スタートした作品であるにもかかわらず、
コロナ渦やロシアのウクライナ侵攻を通して揺れ動く現代の社会情勢を、
予期していたかのような世界観を描いているからだ!!
浅野いにお作品の「デデデデ」で、陰謀論に踊らされる人々や、戦争が人の思考を右派・左派へ二極化させる傾向が描かれており、興味深いです。2014年連載開始の作品ですが、まるでコロナ渦や今回の戦争をテーマにしたような描き方で、漫画の域を超えている。 https://t.co/V6puHuArFJ
— ガモウユウキ / ぼっちシンガー世界を周った後。 (@gamoyou) April 5, 2022
もくじ
「陰謀論」に振り回される人々。
デデデデのストーリーに関しては、以前書いた記事でも語っているので詳細は書かないが、
簡単に説明するなら「宇宙人侵略者とされるもの」に対し激動する社会と、そのなかで普通の毎日を歩んでいく女子高生たちの物語、
と、そんなところである。
宇宙人侵略者が乗る「母艦」と呼ばれる巨大円盤型宇宙船が空に浮かぶ東京。
そんな異常事態にも次第に人々は慣れてきて、母艦の陰で洗濯物が乾かない!などと言った平和な話題がTVを賑わせるようになる。
母艦との「共生」をなんとなく受け入れて、深く考えずにそのまま東京に住み続ける人も多い中、
強烈な危機意識を持って東京脱出を叫び、「政府は事実を隠蔽している」、「マスゴミの報道は全てうそだ!」と政府による陰謀論をSNSで説くインフルエンサーたちも現れだす。
それらの人々は互いを「意識高い系」だ、「思考停止した馬鹿ども」だ、と見下し合い、問題の根本的解決に向けた話し合いは一向に行われない。
だれもが、母艦のない世界を目指す事よりも、誰かを見下すことで自分の居場所を確立させたいだけのように見える。
まるで現代のコロナ渦社会そっくりではないか、と今になって思う。
思えば現在でも、「政府は実際には多くの死者が出ているのを隠蔽している!」だとか、「コロナはウイルス兵器だ!」とか、政府陰謀論を声高に叫ぶ主張もあれば、
気にせずオンライン飲みやおうち〇〇を楽しみながら、深く考えずにコロナ社会に迎合する人々もいる。
危ない危ないと言いながら、今日もサラリーマンたちは都心へ満員電車で通勤しているし。
また、漫画内では、Aと呼ばれる新型爆弾が「母艦」に対して使用され、A線と呼ばれる放射能汚染のような被害が東京で発生するんだけれど、
そのA線被害を極端に警戒し、街に出る際はゴーグルにマスクで完全防備、周囲にもその持論を押し付けするような、強烈な「A線汚染論者」として、メインキャラクターの母親が描かれている。
この母親の描写なんてまさに、コロナ渦での反ワクチン論者の宗教染みた思想であったり、それによって分断される家族関係であったりをそのまま表しているように感じる。
こんな風にデデデデで描かれる世界観は、なにか大きな問題が起こった時に露わになる、人それぞれのさまざまな性質が、いろんな角度から描かれていて、興味深い。
と同時に、誰もが心の底では自分こそが正しくて、相手を見下して生きている、という人間の本質的な「汚さ」みたいなのが見えてきて、ゾクゾクさせられる…。
ネトタコ・ブサイカ思想はまるでウクライナ侵攻後の世界
2022年4月現在、いまだ続くロシアのウクライナ侵攻。
市民への虐殺行為や空爆の映像など、ショッキングなニュースが日々流れてくる毎日の中で、日本でもこの戦争に対して様々な意見が飛び交っている。
Twitterなどで意見を見てみると、
「ロシアや中国の脅威はすぐそこ。日本も敵基地攻撃が出来るよう、憲法9条の早急な改正を!」
「核を持つことが抑止力につながる。日本も核武装すべきだ!」
と右派思想の強い人々が叫べば、左派の人たちからは
「抵抗しても戦争が長引き悲しみを生むだけ!ウクライナはロシアの条件を受け入れてでも終戦すべき!」
と非武装化を求めたり、
「ロシア人にも人権がある!一方的な擁護は出来ない!」
と世論をけん制したりする声が上がっている。
どちらも言っている事は一理あるし、ここでどちらの意見が正しいかなどを語るつもりはないが、ロシアという驚異を前にして、人々の思想が極端に右派、または左派よりに分断しているような印象を受ける。
そして非常に興味深いことに、デデデデにおいても同様な社会現象が描かれている。
同じく宇宙人侵略者に対して「軍備を拡張して対応すべき」という右派的意見と、「宇宙人にも人権がある!」と侵略者との共存を模索し、軍備拡張に反対する左派的意見がたびたび対立しているのだ。
それぞれの思想を持った人たちは「ネトタコ」、「ブサイカ」というスラングで呼ばれ、家族や友達内でも意見の違いから亀裂が生まれたりするくらいに、人々の思想に深く根付いていく。
漫画内では、TV討論などでは、「A武装」すべきかどうか、「侵略者」を守るべきかどうかがしきりに討論されるようになり、
次第に、侵略者にどう対抗するか、という本来のテーマから逸れて、 侵略者に対抗するという大義名分のもと、 いかに自分たちの思想を正当化できるかを考えるようになっていく。
最終的には、母艦は日本の所有物であり、他国に干渉させるべきではない!という、そもそも何かがおかしい意見まで出てくるようになる。
現在のウクライナ侵攻に関しても、この世界情勢にかこつけて、鬼の首でも取ったかのように核武装の是非や原発稼働の是非が、様々な主張で声高に叫ばれている。
本来の問題に対応するための議論なら活性化されるべきであるが、その問題が個々の主張をまかり通すための道具と化す状態にはならないよう、気をつけなければならない。
デデデデは人間の本質的な弱さを描いた作品
このように「デデデデ」は、宇宙人侵略者という脅威そのものよりも、
それに振り回される人間社会の本質的な怖さや弱さ、危うさを描いている作品であると思う。
庵野秀明監督の「シンゴジラ」公開時に、
(ゴジラという脅威そのものよりも、共通の敵に立ち向かう際の人間の弱さや矛盾が描かれている)
みたいな考察を見たんだけれど、それに近い感想を、僕はデデデデに対して持っている。
物語では、そんな世界で普通の少女たちが普通に大人になっていく様が描かれている。
読み進めていくと、激動の中でどんどんおかしくなっていく大人たちに振り回されず、
普通に友情をはぐくんで、普通に成長していく若者たちの強さに気づかされる。
人間の弱さや汚さが表面化したディストピアとも言うべき世界の中で、普通でいる事が出来るのは、なかなか難しい事なんだな~と、そんなことを考える。
というのも、主人公たちの周囲の人々が次々と、ちょっとづつ、どこかおかしくなっていくのだ。
周囲のクラスメートが次々とネトタコやブサイカになり、卒業生の祝辞で愛国心を叫んだり、危険なデモに参加したり、し始める。
誰もが皆、何者かになりたがり、何らかの思想の元でじか自己を表現できなくなってしまった世界の中で、
主人公グループの中のひとり、キホちゃんの、彼氏に対するセリフが胸にささる。
ネットの過激な噂に侵され、インフルエンサーの受け売りのように陰謀論を説くようになってしまった彼氏に対し、彼女は言う。
「たとえ間違ってるとしても大事な事は自分の頭で考えて決めるもん」
「私は自分で思ったことを言ったの!受け売りばっかの君と違って!」
デッドデッドデーモンズ・デデデデデストラクション2巻より ©浅野いにお / 小学館
どんな時代でも自分は自分であり、自分で考えて自分で決める、自分の中での普通を貫く強さが大切であると、そう教えられた気がする。
結局のところ、みんなどっかに自身の無さや弱さを抱えていて、思想や宗教にすがっちゃうんだろうな。
だからこそその対比で、日々楽しく、時に泣いたりぶつかったりしながらもあたりまえに青春できる主人公たちの姿が、その普通さが、魅力的に見えるのだ。
どう状況が変化しても流されない強さ、何者でもない普通の自分を受け入れることの大切さみたいなものは、以下のインタビュー記事でも紹介されており、いにお作品の一貫したテーマの一つであるのかもしれない。
いにお作品は本当に、こういう人間の弱さを描くのがうまい。
自分でも気付かないような深層心理を、(見たくもなかったものも含めて)まざまざと見せつけられる。
そういう心えぐられるところも、好きだ。(いにお好きは皆、ドМなのかもしれない。)
まとめ
以上、「デデデデ」で表現されている世界観が現代の我々の社会に酷似しているような気がして、ふと思い立ってこんな記事を書いてみました。
いやぁ、3月についに最終巻が出て完結したデデデデだったけれど、マジで社会派な漫画だった。
最後まで正解は分からなかったし、明確な正しさも悪もないなかで、自分ならどう生きるか、みたいなものを考えさせられたな~。
そんな中で何の根拠もなく「おんたんは・門出は、絶対なのです。」とか言える存在が一つでもあれば、
人間それだけで生きていけるんだろうな、なんて思った。
ソラニンで種田が言った、「行きつく先が世界の果てだったとしても、芽衣子と俺は一緒なんだから。」って、
あの名言みたいに。
例え明日世界が終わるとしても、何か分からんけどおれ達なら大丈夫。って思える瞬間って、無敵状態っていうか、ロックというか…(;゚∀゚)=3ハァハァ
おっといかん、もうまとめだというのにまた鼻息荒く語りだしそうだった!!
とにかく、デデデデ、まじで面白いのでぜひ読んでみてください。
個人的に、今こそ読むべき漫画だと思う。
そしてアニメ化、めちゃくちゃ楽しみでR。
一歩間違えたら炎上したり非難されたりする危険性をはらんでいる時代背景ではあるが、そんな論争も雑音も全部巻き込んで、社会現象を起こしてくれっ!!
そんなところです。
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