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【フィステーラ/スペイン】この世の果てで、聞こえてくるのは君の声だけの話

2020年5月13日

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旅中に作った曲達をYouTubeにて公開中!
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今日の旅の一曲!the pillows の “この世の果てまで"!
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終了しました

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………………..

ついに!!!

ついに到着だぁぁぁぁあ!!!!!!!!!!

歩いてポルトガルを目指して飛び出した、南スペインのセビージャから、なんやかんやで、バスや電車は使わずに徒歩とヒッチハイクだけでひたすらに突き進んできた。

途中寄る街で路上で稼ぎながら、ポルトガルを縦断して北スペインを西へ西へ…

ついにこの旅の最終目的地、ついにユーラシア大陸最西端の"この世の果て"、フィステーラに、ついに到着したのだぁぁぁ!!!

うぉぉぉぉついに何回言うんやうわぁぁ!!!パンパカパーン!!!

おれの脳内ではファンファーレが高らかに鳴り響き、

“ゆうきくん!頑張ったね!えらいね!ちなみより"

という垂れ幕のついたくす玉が着飾った衛兵達によって破られている!

おれの歩く道路脇は、ゴールを見届けようと集まった数万人の群衆(なぜか若い女の子ばかり)に埋め尽くされており、熱狂的な歓声につつまれ、おれを迎えてくれている!!!

うぉぉぉやったよ!!!50日ぐらいかかってノロノロ歩いてきたけど!!ついに…!!ついに到着だ…!!!!

昨日、歩き疲れた末にたどり着いた誰もいない浜辺。もう無理もう歩けない…と決め込んで、そこの茂みで眠ったおれ。

テントを張った場所は、プライベートビーチをオーシャンビューできる最高のロケーションであったが、大西洋から吹き付ける風速8億キロの風にテントがあおられてバッサバッサと鳴り、その度に強盗がテントを揺らしている恐ろしい夢を見て目がさめるのである!

ほとんど熟睡できずに気づけば朝になり、フラフラの頭で飛び出した!

ここからフィステーラまではまだまだ遠く、海岸線をひたすらに50キロ進まないといけない!

昨日の激走ならぬ激歩で疲れ切った上に、睡眠不足かつここ数日ネットを繋げてなく、ちなみちゃんのインスタのチェックもおざなりなおれ。

とりあえずここから30キロほど先にある街、セーを目指してヒッチハイクを開始する!!

…が…

昨日歩いてうすうす0.03ミリ気づいていたが、このあたりはただただ太古のままの状態の海岸線がつづくひたすらの秘境である…!


まったく車通らねぇぇ!!!!!

数分に一台の車に、可愛くスマイルしたり萌え萌えビームを送ってみたりするが、みんな吐き気を催したような青ざめた表情で飛ばし去っていくだけだ…

ちくしょう!!こんなことしてる間にも、ちなみちゃんがインスタで…

“最近、すっごく素敵なブログを見つけました。世界中をギターを弾きながら旅してる旅人さんなんです!一回会ってみたいなぁ!"

なんておれのこと書いてくれてるかもしれないっていうのに!!!

はやく!はやくセーに行かなきゃ!!!はやくWiFiを繋いで、コメ返しなきゃ…!!

“ちなみちゃん!!!見ていてくれたなんて嬉しいよ!!きっとこの旅が終わる頃に、君を迎えに行くからね!!そうだ、成田空港で待ち合わせなんてどうだろう?そのまま二人で終わりのない旅に出ようよ!!僕が見てきた世界、君がめざましのトップオブザワールドで見てきた世界、そのそれぞれを見せ合いっこしようよ!!!あぁ、行き先なんてどこだっていい。隣に君がいるなら、太平洋の離れ小島、砂漠の星空の下、アラスカの森だって、きっと楽しいはずさ!!僕が旅に出たのも、このブログを書き始めたことだって、君とこうして知り合うための運命の階段にすぎなかったわけだね!君が僕を見つけてくれた今、その運命(ディスティニー)の扉を、僕たちは開け放ったんだ!!"

Re:"えっ!もしかしてブログの…コメントもらえて嬉しいです!金丸さんですよね!?"

“えっ……"

うぎゃぁぁぁいかん!!!

“リアリティに忠実な誠意ある妄想"を心がけるがあまり自滅してしまった…そりゃそうだよな…バスカーで旅人でブログっていったらそりゃ金丸さんだよな…そりゃそうだよ…どうせおれなんて

“最近すっごく素敵なブログを見つけました。自身もお風呂に入ってなくて汚いのに、世界中のトイレ事情についてとやかく自分語りする、悪臭系の旅人さんのブログなんです。1度会ってみたいなぁ!"

とかって書かれてたら、まだ可能性はあるだろうけど…

…えっ!!?

書かれとるかな…!!?

ちなみちゃん、案外そういうゲテモノスカトロ系も怖いもの見たさで読んじゃったりするんかな!!?

な、なんてこった!!!早く!!早くセーに行かなきゃ…!!

…いや!!

ちなみちゃんは何にも汚されてない純白のワンピースが似合う女の子なんだ!!そんなの好きになるわけがないじゃないか!!!

うぐ…ということはやっぱりおれなんて…

回る恋のスロットルに振り回されて、奇人のごとく泣いたり笑ったりを毎秒ごとに繰り返していた時である!!

ブルルン!

「へい!そこのエチオピアの便器みたいに汚いにいちゃん!乗ってくかい!?」

ま、まじで!!!!

その高い感情表現性を評価されてか、一台の社用車が止まってくれた!!!

「ありがとうーー!!!」

海沿いの秘境をひた走っていく車!!

乗せてくれたのは、これから仕事でセーに向かうところだというおっちゃん!

アルゼンチンから出稼ぎに来ているんだという。

うむ。これまでも、ルーマニアやらモロッコやらから出稼ぎで西ヨーロッパにやってきている人達に、拾ってもらう事がよくあったなぁ。

異国にただ一人やって来て、助け合いの中で生きてきているからこそ、おれみたいな旅人を見ると助けてやろうと思って止まってくれるのだろうか。

自身の生活も決して楽ではないだろうに、ありがたい!

この旅が終われば、次はおれの番なんだ!

車からの景色は、太古の時代のような岩だらけの丘や、真っ白な砂丘が流れ込む宝石のように美しい色をした入江など、まるでこの星のものではないような秘境の景色を見せる…!!

はぁ…!!はぁ…!!なんて素晴らしい景色なんだ!!

まるで短編のロードムービーでも見ていたかのような30分間のドライブの末、ついにセーに到着!

「ありがとう!!よい一日を!!」

「君もボンボヤージュ!」

おっちゃんはニコリと笑って去っていった!

たどり着いたセーという街は、さっきまでの太古の景色からは想像できんほど、スーパーからホテルまで揃うビックシティであった!!(と言っても香川の若者にとっての渋谷的存在、宇多津町ぐらいやけど)

ついにここから15キロほど歩けば、世界の果て、フィステーラである!!

おれはスーパーで、フィステーラが何もない僻地だった時にも大丈夫なように二日分の食料を買い込み、大騒ぎしていたwifiもしっかりと繋いで、いつものように特に誰からもメッセージは来ていない事を確認!

よし、準備は万端!!いざ行くぞ!!この世の果てまで!!!

イヤホンで大音量で、the pillows の"この世の果てまで"を流しながら、一人テンション上がって頭を振りながらのろのろと歩き出す!!

そう、ここから先はヒッチハイクはせずに、歩いて最終目的地、フィステーラを目指すのだ!!

そんなで、山道をひーこら登ったり、途中見つけた小さなビーチの海の青さと、人魚みたいな浜辺の女の子の胸の大きさを心清らかに眺めたりしながら、歩き出して2時間!

ついにフィステーラまであと5キロというところまでやって来た!!

む!!なんだかおおきなバックパックを背負った、おれとよく似た薄汚い風貌の若者が。

彼はよろよろと、おれの前方数十メートルを歩いている。

なんだ?彼もフィステーラを目指してるのか?ちくしょう、こんな果敢なチャレンジをするのはおれだけだと思ってたのに!真似すんじゃねぇ!!

何て思ってたんだけれど。

むむ?彼の奥にも、その奥にも、似たようなスタイルの若者たちがのろのろと歩いている!

彼らのバックパックには、見覚えのある貝殻のアクセサリ!

こ、これはまさか!!

ふと道端に目をやると…

間違いない!こりゃカミーノ、巡礼道だ!

前にポンテベドラという街の郊外を歩いている時にも、サンティアゴ巡礼を歩く彼らの姿を見ていたのだ!!

えええ、こんなヨーロッパの端っこにも、巡礼道があったなんて!!

え?でも、フィステーラはヨーロッパ最西端である。

サンティアゴ巡礼のゴールとなる街、サンティアゴ・デ・コンポステーラは反対の、ここから東にある街…

どういうこと!??みんなフィステーラの方へ歩いて行ってるけど…

実は!!あとから調べてわかったことによると、このサンティアゴ巡礼のルートは何本もあるらしく、そのルートの一つに、通常ルートならばゴールのはずのコンポステーラを出発して、西の端フィステーラを目指すものもあるらしく。

彼らはそのルートに沿って進んでいるようだったのだ!

しかし!!そんなことを知る由もないこの時のおれは、

(き、きっと彼ら道間違えてる…!!そっちいったら逆走だよって、教えてあげた方がいいかな…!??いや、でも、

「うるせぇ知ったかぶるんじゃねぇ!!」

なんて殴られたら怖いしな…いや、でも何も言わなかったら逆に、

「なんで教えてくれねぇんだよ!!ふざけた野郎だ!!」

って殴られるかも…う、うう…どうすれば…)

と怯えながら、徐々にペースを落として、前方の彼らからゆっくりとフェイドアウトするのであった…。

そんなで、激しい思い込みにより大幅にスピードが落ちたものの、

“(don’t) STOP (your believed)"

なんて青臭い道路標識にいちいち胸を熱くしたりしながら、一歩一歩と近づいていき…

長い海岸線を抜ければ…




ついに!!!

ついに到着だぁぁぁぁ!!!!!

おれはやったのだ。

セーを離れて約4時間後!!スペイン、セビージャから歩き出して約50日!!

なんてこった…!!きちまったよ、フィステーラ!!!

一人で盛り上がるおれを、数万人の女の子達は待ち構えてはいなかったが、かわいい猫が三匹、迎えてくれた。

海からの強い風が吹き付け、大西洋はどこまでも青一色の世界を見せているけれど、一応小さなスーパーやカフェはあって、小さな港を囲んで商店が広がる町。

石畳のバーの通りは巡礼道を歩き終えた若者達で賑わっていた!

はぁ!!!ついに到着だ…!!長かった…本当に長かった。

スペインアンダルシアを歩き始めてから、幾重もの試練をくぐり抜けてきた…ひまわり畠の美しさに心ときめかした日や、人気のない村で出会った優しい村人達、そして村々での若い娘たちとのひと時の恋と、そして別れ…

「オラ!!」

「お、オラ!!」

「なに都合よく記憶を改ざんしてるんだい?村々でも恥ずかしがって、メス猫くらいとしか話してないだろ?ハウアーユ?」

「な、なんでそれを!」

ギターにジャンベ(アフリカの打楽器)やらものすごい玄人旅人感でてるアフリカンの若者が声をかけてくる。

彼以外にも、街を歩けば、同じように長い道のりを歩いてきた果ての旅人達が、同志のような親近感で挨拶をしてくれるんだ。

なんだろう、似たような馬鹿な野望に忠実に生きた末の、ふるいを掛けられた最後の数粒の石ころのような、同じような温度感を持った人達がたくさんいて、わらけてくる。

世界の果てまで行ってやるんだ!

こんなこと馬鹿みたいに、ワクワク胸をときめかして、真に受けて這いずり回って、そんなやつはおれくらいかと思ったけれど。

自分のくだらないちっぽけなアイデンティティをプチリと、指先で潰された音がして。

それと同時に、情熱に突き動かされるままに生きることを肯定してくれる仲間がこんなにもいるということが、すごくすごく嬉しかった。

時刻は午後8時を過ぎた。

太陽が街と反対側の、西の海の方へと穏やかに落ちていく。

どうしても、世界の果てに沈む夕日が見たくて、小さな街を超えて半島の反対側の、未舗装の砂浜までやってきた。

小さな丘の上、そのちょうどいい場所に平らな岩があって、腰掛けてギターを弾いた。

“聞こえてくるのは、キミの声。それ以外はいらなくなってた。

溢れる涙はそのままで、いいんだ。もしも笑われても。"

歌うのはthe pillows の、 この世の果てまで。

ずっと、世界の果てで、歌いたいなぁ、なんて思ってた、思い出の曲。

大学時代、バンドでこの曲をやったんだ。

最後の卒業ライブで、

「この世の果てまで行こうぜ!!」

なんてMCで叫んで、ドラムの、前のめりなインで曲が始まって、みんなの歓声がなって。

最高に青春だったんだ。

結局、俺たちは何にも捨てられずに、こうしてぶり返しては迷路に迷ってる。

太陽が落ちるその一秒前の瞬間、そんな刹那を未だに探してる。

投げ捨てに行こうぜ!!!なんて、いきってたその瞬間こそが、最も美しかったのかな、なんて感じちゃってる。

じりじりと胸を焦がす思いに巻かれて歌を歌った。

狂ったように声を上げるおれを、丘の下の浜辺で、他の若者たちが笑ってるけど、気にしないんだ!!

冷めた視線が怖くて歌なんて歌えるか!やりたいことをやるんだ!!

なんて熱くなりながらうららと歌っていると。

「ヘーイ!!ノーバディキャンハイドフロムミーだぜ!?」

む?

生身のギターを右腕に握って、大きな荷物を背負った若者が坂を上がってきた。

「おおきみは!」

さっき街を歩いている時にすれ違って、その薄汚れた身なりやギターに変に仲間意識を感じながら互いに「オラ!」と挨拶を交わした、彼だ!!

「何やってるんだい?」

「夕陽を見たくて、座ってるんだ!君は?」

「んー、まぁ似たようなところかな。おれ、いつも丘の下の砂浜で寝てるんだ。日が沈んだら君も来なよ。イフユーウォン。」

彼はおれが歌うのを少し聴いて、そういって丘を下っていった。

太陽が海の向こうに落ちていく様を見送った。

ユーラシア大陸で、最後に沈む太陽。

強い光がだんだんと弱くなっていって、海をなめらかなオレンジ色に変えていく様はすごく儚くて繊細で、しかしどこか、「アイルビーバック!朝まで待ってな!」とでも言い残してるような、力強い生命力も感じさせた。

陽が暮れると、一気に気温が落ち込む。

凍えるほどに冷たい風が吹いて、丘の上にはいられなくなった。

砂地に群生してるヒルガオみたいな植物を踏みながら、ゆっくり丘を下ると彼がいた!

すでに寝るためのマットやブランケットを広げていた。

「おお、来てくれたんだね!ようこそマイホームへ!まぁ座ってよ!」

「オーシャンビューの素晴らしい家じゃないか!お邪魔します。晩御飯は食べた?」

「いや、実は残りのお金があと一ユーロだから、今晩は抜き!」

「一ユーロ!!??マジかよ!良かったら、いっぱいあるから一緒に食べようぜ!」

昼間に、もしフィステーラにスーパーがなかったらって思って買いだめしといて、良かった。

マットの上にパンやオイルサーディン、パウチのオムレツを広げると、彼が非常食に持ってた太いチョリソーを出してくれる。

向かい合って座って、それぞれをおかずに堅パンに挟む。

裸足の足を投げた砂浜はキンと冷えてて、太陽が暮れた後の海の上には、青と赤と黒が複雑に溶け合う、宇宙の果てみたいな色の空が広がってる。

そんな大自然の中、おたがいのこれまでの旅路を語らいながらとる、ささやかな食事。

質素だけど、どんな有名レストランにも負けない格別な味。

いつも一人だったから、誰かとこうして同じスピードで流れる時間を共有できるのが、嬉しかった。

彼の名前はオラ。

ドイツ人で、今ヨーロッパを旅していて、この後余裕が出来たらアフリカまで行きたいのだそうだが、何しろお金がない。

そろそろ腹をくくって、バスキングにチャレンジしようとしているんだとか。

彼も東の方からずっとずっとヒッチハイクをしながら旅を続けて3日前、ここにたどり着いたらしい。

「アフリカではバスキングは出来たのかい??」

「あぁ!すごい人が集まって見てくれるけど、まぁお金にはならないよ!一回やって1ドルとか!笑」

「おお、でもすごいよ!一ドルあればローカルな場所なら一日暮らせるよ!」

彼のお父さんはナイジェリア出身の移民で、ナイジェリアのおばあちゃんの家に一度行ったことがあるらしい。

「彼らは本当に貧しくて、今日をどう生きるか、を常に考えてるんだ。だから、常に、"もし今日が人生最後の一日だったら…"って意識で生きてる。だから毎日ハッピーに暮らしてるんだ。」

「あぁ、それはおれもアフリカを旅してて感じたなぁ。君はドイツの暮らしと、アフリカの暮らしと、どっちが好き?」

「ううん、分からない。ドイツ人はみんなお金持ちで、余裕がある。でもだからこそ、みんなお金をいかに保つか、貯金をいかに増やすかに必死だ。どっちが幸せかは、わからないね。」

移民としてドイツで生まれた彼。

自分のオリジナルなアフリカンの感覚と、先進国民としての感覚とを併せ持っているというのは、すごく羨ましい気もするけれど、それは時に彼を悩ましたりもするらしい。

「おれはブラックだから、たまに旅がしずらいんだ。ヒッチハイクも捕まりにくいし。アニメが大好きだから、日本も好きだけど、行こうとは思わない。」

「なんで?」

「日本は日本人しか住んでいないだろう?きっと外国人、特に僕みたいなブラックに対して人は恐れてしまうんじゃないかい?旅先で出会っても、アジアンとはなかなか仲良くなれないんだ…。君みたいな人はレアだと思うんだけど…。」

うーん、そんなもんなのかな?でも確かに、おれの田舎におれらみたいな薄汚い外国人が突然一人やって来たら、みんな怪しむだろうな。

悲しいことだけどアフリカンだったら特に。

みんな地獄の果てのような表情で目を向けてきて、目を合わせてスマイルしようとしたらさっと逸らされたりするんだろうな…というのは容易に想像がつく。

なぜなら、もしおれが、今の経験なく地元で普通に暮らしてて、そんな外国人を見かけたら、たぶんそんな怪訝な目を向けていると思うから。

人との触れ合いやコミュニケーションを大切にする彼のような旅のスタイルなら、かなり歩きづらいだろう。

おれは都会に住んだことがないから、東京や大阪はもっと外国人に対してオープンな雰囲気を持ってる事を願うけど。

日本の単一民族性こそ、俺たちの国に強い経済力や治安の良さをもたらした原因の一つだろうけど、同時に、世界基準の平衡感覚は確実に他の国の人に比べて劣っていると思う。

日本の常識や価値観は本当に世界のたった70分の一だ。

ネット社会の充実で国境なんてあってないような世界に変わりつつある今、独自の文化は大切にしながらも、どんな価値観を持った人たちが来てもそれを尊重して、受け入れられるオープンな国を、これからおれたち若い世代が作っていかなきゃいけない。

「あぁぁぁ!!お腹いっぱいだ!!ありがとう!」

どさりと彼が砂の上に倒れこんだ。

空は淡いトワイライトの時間を過ぎて、少しの青を残して夜のカーテンがひかれ、一番星が光ってる。

飲んでたワインも回って気持ち良くなってきて、おれはギターを取り出した。

アルペジオが波の音と絡んで美く鳴り、無数に見え始めた星に向かってのんびりと声を上げた。

アンディモリの"weapons of mass distraction"。

彼は寝転がったまま、黙って聴いてくれる。

「いい曲だね。日本語の歌だよね?アニメで聞いた事のあるフレーズが幾つかあった!」

むくっと起き上がった彼。

おれにも弾かせてくれないか?と言うのでギターを渡すと、優しいアルペジオでドイツ語の歌かな?でもどこかで聴いたことあるメロディの歌を歌った。ドイツを旅した時にどこかで聴いたのかな?

おれはタバコをふかしながら、星空を眺めながら耳を澄ました。

心地よいなだらかなメロディが、満天の星空の風景とすごくよく合ってて、最高な気持ちにさせた。

「そうだ!君はグロウワームを見たかい!?」

急にハッ、と思い出したように彼は曲をやめておれに尋ねた。

「グロウワーム??蛍みたいなやつよね?オーストラリアで見たことあるぜ!ゴールドコーストのはずれの山奥にレンタカーで登って…」

「そうじゃなくてここのだよ!海にいるんだ!おれもこの間教えてもらってびっくりしたんだ!行こう!」

彼が海へ向かって駆け出した!おれもよくわからんまま追う。

波打ち際まで来た彼は得意げに、湿った砂を手でぐしゃぐしゃにかき回した。

「おお、すごい!!光ってる!!」

砂の中に住んでるプランクトンかなんかなのかな?かき回された砂に驚くのか、ほんの0.5秒くらい、小さな蛍みたいな光がチカチカ光る。

すごい素敵っ!!!!!

…うむ。

これが可愛い女の子と夜の波打ち際で、とかならロマンティックな世界に手をつなぎながら何時間でも眺めてられるが、残念ながら旅疲れした汚い野郎二人である。

光るー!!なんてはしゃぐのにも10秒で飽き、どちらからともなく彼の家に戻ろうと歩き出す。

その時!

「おい見なよ!向こうの崖の方!」

彼が嬉しそうに声を上げた!見ると、ビーチの端の方、崖に面したその岩影から、温かなオレンジの明かりが揺らめいてた!

キャンプファイアーだ!

「行ってみよう!」

「え!行くの!?あ、う、うん!!」

もしもエクソシスト崇拝の闇組織の生贄の儀式中だったら…とかギャング達の集会だったら…とか怯えるおれであったが、裸足でかけていく彼の後を追った!

「オラー!」

明かりの当たるところまで来ると、明るい挨拶で迎えてくれた。

30人はいるだろうか?火を囲むように連なって駆け上がっていく岩の段差に腰掛けて、ヒッピー風のにいちゃんや地元人っぽいおじいちゃん、旅行者っぽいちゃきちゃきな女の子グループまでいろんな人たちの顔がぼんやりと炎に照らされて揺れていた。

話を聞くと、みんなそれぞれに巡礼で歩いてきたり単なる旅行者だったり、ここに住み着いてるヒッピーだったりとバラバラで、しかしこうして木をくべながら火を燃やしていると自然と集まってきてはこんな人数になったという。

それぞれの旅路の果てが見事に重なり合って生まれた、まさに、世界の果ての小さな奇跡みたいな出会い。

輪の中に混ぜてもらうと、ベレー帽のおしゃれな地元のおじちゃんがガットギターで、地元ガリシア地方の歌を陽気に歌う。

いいなぁ!と思って、慌ててギターを取りにいって戻ってくると、次はイタリアから来たという夫婦の巡礼者の、旦那さんがイタリアの曲をやってた!

合わせて適当にリフを弾いてみたりする。

すると誰かがジャンベでリズムを刻む。

巻きタバコやワインが回ってきて、みんなゆらゆらと体を揺らしながら、一つの音楽を共有する。

その中心では温かな色の炎が優しく燃えてて、ふぅ!とタバコの煙を吐きながら空を見上げると、降ってきそうなほどの満天の星空。

すべての空間が美しすぎて、心地よさすぎて、なんだか涙が出そう。

「君も何か歌ってよ!」

と言われて、何を歌おうか…と少し考えて。

遠くアンダルシアから歩き続けてきた日々を思いながら、スタンドバイミーを歌った。

みんな知ってる曲で、それぞれがここにたどり着くまでの思い出に寄り添いながら、目を閉じて噛み締めて聴いてくれたり、大声で一緒に歌ってくれたりする。

when the night has come, and the land is dark, and the moon is only light we will see.
I won’t be afraid I won’t be afraid
Just as long as you stand by me.


映画みたいだ。

若者のすべてがここにあった。

これまでの苦しかった日々も、特にここフィステーラに何があるのかも知らずにただただ闇雲に歩き続けた日々も、ここでみんなとこうして時間を共にするためにあったのかな、なんて悟る。

大きな拍手をもらって、他にもなにか!って言われて、今度は日本語で歌った。

大好きなandymori。

“波に乗るのにももう疲れてガラクタに囲まれて暮らしながら豚達目配せして乗り込んでいくオレンジトレイン。

いつかのあの太陽を忘れない、いつかのあの体温を忘れない。疑いながら吸い込まれていくオレンジトレイン。

運ばれていくラジオの声と、筑豊本線とオレンジトレイン。"

全く知らない曲だろうにみんな浸るように口ずさんだり体揺らしてくれる。

言葉も国籍も肌の色も何もかもバラバラなおれたちを、しかし音楽はいとも簡単に繋ぎ止めてくれる。

夢のような時間。

そうだ。おれはきっと、これを感じるために旅を続けてきたのだ。

音楽に、若いおれたちに、出来ないことなんて何もないことを。

時を忘れて歌い体揺らすおれたちに、燃えて小さくなっていくマキだけが、夜がふけていくのを教えてくれてた。

何時間かして、やがて火は小さくなって最後のマキが燃え尽きる頃、名前も知らないみんなと挨拶を交わして、握手して、その場を去った。

みんなそのままここで眠るもの、これから宿に帰るもの、それぞれだった。

おれは浜辺を歩いて、最初の、オラの寝床まで帰ってきた。

先に戻ってたオラは、底冷えする夜の砂浜を思ってか、おれのために厚手のマットを開けてくれてて、自分は薄いブランケットの上で寝袋にくるまって、眠ってた。

ほんと優しいやつだなぁ。

月明かりに照らされて寝息を立てる彼の横顔をみると、今日、つい夕方に出会ったばかりなのに、もう遠く昔から一緒に旅をしているような気に思えてくる。

ありがたくマットに寝袋を敷いて、潜り込んだ。

キンと冷えた風が、夢みたいな時間を過ごして火照った体を冷やして、気持ちいい。

“世界の果て"まで来たけれど、ここはおれの世界の中心だ。

奇跡みたいな夜をありがとう。

そんなことを考えながら、仰向けに星を見上げて、本当に別の星に来たみたいにものすごい宇宙が広がってて。

酔っ払いながら宇宙飛行する気持ちで静かな夜にぐるぐる想いをめぐらしてたら、気づけば眠ってた。

そんなところです。

※10月16日(日)、岡山の老舗ライブハウス、"岡山ペパーランド"にて、この旅のツアーファイナルをやります!チケット2000円(1ドリンク代込)。17:30オープン、僕の出番は19時過ぎの予定です!ゆるい雰囲気の大好きな箱でのライブです。のんびり飲みながら、みんなで音楽に恋しよう!詳細ご希望の方はコメントかtwitterにて!良かったら来てね!

旅の写真を随時アップしてます。→Instagram

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