【ローマ/イタリア】命の次に大切なものを盗難に遭う話その1
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ローマに帰ってきた…
昨日、2日間の泊まり込みヒッチハイクの旅のなかで、ついに一台も車を止められないという惨敗をきっし、悲しくもローマまで戻ってきたおれ。
吹っ切れて買ったボローニャまでのバスは、明日の夜にでるという。
予定外のローマ帰還に、宿などとっていないおれ。
ネットで事前予約が基本のヨーロッパで、泊まるところがない。
調べてみても、当日の、しかも夜にまだ部屋が空いているところといえば、一泊1万円ちかくとかする、アホみたいな豪邸ばかりなのだ。
仕方なくそのまま中央鉄道のステーションで一夜を過ごす事に決めた。
駅の中はWi-Fiも飛んでて、マックやピザ屋などレストランも夜遅くまでやっていた!
何不自由ないぜー!!とはしゃいでいたのだが、11時を過ぎると急に人通りが少なくなってきた。
警官が話しかけてくる。電車がなくなるので、駅はクローズする。ずっとここにはいられないぜ?と。
ま、まじか!
仕方なく寝床を探しに、駅の外に出たおれ。巨大な駅の建物の周りでは、ホームレスや移民の物売りの男たちが、それぞれに場所を確保して、ボロボロの布団や毛布にくるまってそれぞれ眠っていた。
一人ベンチに座って、折りたたんだダンボール箱をたくさん小脇に抱えるおっさんがいる。
ローマの夜はハンパなく冷える。
浮浪者たちは、このおっさんにわずかなコインを渡して、寝る時に下に敷くダンボールを買っていた。
いろんなビジネスがあるんだなぁ。
しばらくあたりを歩いて、ウトウトしてきてしまい、おれもここで寝ちゃうかな…とか考える。
まぁこの辺なら駅のライトがついてて明るいし、近くにパトカーも止まって警備してる。
昨日まで歩き続けていたので、おれは極限に疲れていた。
ローマ、街の雰囲気はやっぱ良くないが、ここなら大丈夫だろ!と思い切って、空いたスペースに寝袋を広げた。
インド系の、例の段ボールを抱えたおっちゃんが、笑顔で「グッドナイト!」なんて声をかけて横を通り過ぎる。
貧しい暮らしの中でも穏やかに暮らしてる彼らの風情をちょっと、感じる。
「君!ここはパトカーの停車位置だ!寝るなら向こうに行きなさい!」
5分もしないうちに、警官がきて退けられる。
うーくそう!ねむたいってぇのに!
仕方なく、場所を探しておれは駅の側面へ。
ここはさっきの正面に比べると少し薄暗くて、人通りもない。
さっきまでのエリアとちがって、こっちにはアフリカ系の移民達が、同じくダンボールに毛布で、たくさん寝ていた。
こうやって路上で眠る場所にも、住み分けがあるんだなぁ…
なんかヨハネスブルグを思い出す風景。
もうとにかく眠たいおれ。
それっぽいスペースを見つけて、横になる。
バッグを頭の下に置いて、壁でギターを挟むようにして、腕に肩掛けの紐を絡ませて、がっちりガードした状態。
時間を見てみる。深夜1時。
もう限界!今にも夢の国のお迎えがやってきて…
あぁ…ねむい…
もう…
だめ…だ…
1時間くらい寝てただろうか?
ガサッ!!!!
!!!??
耳元で音が聞こえた気がした!!
慌てて寝袋から顔を出す!
バッ!!!
「えっ!?」
思わず声が出た。
寝ぼけ眼に、二人の男がおれを見下ろすように立っているのが見えた!
すぐさま一人は立ち去って、もう一人はそのまま、おれの顔を見ながら立ち尽くしている。
白髪交じりの、痩せてて背の高いヨーロッパ系のおっさん。
少し、動揺したような表情。
おれも寝ぼけてて、なにがなんやら。
なに?なんでこの人おれをじっと見てんの?
3秒ほど、目があったまま、固まったまま。
ふいに男が口を開く。
「ヒア、ノー、スリーブ。」
と首を振ると、きびすを返して去っていった。
え?なに、注意しに来たの?
でも案外あっさりしてんな。
…次の瞬間、最初の、耳元で聞こえた音を思い出した。
え!?なんか盗られたんじゃ…!
バッグ!
ある!
ギター!
ある!
…あっ!!!ない!!
今日スーパーで買った食パンがない!!
適当に首元に置いてた食材の入ったスーパーの袋!
なくなってる!!
どうやらあの音は、男達が袋を盗んだ音だったんだ!
やられた!ちくしょう明日の朝飯が…!!と怒ったが…
まぁ1ユーロぐらいのもんだったから、いいや!
それより、ここはちょっと物騒だな。やっぱり明るい場所で寝たほうがいいかもしれん!
と、また移動することに。
くそう、マジねむい…キツイよう…とかうなだれながら、おれはすでに鉄格子で閉ざされた駅の中央入口へやってきた。
閉ざされたゲート前には、午前四時の始発を待つ現地の若者達や旅行者、ホームレスがそれぞれに壁にもたれかかり、寝袋にくるまって寝たり、ケータイをいじったり、絶望感溢れる表情で遠くを眺めたりしている。
うーぬ、ここなら人は多くて安全だろうけど、壁際は人でいっぱいだ…
しかしそこからさらに少し奥に入った場所に進むと、ほとんど人がいない、がらんとした通路に出た。
もうとにかく疲れが半端ないおれ。
(あぁ。もうここで良いや…。)
壁にバックパックをおいて、それを背もたれに地べたにへたれ込むように座った。
キンキンに冷えたタイルが凍えるほど冷たい。
再び寝袋を取り出して、羽織った。
ギターバックの肩掛けを抱くように腕を組んで、座った姿勢のまま、
うとうと…
うとうと…
ガササ!!!
背もたれにして、壁と挟んでいたバックパックが動いた!!
ぐらりと上半身が傾いて、反射で目がさめる!
瞬間!!!バックパックに伸ばされていた男の手が見えた!!!!!!!!!
「おらっ…」
言葉を発するよりも前に、すぐに手を引き、振り返り早足で立ち去る男!!!!
寝ぼけまなこに後ろ姿をとらえる!!!
背の高い白髪交じりの…
さっきのやつだ!!!!!!!
あの野郎また狙っていやがったのか!!盗られる前に起きてよかった!!!!
盗られそうになってたバックパックを見る、
大丈夫、ジッパーを開けられた様子もない!
ケータイも財布もあるし、
ギターもあ…
…ギターは??
一瞬で血の気が引いた!!!!!
眠気が吹き飛ぶってこういうことかってくらいに、一気に飛び起きた!!!!
うそうそ嘘嘘嘘!!!!????うそ!!??
ギターがない!!!!!!!!!!!
反射的に、たった今立ち去った男を追おうとバックパックをむりやり背負って、かけだす!
うそだろ!!?うそだろ!!?ギターがない!!!ギターがない!!おれの!!命の次に大切な!!!は!!?
頭は混乱したままで、でも、体は反射的に男を追っていた!!!
男が消えた角の向こうを曲がって…
だめだ、いない!たった10秒前!たった10秒まえだ!
…盗られたんだ!!あいつに盗られたんだ!!!!
ふざけんなふざけんな!!!
いるだろ!!?すぐそこにいるんだろ!?
ぶちのめしてやる!!マジでぶちのめしてやる!!!!!
ものすごい怒りが湧いてきた。
薄暗く開けてきている空の下、男が去っていった方向をしらみつぶしに駆け巡る!
バス停!?バスに乗ったとか!?何台も並ぶ、出発を待つバスの車内を見やる!!
いない!!
「すみません!!今!!今ギターを持った男を見なかった?!?」
「…7&?(;:/:)&@9&6????」
周りに尋ねても、イタリア人で英語を話せるひとは一握りだ。
くそうくそう!!これくらいの英語理解してくれよ!??
と、理不尽に怒りをぶつけてしまう。
とにかく無我夢中であるきまわった!
うそだろ!!?こんなギター売れねぇやってどっかに置かれてたりするんだろ!?頼むよそうなんだろ!?なんでそれを持ってくんだよ!?一番大切なものなんだよ!?おれが生きてくために!!!ずっとずっと弾いてきた、一緒に旅してきた…くそうくそうくそう!!!!!!
悶々と脳内を支配していくありもしない希望や感情論。
振り切るように、あたりを歩き回った!血眼で通りを睨みつけた!
いない!!いないいない!!!
凍えるほど寒いのに、息が弾んで、心臓は爆発しそうなほど高鳴ってて、気づけば泣きそうになってた。
30分くらい、あたりを駆け回っただろうか。
午前5時。青白くなってきた空、駅前にポツリポツリと人が行き過ぎる中。
立ち尽くしたおれ。
最悪のものを盗んでいったあの男が、時間が、タイミングが、そしてなにより、危なそうとわかっていながら馬鹿みたいにあんなところで眠ってしまったおれ自身が、憎くて憎くて、ならなかった。
「うそやろ…」
ずっとずっと手元にあった相棒が、消えてしまったことがまだ信じられなかった。
うそやろうそやろ…
震えそうな声で、そうつぶやいてる。
ゆっくりと、セントラル駅が明るみかけてきた。
そんなところで、長くなったので続く。
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ディスカッション
コメント一覧
あんな極限状態で眠ってしまうのは仕方ないですよ。ローマは数年前に行ったことあるけど、中央駅って雰囲気が悪く、昼でも少しコワイ感じでした。夜はもっと危険な雰囲気なんでしょうね。
でも、ぼっちさんの不幸つづき、特にギターを失くされるに至っては、本当にお気の毒です。テレビの企画みたいにハッピーエンドになるといいんですけど・・・。とにかく、元四国の民として、陰ながら応援しますね!!
くみさん、コメントありがとうございます!
おぉぉぉ!!ローマにお住まいなんですね!!はい…かなり辛い感じになってますが、でもあの歴史的建築物が路地裏曲がればあるみたいな感覚と、明るくも暗くも、多文化でいろんな世界があるところが個人的には好きです!
今回は踏んだり蹴ったりで逃げるように出てしまいましたが、次はある程度お金あるとき余裕持って来たら、ヨーロッパの歴史に、少し危なっかしい刺激もあって、いい場所やろなぁなんて思いました!(ホテルにも泊まれずに駅で寝たりしないでいい時に…笑)この後もイタリア北上しながら巡っていきます!またみてってください!
レッチリ突撃隊さん、コメントありがとうございます!
そうですねぇぇ、駅周りは特に、危ないよーと後々で会う人みんな言うてました…完全おれの自業自得です…涙
それですねぇー!でも、大好きなアンディモリの歌に、ハッピーエンドという曲があります。
雨が降れば鍵をかけてもいいよ
誰も知られないまま終わりになっても
それでハッピーエンドなんだ
って歌詞で、どんな結果でも、どんな生き方をしても、それが自分にとっての最善だったんだって、全肯定してくれているようで大好きな歌です。結果を恐れずに、とにかく飛び込み続けてみたいと思います。
最新の記事読みました!
新しいギター見つけてよかったです!
思い出のあるギターを盗まれた事は残念ですけど、結局物自体は失ってしまえばそれでなくなってしまうんですよね!
でもがもさんの思い出に残ってればいいんじゃないですか!
そうじゃなければ今のグレッチという新しい出会いもなかったわけですし!
ポジティブに切り替えていかなきゃいけないですよね!
香川っていう田舎に、しかもがもさんっていう存在に生まれてしまった時点でかなりなハンディキャップがあると思うんでこれからも何があろうとポジティブに生きていってほしいです!
うんこさんコメントありがとうございます!
その通りなのです!落ち込んでいる暇はないのです!僕自身、元々はそんなに物に執着するほうじゃなかったので思ったよりはショックでかかったんですが、切り替えていきますよ!!
そうなんすよ!おれという欠陥人間だからこそやれる事があるのです!もうダメかもしれないと力なくつぶやくぐらいの表情が美しいのです!
うんこさんは一歩間違えるとブロガーにブロックされる系コメンターだと思うんすけど(笑)、おどけてみせたその奥にロックな真意があるので僕は好きです!
最初タイトルの意味がわからなくて、今度は「オカモト」という日系イタリア人に騙されて身ぐるみ剥がされ路地裏に放り出される展開になるんじゃないかとどきどきしながら読みました(笑)。
運命的な出会いを果たした新相棒さんとの旅に幸いがありますよう、心から祈っております!!
P.S 次の記事からコメント投稿欄がなくなっているので、こちらに書かせて頂きました。
最新の記事にコメントできなかったのでここにせてもらいますね^^
ギターのこと、残念でしたね・・・
でもその後新しい相棒さんも見つかって、
記事に書かれていたように
なるべくしてなったのかなって思いました。
前のギターが盗られなかったら新しいギターと出会えてないですもんね。
切り替えて前向きに考えられるところ、すごい尊敬します。
最近落ち込んでた自分が恥ずかしいです。
私も前向きにがんばります。
これからも応援してますー!
むし丸さん、コメントありがとうございます!!
なんという展開!笑いや、そこまで行ってたら身ぐるみ剥がされ全裸のまま日本帰ってますね!笑
これも運命(と書いてさだめ)だったかと思いました!
これからも薄さ0.03ミリの情熱と信念で、がんばります!
わ!!ほんとですね!すみませんたまに設定勝手にコメントオフになるんです!ありがとうございます!!
kaoriさんコメントありがとうございます!!!
コメント、勝手にオフになってました!すみません…FC2の陰謀です。
切り替え早くなりすぎて、自分でもその情の薄さに強くなりました…!笑
わかりやすく例えるなら最終兵器彼女でどんどんと体が兵器化していくちせが、無意識に敵軍の戦闘機を倒してしまった時の心情に似てますかね…(逆にわからん)
何か落ち込むことがあったのですね!僕は、時間をかけて落ちるとこまで落ち込むことも人生を深く生きてる感じがして大切だと思います!もう生きてけねぇとか、必死に生きてるから思うんです!幸運を祈ります!