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【アルバミンチ】でゆらゆら帝国を歌う話

2020年4月29日

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かゆっ!!!かゆゆゆゆゆゆ!!!!!!

うぎゃぁぁぁあかゆいいいいいい!!!!

アルバミンチ初夜!

深夜二時頃、おれはお決まりのとんでもないかゆさに発狂し、目を覚ました!!

出たのである!!!

ナンキン虫だ!!!間違いねぇ!!!!

どこだ!!どこにいやがる!!!

殺気立った目で電気をつけると、、、

うぎゃぁぁぉ!!!!

ここにも!

そこにも!!!

うわぁあおれの首元にも!!!

きっしょぃぃぃ!!!

昨日エチオピアの南部の街アルバミンチにやってきたおれ。

あたり一帯をトイレから漂うアンモニア臭が包み込む、アロマ的雰囲気のある安宿にチェックインしてもう鼻で息ができない口呼吸系バックパッカーのおれ。

しかし、意外な事にベッドは見た目には真新しく、シミひとつない白いシーツがいかにも清潔感ある雰囲気であった。

「ほれはきょうはひゅっくひねむれほうだな。(これは今日はゆっくり眠れそうだな。)」

と、実に南アフリカ共和国以来だろうか、ひさびさの綺麗なベッドに完全に心を許して眠っていたのだけれど!!

甘かった・・!!

ここはやっぱりエチオピアだ・・!!!

やばい!!

すでに三万箇所くらい刺されとる・・!!

顔はバービーのように腫れ上がり、もうお尻なんてバービーのようにボコボコのぷりぷりである。

もうかゆすぎてかゆすぎて、震える。

こいつら・・!!!許さんんん!!!!!


激戦のあと。

しかし、たとえ何匹とこいつらを殺したところで、おれの失われた血が返ってくる事はないし、
いくら誇らしげに殺害したやつらの写真をブログに載せてみたって、「やっぱりあいつサイコパスの気があるよな。」とますます友達が減る一方だ。

血を血で洗いながら、果てしない戦いの向こうに、俺たちはなにを得ると言うのだろうか?

そんなで、過去最高レベルのナンキン虫の量に怯えきったおれは、ついに彼らにベッドを譲り、

かったいイスに寝袋を広げて眠るのであった。

部屋代払っとるのはおれなのに・・・!!!

許さん・・許さんぞ・・!!!

次の日。

「ハーリンハーリン!ステンドハイミー!」

臭くて鼻で息出来んわアピールを執拗にやりながら、スタンドバイミーを歌う。

宿に併設されてるバーで60円のジョッキを飲みながら、テンション上がって周りのにいちゃんらとみんなではしゃいでいると、見た目連続殺人犯みたいないかつい風貌のにいちゃんや、バーの売春婦のおばちゃんも絡んできて、みんなで盛り上がって楽しい。




エチオピアのタムケンと呼ばれている彼は、獅子舞の代わりにインジェラをかぶって、今年のR1グランプリに出場予定だ。

あまり英語は話さなない彼だが、

「I am Ethiopian!!!!!! 」

だけは知ってるようで、軽快なリズムに乗せて「私はエチオピア人です」と歌う。

なんてロックなんだ。

胸を打たれたおれは、「うん、I know.」しか言葉が出なかった。

そんな彼らから、奢ってやるよ!と次から次にビールが運ばれてくる!

ありごとーと、盛り上がっていたが、しばらくはしゃいで歌ったら、1人が

「今夜、民族のパーティがある!200ブルでおれがガイドしてやる!」

とか仕事の話してきたり、

売春婦らしい、ぽっちゃりというかもう森公美子みたいなおばちゃんが、

「ねぇ、私にビールを奢ってくれる?」

と艶やかな目で延々と見つめてきたり、

最終的になんか金のからみでにいちゃん二人が掴み合いの喧嘩始めて、いたたまれなくなって飲んだ分のお金だけ置いて宿を飛び出した・・

時間は午後4時を過ぎているが、かんかん照りの太陽がアスファルトを照りつけて、遠くの方にかげろうを見せている。

昼間っからたらふく飲んで、酔いに熱が絡んで覚醒状態なおれは、へらへらと愉快な気持ちでフラフラ歩く。

自然とおれの足は、街の東側にある巨大な湖、アバヤレイクを目指していた!

自然公園となっているこのレイクまでは6キロほどの距離があり、しかも湖の周りは深いジャングルになっている。その森ではプーマやアディダスが出るとトゥクトゥクのおやじ達に脅されていた。

とても歩いてレイクまでたどり着ける状態ではないのは頭のどこかで理解しつつも、酔っ払った勢いに任せて歩き続けた!

あ、ブタや!!このブタ!!ピッグ野郎!!

赤い花をつける巨大な豆の木!

花はこんなに綺麗なのに、豆はうんこみたいに茶色くデカイのだ。
たまに街で、女の子めっちゃかわいいのに男がじゃが芋みたいなカップルを見かけるが、なにか関係性はあるのだろうか?

そんなことを考えていると、

バサッ!!!バサッ!!!!

と巨大な羽音が上空から聞こえた!

えっ!!!??

見上げるとそこには!!!

でけぇぇ!!!!

まじで!!こ、こいつは!!
野生のプテラノドンである!!!

いや、写真じゃなかなか伝わらんけど、ほんまでかい!!

アフリカの大空を切り裂く様に羽ばたく全長5メートルはあろうかという大きな翼を上手に折り畳み、木の頂上でカメラに顔をそらすその姿は、まるで大げさな紹介を受けてブログに写真を貼られ、

「あ、あの、ガモさん、自分そんなんじゃないっす!」

と小声ではずかしがるペリカンの様である。

アフリカの大地の奥深さにおれのヘソ周りの毛もかなり濃くなってきたところで、橋を発見!

渡ってみると川の下から声が聞こえる!

「ユー!寄って来なよ!」

見下ろすと、
あ!今日昼間コーヒー飲んでた頃に話しかけてきてたトゥクトゥクドライバーの、あの、えー、彼やないか(名前忘れる)!!

おれは河原まで駆け下りていった!

「ヘイユーキー!何してんだい?ハウアーユー?」

「イェヒ!アイムクレイヒーファインだへ!」

「ん?どうしたんだ?バナナを鼻に詰まらせでもしたのかい?おいみんな紹介するぜ!彼はユウキ!人の名前を覚えることに関してはチンパンジーよりも知能が低いと言われているが、まぁ仲良くしてやってくれよ!」

トゥクトゥクドライバー仲間達が陽気に話しかけてくる。

「よろしくな!おれの名前はジニー、こいつはアンディだ!おれたちはみんなここいらでドライバーやってる仲間なんだ!」

「ナイフトゥミートゥー、えー、えっと、名前なんでしたっけ?」



河原には気持ち程度の川の流れがあり、割と水も綺麗だ。

彼らは人目もはばからず全裸になって体を洗ったり、サマーヌードのPVの山ピーの真似事をしたりしているが、夏休みのおばあちゃんちで採れた大きな大きなナスビみたいなあれがカメラワークにばっちり映り込んでおり、ジャニオタ達の発狂じみた黄色い声が今にも聞こえてきそうであった。

それならおれも、流した汗を乳首に伝わせただけでキャーキャー言われたい、とジャニーズの仲間入りをめざして服を脱ぎ、「ヘソ周りの剛毛が見るに堪えない系アイドル」の新路線で売り込みをかけたが思いの外だめで、結局おれにはギターしか残っていなかった。

川に足を突っ込みながら、西日に向かってみんなで歌う。



音楽!河原!西の空に傾く眩しい太陽!

頭の中で、夏ポテトのCM曲で使われてたランクヘッドの夏の匂いを大音量で流しながら、おれは浴衣姿の多部未華子と歩いた花火祭りの帰り道を思い出していたのです(妄想の中の)。

しばらくそこにいたあと、ほな帰ろうかなと思ったら、えーと、あの、彼が、

「乗ってきな!どうせ帰り道なんて覚えてないだろ?」

と、街までの一本道を無料で乗せて帰ってくれた。

そのあと、まだ陽は暮れなさそうなので、いつもの3ブルのコーヒーをちびちびやりやる。

お、寄ってきたストリートのがきんちょたちがギターに興味津々だ。

ここはひとつ歌のお兄さんとして彼らに音楽とふれあってもらいたい!

おれ「こんにちわ~クソガキども、元気かなー!!?歌のお兄さんだよー!みんなのなかで、ギター弾いてみたい人ー!」

「ハーイ!」「イエスイエース!」「お前なんてブタのお兄さんだイエース!イエース!」

おれ「よーし、ならそのファッキン汚い手でコードを抑えてみよう!上手くできるかな~!??ここを、、こう、、こう、、」

「うわぁ難しいなぁ!あんまりべたべた手を触ってこないでねロリコン!お兄ちゃんお手本になにか弾いてみてよ!」

おれ「よーしなら、お兄さんが一曲歌ってあげるよ!それ!

お前の冷蔵庫の中身を~全部食っちまうぞ~グレープフルーツちょうだい~!

ジャカジャカ!」

「うわぁ、薄っぺらいベース音にピッチもブレブレのひどい演奏だけれど、すごーい!」
「ほんとだ、子ども相手にゆらゆら帝国歌うだなんて、人間性を疑うとこあるけれどカッコイイ~!」

そして店を出てからも、歩けど歩けどキャッキャと言いながら付いて来て、かわいい。

と思ったのは最初の3秒だけで、すぐに鬼の形相で「もう付いてくるんじゃねぇ!!!」と追いかけ回すと、すぐさま鬼ごっこが始まる。

おれはギターを背負ってて、そのギターバックにタンバリンをくくりつけてあるんだけれど、おれに捕まらないように背後から忍び寄って、そのタンバリンを叩いて鳴らして逃げる、鳴らされたらおれ追いかける、そんなルールがただちに彼らの中で出来上がる!

そうはさせるか!!!おらぁぁ!!!

太陽が西の山に沈んでいく。

うん、この風景、香川の地元で見る夕日そっくりで好きだ。

って昨日の日記でも書いたっけ!?

まぁええわ、あの時のこと思い出すわ。

高校の時に、ちょっとした冒険で実家のある丸亀から、県庁の高松まで友達と自転車で行ったんだ。

四時間かかってやっと高松付いて、疲れてなんもする気せんで、ラーメンだけ食べて帰ったんだ。

時刻は午後6時。

太陽が、こんな感じの山にすごい速さで、ストーンと落ちていってて、空は赤くて、もうあたりは暗くなりかけてて。

おれたちは焦りながら自転車を漕いでた。

まだ半分ぐらいしか帰ってねぇよー!!おれたち無事に丸亀まで帰れるのかよー!!なんて。

ほんまリアルにちょっと泣きそうだった。

そんな遠くまで、車や電車じゃなく自分たちの足でやって来たのがはじめてやったから、めっちゃビビってたんだ。

このまま夜が来たら、おれたち生きてられるのか!?とか、すごく大げさに。

でも、そんな不安と同時に、そのスリルがたまらなかった!

ムチャをしてたい。自分の限界を知ってみたい。世界がどこまで広いのか、確かめてみたい。

そんな好奇心の延長線上が、今のおれなんかなぁ。

もしそうなら、早く大人にならなきゃなぁ。

なんて思うこともあるし、

そんな冒険心を無くした人間にはなりたくない、というかおれには永遠に無理だ、

なんて思うこともある。

子どもの時に見てた風景や胸の高鳴りが、大人になった今見てみると、ただの青春の一ページの、紙切れになってることがある。

たまらなく悲しい。

あんなに胸を焦がれていたバンドの音楽も、「懐かしいな」で片付けられるようになったものもある。

(はしゃぎ回った友達が笑わなくなった。

誰のせい?

分からないが。

それでハッピーエンドなんだ。)

って言い聞かせるように歌う。

旅をしよう。

ひたすらにその衝動に沿って、

赤い太陽に照らされていよう。

大丈夫、まだ胸はギュッとなる。

ぬかるんだ道を歩けば靴は汚れるし

埃舞う路地を進めば咳き込んでしまう。

それでも、こんなもんかと納得してないで、

あの曲がり角まで行こう。

旅をしよう。

あの曲がり角を曲がるために。

適当な音楽を口ずさんで、

石ころをけって歩いた。

そんなところです。

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エチオピア

Posted by gamoyuki