路上ライブでのクソみたいな話
昨日に続き二日連続で、ホーチミンのデート公園で路上した。
めちゃめちゃ悔しいことが起こった。
ギターケースを広げていると、1人のおっちゃんが近づいてきて、なんかやけににこやかに準備を手伝ってくれた。
人懐こいおっちゃんだななんて思っていると、ギターケースに掲げた路上ボードを、興味津々にめくったりいじったりして、見てくれている。
へんな外人が来て、面白がってくれているんだと思っていた。
歌っているとすぐに警備員が来て、ここはダメだ!と止められた時も、やけに親切に、移動を手伝ってくれる。
そして、おっちゃんはグッドサインをおれにおくって、去っていった。
良い人もいるもんだな、なんて思って再び歌い出す。
ふと気づく。
ギターケースの中に入れていたお金がない。
4万ドン、約200円。
昨日稼いだお金だ。チップが入っているのを見せかけるためにそのままギターケースに入れて見せびらかしながら今日も歌っていた。
最初にギターケースを開いた時は確かに中に入っていたのは見ている。
は?
なんでない??
ボードの裏に隠れてるのかな?
探してもない。
その時初めて気づいてゾッとした。
さっきおっさんがボードをめくったりして、ギターケースをガサゴソいじってた。
必死に歌っていたので、横目にしか見ていなかった。
….完全にその時に盗られている。
嘘だろ!?
あんなにいい人そうやったのに!
一気に怒りが湧いてくる。
ちょうどその時、あのおっさんがのこのこと僕の場所に戻ってきた。
見つけてすぐにかけよった。
「お前ギターケースの中のお金とっただろ!?返せ!あれはおれのお金じゃなくて、大切な募金なんだ!」
昨日見てくれたカップルや、親身になってチップを入れてくれた人たちの、気持ちのこもったお金。
そう言いたかった。
でもおっさんは英語なんて全く話せない様子。
だけど、焦った表情で身振り手振りで
「さっき別の奴が持ち去ってたのを見たぞ!」
そんなことあるか!!!ギターケースに近づいた奴はお前しかいねぇんだよ!!
だいたい本当に別の奴が盗ったのなら、その時におれに言うだろ!!!
「嘘つくんじゃねぇ!」
本当に腹が立った。
おっさんの人の気持を考えない堂々とした犯行と、そんなやつを信じてしまっていた10分前のおれに。
だけど、
詰め寄るとおっさんは大声で、ベトナム語で叫びだした。
「親切にしてやったおれになんだその言い方は!」
そんな感じのいいぶりだった。
両方のポッケの中をひっくり返して見せて、どこにそんな証拠があるんだ!!
とでも言いたげだった。
ゾロゾロと、なんだなんだと集まってくる野次馬。
もちろんみんな英語はわからないのでおっさんの主張を鵜呑みにする。
怪訝な目でおれを見つめる群衆。
ありえないくらい悔しかった。
と同時にものすごく怖くなった。
このままおっさんのペースに周りも飲まれたら、どうなるかわからない。
悪いのは完全におっさんだ。それはわかっているはずなのに、その場を収拾するための言葉がみつからない。
第一おれの英語での言い分なんて伝わらないのだ。
もし周りの奴らも一斉に怒り出したら。。
そんな身の危険さえも感じて、
「ありえない!!!!ファッキンガイ!!」
と手を広げてジェスチャーするのが精一杯だった。
クソみたいな気分でギターの元へ戻った。
おっさんは怒っているような、にやけているような、クソみたいな表情で去っていった。本当にクソみたいな嫌な表情で。
ありえない。
でもどうすることもできない。
おっさんと、やっと散らばり出した野次馬をにらみながら、心の底から悪態を漏らす。あまりにも意味のない抵抗。
それでも怒鳴りつけて取り返せばよかったのか?
警察でも呼べばよかったのか?
そもそも、お金の入っているギターケースをベタバタいじられてて、それをまったく危ないと感じられなかったおれ自身に一番腹が立った。
たった200円。でも腹の底から、心の底から、歌って稼いだ大切な募金だ。
悔しくて悔しくて、震えた。
まぁ200円でいい経験できたと思うかーなんて、普通に街角で騙されてなんか買わされたぐらいなら思うんだろうけど、自分のお金じゃないからこそ本当に落ち込んだ。
ここがアジアなんだ、と飲み込むしかなかった。
そこから、しばらく歌ってたけど、さっきのことが頭から離れずになかなか気持ちが入らない。
しかも、黄色い衣装を羽織ったお坊さんがやってきて、
募金するなんて本当かどうかもわからないのになんでこんなところで外国人が!
みたいなことをベトナム語でぐちってる。
表情でわかる。
座って聴いてくれてたカップルがそんなことないよとお坊さんをなだめてくれてて、それはそれで嬉しかったけど、どうしても気持ちはどんどん下がっていく。
もう今日は全然だめだ、今日はもうやめようかな。
なんて思ってたら、1人の女の子が上手な英語で話しかけてくれた。
「あなたはすごく上手に歌を歌うのに、こんな奥ばったところで歌ってたんじゃもったいないわ。私がもっといい場所を見つけてあげる!」
そして、彼女に連れられるがままに、無理やり移動させられてあんまり目立たなかった花壇の奥から、同じ公園内だけど人通りの多い大通りに移動した。
すると、まさかまさか、歌い出すとどんどんとみんな足を止めてくれて、歌い終えるとみんな拍手をくれた。
子供が一緒になって踊ってくれて、可愛かった。
生き返ったように、枯れかけの喉を、声を絞り出して歌った。
歌い終えるたびに、人だかりから1人、2人とチップをくれた。
これで最後です、と最後の歌を歌って、「カンノン!」(ありがとう)と挨拶をして、終了!
前半は本当に散々だったけど、彼女が連れ出してくれたおかげで、山あり谷あり、いろんな意味で忘れられない路上ライブの一つになった気がする。
結果は18万ドンと1アメリカドル。
日本円で1000円ほど。
本当にありがたい。
「私の言うとおり移動してよかったでしょ!?」と笑う彼女。その笑顔に、いろんな意味で助けられました。
ありがとう。
女の傷は女でしか癒せない!なんて言うけど、路上ライブの傷は路上ライブでしか癒せないんだなぁなど、1人で核心についているようで大したこと言っていないような言葉が浮かびました。
あーそれにしても悔しい!
深夜0時。水を買いにコンビニに行って、なんか一杯飲みたくなってビールも買って、シャッターの閉まった旅行会社の看板の前で一服。
レディはどうだ??いいマッサージあるぞ!
夜遅くまで客引きに忙しいモーターサイクルタクシーの兄ちゃん。
行かない!と断わるもバイクを降りて俺の隣に腰掛ける。
しつこいパターンかな?と思ったけど、さすがに夜も遅くて疲れている様だ。
眠そうなまぶたをこすりながら、
「マッサージはいいぞ~」
なんて口だけでうなだれている。
どうやらもう本気で勧誘という元気はないらしい。
タバコを一本あげて、並んで座ったまましばらく一緒にだらだら話した。
彼は客をマッサージ店に連れて行くと50,000ドン(250円)をコミッションでもらえると教えてくれた。
あんまり英語も話さないみたいだけど、ジェスチャーで胸を強調して、「グッドマッサージ!!」なんて気の抜けた冗談を言う。
それに2人でヘラヘラ笑う。
時間も時間で、こんなゆるいノリが妙に心地よかった。
目の前を行き交う酔った欧米人達と、ドブネズミ。
ゴミ箱をあさるおばさん、ダンボールを広げて眠りにつくじじい。
男三人乗りでかけていく原付。彼曰く風俗に行くバイクらしい。
こうやってドライバーと話していると、自分が、土地の人たちの日常と観光客の間のちょうど真ん中をいったりきたりしている様で、ふわふわ、この街に溶け込めるようで、悪くなかった。
酔いがまわる。
ドライバーも気合いを入れ直してもう一仕事探すらしく、軽くハイタッチしてまたバイクに乗ってネオンの向こうにかけて行った。
いい客捕まえろよ~なんて、エールを後ろ姿に送った。
そんな夜です!!!!
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