イスラエルとパレスチナを実際に旅して思う、国際的な”#Stand with Israel”の風潮への違和感の話
メイクホムス!ぼっちシンガーです。
路上ライブで世界一周の旅などを経験し、現在は東京で音楽活動中。
旅と音楽、その他好きな事だけを鼻息荒く語るよ!
2023年10月、中東イスラエルにむけ、イスラム組織ハマスが3000発以上のロケット弾を発射。
イスラエル南部に戦闘員が侵入し、音楽フェスを襲撃したり、民間人を殺害したり人質に取るという攻撃を行った。
イスラエル軍はすぐさま報復作戦を行い、ハマスが実効支配するパレスチナ・ガザ地区を空爆。
10日現在で1600人を超す死者を出す、戦争状態となっている。
アラブ国家を除くほとんどの国際社会は、先制攻撃を行ったハマスを批判。
カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国からなる主要国首脳会議(G7)は、
日本とカナダを除く5カ国でイスラエルを支援する共同声明を発表。
ハマスに一定の理解を寄せるアラブ国家と、SNS上で#Stand with Israelで盛り上がる西側諸国との間で、分断が広がっている。
しかし個人的に、一方的に片方が悪いとされて、イスラエルのパレスチナ・ガザへの報復戦争が聖戦であるかのように支持される国際社会の流れには、いささか気持ちの悪さを感じている。
もくじ
もちろんハマスのテロ攻撃には断固反対。
大前提として、ハマスの非人道的なイスラエル民間人へのテロ攻撃は、許されるべきものではないと思う。
罪のない一般人を巻き込み、特に力の弱い女性や子供を狙った残虐な行為は、誰の目から見ても悪である。
また、ハマス戦闘員たちは多数のイスラエル人や外国人をガザ市内に連れ去っているとのニュースもある。
彼らは「ガザ市内が警告なしの空爆を受けるたび、人質を殺害していく」と声明を出している。
やっている事が中世の戦争のようだ。こんなことをやっていては、国際社会からの賛同など得られるはずもないだろう。
ハマスの過激な行動を擁護できる部分は1ミリも無いのだけれど、
だからといって、パレスチナが全面的に悪いかのように報道されていることには疑問を感じている。
まず第一に、パレスチナ人全員がハマスの攻撃を支持しているわけでは無いことを理解しなければならない。
ハマスはガザ地区に住むパレスチナ人の38%からしか支持されていないという報道もあり、さらにパレスチナ全土の7%ほどしかないガザ地区を支配しているハマスに対して、パレスチナ政府所在地・ラマラがあるヨルダン川西岸地区はファハタという別の党が政権を握っている。
ファハタとハマスはガザを巡って2007年に内戦を起こしているほど仲が悪いので、「パレスチナ人=ハマス」ではないという事を念頭に置いて考えなければならない。
それを考慮したうえでも、今回のハマスのイスラエルへの攻撃に対しては肯定的に捉えているパレスチナ人が多いのは事実。
だからと言って、一方的なテロ行為で多くの一般市民が命を落としたから、それに対する報復でガザを攻撃するイスラエルこそ正義だ、という簡単な話ではない。
多くのパレスチナの人々が、ハマスの残虐なやり方にさえシンパシーを感じてしまうのは、
イスラエルからの長きにわたるパレスチナ人弾圧の歴史に原因がある。
以前、イスラエル・パレスチナ双方を旅した時の経験から、そんなことを思う。
イスラエルに弾圧され続けてきたパレスチナ人の現状
エルサレムからパレスチナ、ラマラに入った日のこと。
噂に聞いていた、イスラエル側が勝手に建てた厳重な壁(国境よりもだいぶパレスチナ側に食い込んで建設されている)を抜けると、これまでの西洋的なイスラエルの街並みから一転、アラビア文字踊るアラブの世界に。
いよいよパレスチナ。
常にキナ臭いニュースが飛び交うその震源地にやって来たのだ、と身構えたけれど、
思いのほか街は多くの人で賑わい、5、6階建てのそこそこ大きなビルやショッピングモールなんかもあって、
入国した時の印象は「パレスチナ、意外に都会だし平和だなー。」って印象だった。
しかし、しばらく歩いていると、真っ黒焦げのビルを目撃した。
火事でもあったんかなーと思って見てたら、横にいたおじさんが言う。
「イスラエル軍がボムを使ったんだ!奴らはここがハマスの隠れ家だと言っていきなりビルを爆破した!ここはただの街の両替所なのに!」
「ご馳走するから、どうかパレスチナの現状を発信してくれ!」
そう言っておじさんは俺をカフェに連れて行き、語る。
イスラエルに突然住む土地を奪われ、勝手に壁を造られた事。
その壁の内側・パレスチナ人側の土地ですらも、我が物顔でイスラエル軍がやって来ては、
今回のように突然の退き指示を出されては容赦なく爆破していく事、
そこに勝手に「イスラエル人入植区」を作られる事。
壁は日に日に浸食してきている事。
そして、経済力も軍事力も圧倒的なイスラエルを前に、パレスチナ人はそれでも反抗出来ない事。
宿で出会った、パレスチナの大学に留学に来ていたヨーロッパ出身の大学生からも、リアルな話を聞いた。
彼自身は無神論者で、「この問題に関してはリベラルだ」と自称していたが、パレスチナに住んでみて、この地の人たちが受けている悲惨な現状を目の当たりにし、イスラエル軍への疑問を募らせていた。
「数カ月前、パレスチナ人が射殺されたニュースは知ってる?ヘブロンって街で不審な動きをするパレスチナ人の男がいた。イスラエル軍の兵士が彼を制止するために彼の両足にガンを撃った。彼は倒れこんだ。そこまでは仕方がないと思う。テロリストである可能性もあったからね。兵士に他のチョイスは無かった。」
「問題はそこから。イスラエル兵はその後、倒れこんで抵抗できないパレスチナ人に、一発づつ銃弾を撃ち込んでいった!両腕、背中…まるでゲームみたいにね!そして最後に彼の頭を打ち抜き、殺したんだ!」
「表向きはテロリストの疑いがあるパレスチナ人が射殺されたってニュースだけれど、拡散されたその動画を見る限り、完全にイスラエル兵は楽しんでた。それでも彼らは正当防衛で罪には問われないよ。ヘブロンはパレスチナの街なのに、完全にイスラエルにコントロールされてる。クレイジー。」
「おれ自身、大学の寮をイスラエル軍に襲撃された経験がある。急に立ち退きを命ぜられたんだ!その時、おれ達が寮で飼ってたネコを、イスラエル兵は撃ち殺したんだ!おれの大切なネコを…」
彼らの悲痛な表情には、かける言葉も無かった。
イスラエル側からそんな仕打ちを受けた彼らに、「イスラエルにもいい人もいるよ!みんな仲良く!ラブ&ピース!」なんて軽い言葉、かけられるはずもなかった。
こんな平和な街で、日常的にこのような迫害が起きているなんて、にわかに信じがたかった。
もちろん、一方的なパレスチナ人側の主張のみを鵜呑みにするのは危険だ。
砂漠のど真ん中でバスも無くなって、死海のほとりを彷徨っていた時、その湖畔にテントを立てて全裸でヒッピーみたいな暮らしをしている、イスラエル人のおじさんに出会った。
「ティーでも飲んでいきなよ。」「バスも無いんでしょ?テントに泊まっていきなよ。」
と気遣いをしてくれるめちゃくちゃフレンドリーで優しいおじさんだったんだけれど、
ちょうどその時、エルサレムでパレスチナ人テロリストが市内バスを爆破するというニュースが流れた。
すると、さっきまで温厚だった彼の表情が一変し、
「ファック!またテロだ!パレスチナだ!」
「奴らは人間じゃない!悪魔だ!」
と激高して叫びだした。
イスラエル人もイスラエル人で、これまで幾度となくパレスチナ側からのテロ攻撃を受けてきた、平穏な暮らしを脅かされてきた歴史があるのだ。
パレスチナ人への迫害ともとれるイスラエル政府の弾圧に対しても、
「危険なテロリスト集団を規制するのは、地域の安全のためにも必要なこと」
として、イスラエル人から見ると肯定的にみる意見が多かった。
イスラエル人からしたら、この国は自分たちの土地。
そこを守るために、危険を排除しようと考える事は何も間違ってはいないだろう。
しかし、それはパレスチナ人も同じ。
当時の僕には彼らのどちらかが正義でどちらかが悪だなんて、到底決められるものではなかった。
国際的な#Stand with Israelの風潮には違和感
スナクさんこれはどうなの…全ての根源であるイギリス首脳として… https://t.co/QdLb9yK1rw
— ガモウユウキ / ぼっちシンガー世界を周った後。 (@gamoyou) October 9, 2023
そんな経験から、イスラエル支持を示すハッシュタグ「#Stand with Israel」をつけての、
イスラエルを応援する風潮がブームになっている事には疑問を感じている。
ハマスのテロを憎む気持ちはよく理解できる。
しかし、テロを正当化する気持ちは全くないが、土地と人権を奪われたパレスチナ人がイスラエルに対して持つ憎しみの感情も、同じく理解はできる。
唯一、有名な三枚舌外交でこの問題のもとを作ったイギリスの首相が、このハッシュタグをつけて他人事のように感傷的になっているのだけは、理解できない。汗
十年前くらいに、ムハンマドの肖像画を描いたフランスシャルルエブド社が報復襲撃され、反ヨーロッパ感情がイスラム国家に広がった事件の記事でも書いたけれど、
(この場合は、表現の自由の前では他宗教を冒とくしても構わない、と勘違いしてしまったシャルルエブド社のように)
常に自分たちの価値観こそが絶対に正しい、という思い込みは危険だ。
大前提として、暴力を仕掛けたほうが悪いのは当たり前なんだけれど、だからといって殴られた理由も聴かずに、殴ったやつにやり返せ!というのはなんか違う気がするんですよ。
例えば、ずっといじめられてきた少年が持っていたカッターでいじめっ子に反撃した時に、
いじめっ子が被害者ムーブで世間から同情を買い、いじめ問題自体にはスポットライトが当たらなかった時のような、気持ち悪さがある。
もちろん当事者から見たら「切り付けてきたあいつが悪い!」「ずっとイジメてたのはそっちだろ!」とそれぞれの正義が存在するのは分かるんだけれど、
外野が「いじめっ子くんがかわいそう!」「いじめられっ子にやり返せ!」とかいうのはなんか筋違いな感じがするので、
「#Stand with Israel!」と、一方の肩だけ持って感傷的になっている人たちのムーブメントには、
どうしても賛同できない自分がいるのです。
イスラエル支持を明言しない日本政府のスタンスへの個人的な意見
10/14日現在では、今回のハマスの民間人襲撃テロやそれに伴うイスラエル軍の報復作戦について、
日本政府は過度に片方だけを支持することを避けている。
G7のうち欧米5か国が発表したイスラエルを支持する共同声明にも加わっておらず、
岸田総理はハマス、イスラエル双方に対して自制を促すようなコメントを表明している。
個人的意見としては、
ハマスの残虐なテロ行為に対しては批判するべき。
しかし、ハマスの過激な思想を生んだ根源には、イスラエル人のパレスチナ人への人権無視の弾圧の歴史がある。
だから、イスラエルの報復作戦について支持は出来ない。
そういう風に思っている。
そういう意味では、日本政府のスタンスにおおむね賛同している。
(まぁ、アラブ国家の批判を買う事で石油資源確保に影響が出たりとか、いろいろ国益を考慮しての判断なのでしょうが)
もしかしたら今後、どっちつかずなムーブと受け取られて国際社会での信頼を損ない、身を亡ぼす原因になるのかもしれないけれど、
この問題に絶対的な正義は存在しないと思うし、お互いの主張をくみ取りながら妥協点を探り合った和解案が提示されない限り、解決は難しいと思う。
それを実現するためにも、国際社会はどちらかに肩入れしすぎることなく、極力平等なかたちでこの問題を見る必要があると、個人的には思う。
まとめ
今回僕は、旅をして実際に見て感じた事からこのような結論を出しましたが、
もちろんこれも絶対正しい考えであるとは思えないし、いろんな意見があると思います。
ただ、まずは今起きている問題の根底には何があるのかを知る必要があると思うし、
それをきちんと理解したうえで、この問題の自分なりの意見を持つことが、今の日本人には必要なことではないかなと思います。
誰かがより深くパレスチナ問題を考えるための材料に、僕の旅先で見聞きした経験が少しでも役に立つのであればいいな。
そんなことを思い、今回の記事を書いてみた次第です。
そんなところです。
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