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最恐都市ヨハネスブルグで路上ライブするとこうなるという話

2019年8月1日

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明日!!ヨハネスブルグをついに!ついに出るぞぉぉぉぉお!!!!


いやはや、宿の猫ちゃん達ともお別れだ!
ううう泣くな!よし、最後に目一杯抱っこしてやる!あ!あた!痛い!ひっかくな!ツンデレだな・・

いやはや!!
入国後2時間でキャッシュカードを盗られ、その処理や、送金受けとり待ちで、かれこれ1週間も滞在してしまった。

さて。

今日はそんな思い出深いヨハネスブルグ最後の滞在の日。

さてなにしよかと。

いや!!!!

もう決まってる!!!

路上だっ!!!

路上ライブしてやるぞっ!!!!!!!!

うぉぉおお!!!!!!!!

アフリカ到着前には、

アフリカで!?ヨハネスブルグで路上!??無理無理死ぬ!!がちで死ぬ!!!ふざけんな!!

と恐怖におののいて、路上ライブ封印宣言、このブログのタイトルも「ぼっち世界を周る~世界の宿でひきこもりろりん~」と改名を検討していたが、
ブログのタイトルがクソダサい上に南アフリカ入国2時間で全財産の入ったキャッシュカードを盗まれ、なにかもう吹っ切れたおれ。

むしろこの南アフリカから、盗られた8万円分取り返さな気が済まんっ!!!

強盗でもなんでもかかって来いや!!逆におれがお前のハートビートに強烈なグレッチのタックルをかましてやるわー!!!

と、ラット一つを商売道具にしているわけでもグレッチのギターを持っているわけでもないが、気分はヨハネスブルグサディスティックのままで一人勇んで身支度を整えたおれ。

もんもんとした気持ちを胸にギター一本持って宿を飛び出した!!

かと言っても本当に治安の悪いシティ中心部でやったりしたら3分に一回ぐらいで銃撃を受けそうだ。
というかまずギターを持って通りを歩いた時点でギターを奪われて終了だろう。

おれは宿のあるランドバルグというシティ郊外のエリアの、この辺りの住民がよく利用するクレスタというショッピングモールのあたりに目を付けた。

以前そこまで歩いて行った時、結構人通りが多くて、通りでバスを待つ人たちが大勢いたのを見たのだ。

何店か路肩で汚い靴やベルトを売る屋台も出ていた。
幹線道路に面しているので、強盗に襲われる事もないだろう!

アジアでつちかった路上スポットを探すおれの嗅覚が言う!

「あそこなら、殺れるっ!!!!」

宿から幹線道路を30分歩いて到着したクレスタ。

時間は午後三時。

まだ帰宅ラッシュの時間ではないので人通りはボチボチといったかんじだが、悪くはない。

通りをゆっくりと歩く。

おっ!この辺なんていい感じだぞ!

さぁ、おれ!!

あのバス停の前で、ギターを置くんだ!

隣の屋台のにいちゃんにここでやらせてもらっていい?なんて聞けば断られる事もなかろう!

さぁここだ!!

おれの足!!歩みを止めろっ!!!!

……..スタスタスタスタ(足早に通り過ぎるおれ)

んぁぁぁぁぁぁぁぉ!!!!!!!!!!

だ、だめだっっっ!!!
怖いっっっ!!!!!

いや、なんなんだこのとんでもねぇ怖さは!!

郊外という事もあって、金持ちはみんな車で移動するのだ。
だから道を歩くのは必然的にハングリーさが滲み出た男達、生粋のBボーイ、浮浪者、派手な服装のねぇちゃん、とにかく圧倒的異国感!!そして男は皆五厘刈り筋肉隆々のアフリカ人たちの中で、一人長い髪のアジアンのおれ、圧倒的異物感!!!!!!!!

路肩のボロ屋台のにいちゃんは、「なんだこのアジア人?」とでも言いたげにガムを噛みながらにたにた見つめてくる。

おれはこんなところで歌うのか!?!?

ギターを出した瞬間ボッコボコにされるんじゃないのか!?!?

そもそも、これまでヨハネスブルグのいろいろなところを見てきて、路上パフォーマンスをやってるのなんて見た事がないんだ!

なんでだ!?

もしかしてもしかすると、路上パフォーマーは一人一人消されて行ってるんじゃないのか!?

マフィアかなんかが
「俺たちの島を荒らすってことは分かってんだろうな?」
なんて言って、一人一人、ケープタウンの喜望峰からコンクリ詰めにされて大西洋に沈められてるんじゃ・・・!??

だ、だめだ、妄想がとんでもないところまで飛躍してしまう。

これまでのアジアでの路上ライブ旅でも毎回毎回怖さに恐れおののきおのののか、なかなかギターを取り出せない事はあったのだけれど、それは

「こんなところでやって怒られないか?」
「警察来ないかな?」

という、まぁいわばうまく路上ライブが出来るかどうか?という不安だったのだけれど、

アフリカは違う!!

初チャレンジというのもあるけれど。

「無事に帰れるのか!!??」

路上の前にそんな事を考えたのは初めてだ。

あぁだめだ、流石に無理だ。

死んだりしたらもともこももこみちもない。

いい加減いちいちつまらんいんを踏むのもキモがられるし!

…..やはり無理なんだ、アフリカでヒョロヒョロのアジア人が路上ライブなんて、無理に決まってる。

完全に意気消沈したおれは、バス停の外れの軒下に腰を下ろした。

はぁあ。

ため息をついて空を見上げると、夏の強い日差しと、木漏れ日を揺らす乾いた風が心地いい。

タバコを一本くわえながら、通りを行き交う人たちの様子をぼぉーっと眺めた。

髪を綺麗に編み込んだ女子高生が、友達とのおしゃべりにオーバーなリアクションで笑う。

バス停でバスを止める係のBスタイルのにいちゃんが、威勢良くバスの行き先を叫んでいる。

ゴミ袋をいっぱいに持った浮浪者のおっちゃんが、仲間と通り違いにヘイ!と拳で挨拶をして、調子はどうだ?みたいなことを話している。

あれ。。、

少しずつ少しずつ、勘違いかもしらんがおれの存在が、この町に馴染んでくる気がした。

なんか、アジアで通りを眺める時に見る風景と、何も変わらんじゃないか。

人たちの生活スタイルは違えど、肌の色もバックグラウンドも違えど、なんか、結局同じ人間だなぁと、へんな安心感が湧いてくる。

受け入れられるかどうか、そんなのはなんか、どうでもよくなってきた。

ポカポカの陽気、青い空、ロータリーをぐるぐる回る高級車、向かいのマックの看板、おれの足元のギター。
ずっと、音楽は国も言葉も超えるんだって、信じて弾き続けてきたギター。

もうこれしかねぇよ。

やってやる!!

金はもうない。

手にあるのはこのギターと、精一杯歌うことができる暑苦しい命だけだ。

盗られて怖いものなんてなんもない。

アフリカでもやれるんだって、
生きてるぜって歌ってやる!!

とてつもなく大袈裟な、しかし強烈なエネルギーに突然突き動かされ、バス停の隣に戻って、ギターケースをアフリカの大地に寝かせた!

なにするつもりこのボーイは?
と隣の太ったおばちゃんが心配そうに眺める。

アフリカでテレビやバスのラジオから、ずっとアフリカ独特の、軽快なリズムが流れててなんか体に染み付いていた。

Emで適当にそんなリズムを刻みながら、アドリブで歌ってみた。

足につけたタンバリンで乾いた土を蹴る。
リズムに体が、ギターの音が、声がノッてくる。

前を通るブラックスーツのおじちゃんがリズムに合わせてアフリカンなステップを踏みながらグッドサインをくれる。

歌詞もメロディもごちゃまぜな即興ソングを歌い終えると、遠くから声がした。

「おい、ボーイ!こっちでやりなよ!こっちの方が人が多いぜ!!」

Bボーイ気取りのバス止め係りのにいちゃんが、バス停ど真ん中でやらせてくれた!

たぶん、こんなところで路上パフォーマンス、しかも見慣れないアジア人ってことで不審がってるのか?
目を合わせてくれない人がほとんどだったけど、こっそりそのリズムに足を鳴らしてくれてたりする。
アフリカンの血ってやつか??

なんかそれだけで俄然テンションが上がる。

ちょっとずつ、ガードレールに腰掛けて見てくれる人が増えてくる。

50セント(5円)とか小さい額だけど、結構みんな入れてくれる。

バスを待つそのわずかな時間で、ちょっと照れくさそうに白い歯を見せながら、ダンスを披露してくれる。

アフリカの地で、ヨハネスブルグで、アジア人として、歌う。

なにに勝つのか知らんが、絶対負けるか、と声を張り上げて、腹の底から歌った。

いつしか、やっぱ歌うのって楽しいなぁって、心の底から充実感がこみ上げてきて、目の前のお客さんと大地を蹴ってリズムに酔う。

あぁ。

何て素敵なんだ。

一時間ほどやって、結果は37.5ランド、約300円。

目標だった8万円にはアホみたいに届かなかったが、強烈な日差しの中赤信号に止まる車を回って物乞いをして、一日5ドルとかで生活している人たちも多いこの国では、感謝せずにはいられない。

そして、アフリカでも、ヨハネスブルグでも歌えた、ということが嬉しかった。
いつもいつも弱いままの自分、周りの目を気にしてやりたいことをやれない自分からまた一つ、抜け出せた気がした。

もう音楽にできないことはないな!

なんで、有頂天になって、気分がよくなったおれは下手なアドリブラップで人生とはなんぞや?と自分の心を言葉に刻みながら、幹線道路を歩いて帰った。

たぶん周りから見たらかなりいかれたやつだったろうけど、そんな事は問題じゃないように感じた。

やはり、ここはアフリカ。

本当に危険なところでは、こんな風に普通に歌わせてなんてもらえないはずだ。もしかしたら本当に最悪なケースだってある。

これからも歌えそうな場所があればチャレンジはしていくが、安全かどうか、そこだけはガチで見極めていかないといけない。

だけれど、勝手な先入観でおれにはできない、と決めつけてしまうことは、本当に下らないことだなぁと今日、つくづく感じたんだ。

アフリカは偉大だ。
人々のハートに、音楽が、ビートが染み付いていやがる。

こんな面白い場所はないぜ。

なんて、一発目から感じさせられた。

最低限の許容範囲内で、精一杯、音楽でこの乾いた大地と戯れていたいと思った。

ありがとうヨハネスブルグ!いつか8万円返せよっ!!!

そして明日のバスでジンバブエに行くぜっ!!!!!

そんなところです。

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