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少女に投げキッスをもらう話

2019年8月1日

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今日の旅の一曲!イルリメの “トリミング"!
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ポルト三日目!

昨日、ケータイをお医者さんに連れて行ったおれは、170ユーロという天文学的な数字の出費を食らってしまう。

今日も歌って、取り返してやる!と気合十分にテントを飛び出した!

ポルトは海(というか河口)から駆け上がる崖のような地形のエリアに市街地が広がる、坂の多い町である。

斜面を下って行くと、旧市街の古い建物の隙間から海が見えて、カモメの鳴き声が聞こえる。

カラフルで可愛らしい石造りのビルや、ベランダにかけられたコロニカルな色合いの花、そしてロープに吊るされた洗濯物に住む人達の息遣いを感じながら歩けば、ガタンゴトンと音を立てる路面電車に追い越される。

魔女の宅急便の舞台は世界中にある(ってゾロさんが言うとった)けど、今までおれが訪れた町の中では一番、あのイメージに近い街のような気がする。

この細い路地を曲がれば、言うことを聞かないほうきを必死に抑えながらキキが飛び込んでくる気がするの。

そんなで、街のやんちゃボーイ達に車に誘われて「ふん!」とツンツンしちゃうようなリボンの女の子がいたら、

「あいつらちょっと感じ悪いよね。せっかく作ってくれたおばあちゃんのフィッシュパイも食べないような奴らなんだぜ!行こ!向こうに飛行船が来てるんだ!」

なんて声をかけて手を引いてやる!と意気込み、街を歩いた。




そんなで鷹の目で嗅覚を研ぎ澄ましていると、女の子は見つけられなかったが、海沿いの遊歩道に丁度いい腰掛けを見つける!

周りにはオープンデッキのレストランやカフェが並んでて、ぼちぼち人も歩いてる!

いい感じ!ここで歌おう!

なにかビビッと来るものがあって、すんなりとギターを取り出した!

風に運ばれる潮の香りが心地よくて、そびえ立つように丘の上にかけて続いていく街を眺めながら、雰囲気のままに歌えた。

一時間くらい歌って、そろそろ移動かな、なんて思ったんだけれど、ブラジリアンっぽい観光客風の女の子2人が隣に腰掛けて、海を眺めながら浸るように聴いてくれていた。

嬉しくなって、彼女らがいくまでは、何て思って、続けてる滑らかに声を上げた。

結局、彼女らはずっと聴いてくれてて、もう一時間も歌った。

心地いい時間。

そのあと、橋を渡って昨日もやった地元エリアの商店街でもやって、丘の上の公園、その芝生の上に寝転がる。


海から一気に駆け上がったような、崖のような地形のおかの、そのてっぺんにある公園。

なんだか空が近くて、別の惑星にいるみたいな気分になる。

腕を頭の後ろに回して、イヤホンから音楽が流れる。

飛び交うカモメ達のその上、半分の月はまるで水彩絵の具で書いたように透明な存在感で青い空に浮かんでる。

風が吹き、木々が揺れ、子供達のはしゃぐ声が聞こえて。

ほんと、なんでもないことなんだけれど、その空気感が心地よくて、おれはこの星で、今まさに生きているんだなぁ…なんて、妙に感動する。

なんでもない公園にも、こんな美しさがあるんだ。

いま、この目でしか見られない、肌でしか感じられない、心で感じる美しさがある。

忙しく駆け巡る人生の中で、ふと感じる、こんな瞬間を大切にしたいなぁなんて思った。

イヤホンから、最近はまってる韻シストってラッパーの曲が流れて、なんか気合入って、

「行くか!」

と立ち上がる!

昨日もやった石畳のショッピングストリート。

ちくしょう、久々に4時間とか歌うもんで、高音を出そうとするとヘナヘナと声が裏返る!

うまく歌えないし、人もまばら…、もういっそ、と思って、日本語で、思いつくメロディのままに歌ってみる。

謎の言語で人通りも途切れたストリートで歌う変なアジア人である。

みんな、「なんだこいつは…」という感じで、見えてないふりを決め込んだように歩く。

でも、不思議と今日は変に落ち込むこともなく、「冷めた視線も愛してるんだぜ!」なんて歌詞で歌ってみたりする。

音楽は偉大なんだ。まるでどんな窮地でも救ってくれるスーパーヒーローのようであるし、または、「わかるよその気持ち」って優しい匂いで包み込んでくれる女の子の胸の中のよう。

おれにとって、音楽さえあれば、どんな痛みも悲しみも愛に変えられる。

変えてやるんだ!

なんて、熱くなって自分の中で盛り上がりながら歌ってた。

ほとんどの人は見向きもせずに通り過ぎていくだけだったんだが。

ブラウンの目をした小さな女の子がお母さんに手を引かれて前を通り過ぎていく。

女の子は興味を持ってニコニコしながらおれの方を指差して、見たい!みたいな仕草をお母さんに訴えるんだけれど、「何も見えてない!」と決め込んだように歩くお母さんに手を引かれ、よたよたひきづられて行く。

少し遠ざかってもまだ振り向いて見てくれている女のコに、

(ありがとね!)

とスマイルを送ったら、

彼女、あどけない仕草で投げキッスをくれた。

たまらなく幸せな気持ちになったんだ。

空が高くて、どこかへ行けそうだ。

今日のチップは44ユーロ!

そんなところです!

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ポルトガル

Posted by gamoyuki