おれの未来のプロポーズの言葉が決定した話
キリマンジャロ。
アフリカのど真ん中、ほぼ赤道直下に位置する、アフリカ最高峰の山である。
その雄大な姿と、馬鹿でかいアフリカ大陸の、その頂点というワイルドな響きにあこがれて、おれは2年前ぐらいからいろんなところで話してきた。
「おれ、アフリカいくっす!キリマンジャロのぼるっす!ちゃっす!」
キリマンジャロに登る!?
みんな眉をしかめて聞き返してきた。
キリマンジャロって、お前みたいな、登山家でもなければ体力もなさそうなひょろひょろ男が登れるとでも思ってんの?バカじゃねえの?お前みたいな、中学時代ほとんど友達もいなかったような、風呂に二日に一回しか入らないやつが?シャンプーで体も顔も洗っちゃうようなやつが?
そんな周囲の声は、逆におれを燃えさせた。
絶対に登ってやる。
絶対に頂上までたどり着いてやるんだ!
あいつらを見返してやる!
そう、偶然登山ツアーで一緒になった鈴木ちなみ似の女の子と、時に励ましあったり、時に手を取り合ったりして困難を乗り越えながら、いつしか確信へと変わっていったこの恋心を胸についに登頂を果たし、宇宙の果てからやってきたような異様なほど大きくて美しい朝日を二人で見ながら、
「ねぇ、この登山が終わっても、この世の果てまで一緒に歩いてくれないか?」
なんて告白して、ダイヤモンドのような一粒の涙を頬につたわせながら、コクリとうなづくちなみちゃんと撮った初めてのツーショット写真を、
(この広いアフリカの頂点にたどり着くことはできたけれど、二人で歩むこの人生はまだまだ一合目。それでも、君とならどこまでもいける気がしているんだ。)
なんて説明つきでインスタグラムにアップしてやるんだ!!
そして五合目まで降りてきて、
「おめでとう!」「幸せになってね!」「ちなみ、なにを血迷ってるの?」
というちなみちゃん側の友達からの応援メッセージと、
「はいはいアイコラ乙!」「三回吐いたわ。」
というおれ側の友達からの愛情の裏返しな応援メッセージに一つ一つ二人で返信を考えながら、山小屋の暖炉の火に当たってやる!!!!!
当たってやるんだ!!!
そのつもりだったのだ!!!!!
だけどっ!!!!!!
ごめんなさい、キリマンジャロ登山、諦めます…..!!!
うぉぉぉおん!!!
ち、ちがう!嘘じゃないんだ!
本当に最初は登る予定だったんだ!!
キリマンジャロは初心者でもガイドをつければ登頂を目指せるってネットにも書いてたんだ!
ただ!!高いんだよ値段が!!
アホみたいに高くて!5日の登山工程で10万!!
服やら靴やらレンタルしたりチップも考えたら15万は下らん!!15万だぞ!!!??
おれがヨハネスでカード盗まれたの知ってるだろ!?
そこから、いつか買わないかん日本までの飛行機代込みで25万円で、アフリカ縦断だぞ!!??
払えるか!!15万て!!
キリマンジャロ登って、降りて、それで終了だわいね!!おれの旅終了ー!!
ってかなんや!「ごめんなさい、キリマンジャロ登山諦めます」って!!キモ!そうとうキモイで!
なんでおれが謝らないかんのや!!!
誰もおれがキリマンジャロを登ることに対して期待もしてなければ「いや、知らんがな」って話やわ!
アホか!自意識過剰もたいがいにせぇよ!
こっちが謝ってほしいぐらいやわ!
あほ!あほーっっ!!!!!!
はぁ……
こうして、無事「おれ、キリマンジャロ登るっす詐欺」の容疑を晴らしたおれ。
未練タラタラでとりあえずキリマンジャロのふもとの町、モシまではやって来た。
バスの到着は夜だったので、近くの宿で一泊をして、朝日に照らされて町を散歩した。
北の空を覆い尽くすようにとんでもなくでかい山がそそり立っているのが見えた。
その斜面は、半分以上が雲に隠れてしまっている。
それぐらい高いのだ。
あれがアフリカ最高峰、キリマンジャロか。
あの雲のさらに奥に、人間が、こんな俺でさえもたどり着ける権利があったなんて事が、とてもじゃないが信じられない。
でけぇー。。。
まぁ内心、やっぱめちゃくちゃ行きたい。
この旅をここで終わらせてでも、登る価値はあるだろう。
この広大なアフリカの大地のその馬鹿でかさとエネルギーを、これでもかってくらいに感じる事が出来ただろう。
でも、おれにはまだ、見た事のない世界が多すぎる。
音楽で、触れてみたい文化や出会いたい人達が、歳取ってからではどうにも出来ないスリリングな毎日が、まだ目の前に転がってる。
後悔はしたくない。
どんな選択をしたって、自分の選んだ道こそが正しいんだ!
なんて自分に言い聞かす。
まぁ、結構、欧米人とか定年後の夫婦でツアー組んで登ってる人とかも多いみたいやし、キリマンジャロは歳取ってからでもいつか来れるだろ。
いや、うん、絶対来てやる。
日本帰って金貯めて、
「ひとり10万円?おやおやキリマンジャロって意外にリーズナブルに登れるんだねぇ~」
なんて言いながら妻の分も含めてゴールドカードで払ってやる!!
となると、いつか可愛い彼女が出来たとして、プロポーズの言葉はもう決まりやな。
「な、なぁ!おれと一緒に、キリマンジャロ登ってくれん!?」
「えっ?なに?ここに来て下ネタ?ちょっと止めてよ~ははは!」
「ちゃうよ!ほんまにキリマンジャロ登るんやて!なんでキリマンジャロで下ネタになるん!前から言うとったやろ、おれの夢は将来奥さんとキリマンジャロ登る事やって!」
「もう~よくわかんないけどいいよ!結婚しよっ!」
「えぇー!!な、なんか腑に落ちんけど、ありがと。はいこれ指輪」
……みたいな、フランクなあれも、また憧れるな。(まず彼女をみつけろ)
まぁとにかく、とりあえずここモシまでやってきたので、キリマンジャロのふもとにコーヒー畑の広がる村があるらしくて、そこへの半日トレッキングツアーにでも参加して気を紛らわせよかな。。
運が良ければ、空が晴れていれば馬鹿でかいキリマンジャロの全貌が綺麗に見れるビューポイントらしい。
よっしゃコーヒーの試飲あほみたいにしてやるからな!枯れるで!コーヒー畑ひとむね枯れるでー!!覚悟しとけよー!!
そんなところです!
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ディスカッション
コメント一覧
キリマンジャロ、山頂まで登らなくても、山麓のコーヒー畑辺りをウロチョロ歩いて、
『おっおれ、キリマンジャロ登ったよ!(途中までだけど)』
っていう、キリマンジャロ登ったよ詐欺に切り替えてみてはいかがでしょうか?
それいいですね!山頂までたどり着いたかどうかなんて、実は問題じゃないんです!本当は登ってやる!と足を踏み出したその一歩目にこそ、意味があるのではないのですか!!!?と、道徳観念に訴えてみます!いやぁ、ほんとに貴族たちの遊びって感じで高すぎてビビりました。