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ダルエスサラーム路上ライブで、音楽とおれと少年の話

2019年8月1日

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ココビーチで半日間のバカンスをオヤジ達と楽しんだ後、おれは街に戻って路上に出た。

昨日は1・5ドルしか稼げなかったので今日は3ドルぐらいは稼いでビールでも久々にのみたいな、なんてフラフラ歩いた。

大通りぞいでインドスパイスを売るアラブの商人風のおっちゃんが、背中のギターを見て声をかけてきた。

「ヘイ!ギターひくのかい!?エブリスィンガナビーオーライってか、」

「そうなんだ!実は銀行のカードを取られちゃってね!小遣い稼ぎで歌ってるんだけど、良かったら隣で歌わせてくれよ!」

「おおいいぜやれやれ!!」

うん、なんか、やっとアフリカでも緊張せずにギターを取り出せるようになってきたぞ!

いつものようにギターケースを置いて、靴ひもにタンバリンをくくりつけていると、もうそれだけでゾクゾクと通りすがりのおっちゃんや子供やが集まってくる。

音楽を、ライブを生で見る、なんて娯楽は普通にこの街で生活する人たちにとっては馴染みのない事なんだろうか、ギターを構えて立っているだけで、みんな、不思議そうにおれの事を見てくる。

なんなんだ、このアジア人は?

どこの土地でも、初めてライブをする時はこの歌いだすまでの30秒間が何よりも重苦しくて、

やめろ!そんな目で見るなっ!!

と逃げ出したくなるのだけれど、そんな視線も、見向きもされないよりマシだ。

本当に、路上ミュージシャンに対する距離感は、日本と正反対だ。

みんなに、日本から来たこと、バンクカードを盗られてしまってこの旅を続けるためにこうやって歌っていること、なぜならアフリカを旅するのがおれの夢だったから、ということなんかを下手な英語で自己紹介して、歌いだす。

高らかに伸びる声とギターの音、笑顔の人、むすっとしたままの人、踊ってくれる人、邪魔そうに前を通り過ぎる人、写メを撮る人、ウインクをくれる人。

途中警察官が何の騒ぎだ?と覗きに来てドキッとしたけれど、おれのすがたと路上ボードを眺めて、何も言わずに去っていった。

よかった。

午後5時だというのに地面の熱が辺りを覆い尽くして、溶けて無くなりそうだ。

最近、歌う時にテンションが上がって、いつもリズムが走りがちだったので、そこだけ注意して、あとは気持ちの高ぶりのままに動き回って、跳ね回った。

あぁ、最高に楽しい。

生きてるって感じだ。

100シリングコイン(5円)がポロポロ飛んできて、なかには500や1000のお札を入れてくれる人もいる。

最終的には5200シリング、約250円。

オーストラリアとかでやってた頃に比べると、アホみたいに少ないけれど、アフリカじゃこれで晩飯に、ビール買ってもお釣りが来るわ!

やったぜー!!

汗だくになりながら、最後にstand by me をやって、終了!

パチパチぽちぽちと拍手をくれる人々。

スーパースターを見るようなキラキラした目でおれを見てくれる子供達。

写真一緒に撮ってくれよ!と興奮気味にやってくるおっちゃん。

カゴを抱えてタバコをバラ売りして歩く物売りの少年が、タバコを一本サービスしてくれた。


あぁ。嬉しいな。

好きな音楽をやって、みんながそれなりに楽しんでくれたり、興奮してくれたり、暇つぶしに使ってくれたりして、その対価として、お金をいただける。

ありがたい。

今日もいい日になったなぁと、満足してみんなに手を振ったんだけど。

でも。

その後、ホテルの前まで戻ってきて、商店の軒先でベンダーから買った5円のキリマンジャロコーヒーをおちょこでちびちびやっている時だった。

「へい!ギターマン!」

ケータイのシムカードを売り歩いている青年たちが笑顔で声をかけてきた。

中学生くらいの二人組。

この手の商売で毎日生計を立てている子供達がこの国には当たり前にいる。

彼らを見てると、おれ何してんやろなーなんで思わされちゃったりもする。

「ナイスミュージックだったぜ!おれ、ギターを弾いてみたいんだ!ちょっといいか?」

シムカードは外国人相手の商売のためか、二人は若いのに上手に英語を喋った。

もちろん!とギターを取り出して、

ここの指を、こうやって抑えるんだ!

とgコードを教えてやる。

やっぱり最初なので全然うまく抑えられずに、ブリンブリンッと重たいミュート音を響かせながら、それでもご機嫌でタンザニアの歌を歌ってた。

ひとしきりギターで楽しんだ後、

「バンクカードを取られたんだって?どうやって生活しているの?大丈夫かい?」

「まだ幾らかお金はあるからね。大丈夫だよ。」

「家族や、友達は助けてくれないのかい?」

「頼めば貸してくれるだろうけど、今は自分の力でアフリカを旅してみたいんだ」

「そうか、日本に帰るチケットは高いのかい?」

「んー、高いけど、なんとかなるよ!」

この時。
なんか知らんが、おれは彼らの質問を濁してしまったような気がするんだ。

正直、日本に帰れないほどおれはお金には困っていない。

カードを盗まれた際に、手持ちであった5万円と、親に借りて送金してもらった25万円。

これが、南アフリカからおれが使えるお金の全財産だ。

これでアフリカを縦断したいし、出来れば追加で送金なんてしてもらわずに、ヨーロッパまで行きたい。

そのためには、1ドル2ドルでも路上で稼いで足しにしたい。
というか、なにより路上で歌うことがすきだから、どうしても続けていたい。

でも、やろうと思えば銀行の口座にはお金はまだある。

帰ってから、そこから返すってことで親に追加で借りることだって出来るし、帰ろうと思えば今すぐに飛行機のチケットを買いに行くことだって出来る。

でも、彼らに、「そのチケットぐらいならすぐ買えるぐらいのお金は持ってるよ!」とは言えなかった。

なんだよ!それならこんなところでなんで歌うんだよ!

なんて言われるのが怖かったのかもしれない。

おれはただ、自分のやりたいことをやる上での、

「お金がない」

そう路上ボードを掲げ、おれの手持ちよりも少ない全財産で暮らしているかもしれない人たちから、お金をもらってる。

ただただ楽しんだ対価だよ、と言ってもらえれば心は楽なんだろうけれど、なかには、おれが本当に日本に帰れないほど困っているんじゃないか、と思って入れてくれている人もいるはずだ。

そんな事を考えると、急に気持ちが重くなった。

優しい思いでお金を入れてくれた人達を、あざむいているような気さえしてくる。

ネパールのために、ボランティアで歌ってた頃とはなんか、背負う物が違いすぎて戸惑う。

「おれの夢も、君みたいなシンガーになる事なんだ!だからギターを弾いてみたかったんだよ。」

奥に座ってた、一番熱心にギターを触ってた彼が言う。

「ラブリーソングを歌いたいのさ!アイラビューってね!ハハ!
…出来ればスタジオでCDを作って、デビューを目指したいんだ!だけど、ものすごく高いお金が必要なんだ。この仕事じゃなかなか難しい。」

ギターを買って、練習も兼ねて副業で歌いなよ!

もっといい仕事あるだろ?英語喋れるんだから、他の仕事探してみなよ!

もし相手が日本人で、同じような境遇で育ってきた人になら、好きなことアドバイスしてあげられるし相談にも乗れる。

でも。

距離も生活基準も育ってきたバックグラウンドも違いすぎるこのアフリカの地で、おれは彼になんて言ってあげたらいいのか分からなかった。

「よし、俺たちもう行かなきゃいけないから!はい!これ気持ちだ!応援してるよ!」

彼がズボンのポケットから500シリング札を取り出して、おれに差し出した。

いいよ!

おれたちは友達なんだから気にしなくて!

と言うんだが、成功を願いたいから!なんて言って差し出してくれる。

「ありがとう。」

と受け取るしかなかった。

日本だとたった25円の価値。
しかし彼らが日中汗を流して働いたなかの大切なお金。

すごくすごくありがたくて、すごくすごく胸が締め付けられるような、そんな気持ちだった。

お礼に、何も出来ないけどギターのなかに入っていた日本の5円と、グットラックマークのインドルピーをそれぞれ彼らに渡した。

「幸運の意味を持ってるんだぜ!」
なんて伝えると、目を輝かせて
「もらっていいのか!?」
なんて喜んでもらえた。

ほんと、これぐらいしかできねぇよ。

路上ライブで世界を周る。

この目標は絶対に曲げたくはないし、大好きな音楽で人々と触れ合っていたい、そのなかで、今日の彼のような、苦境のなかで音楽に希望を持って生きているような人と関わって、なにか一点の光を見せてあげたい。

そんなことを考える。

これは間違っていないって言える。

ただ、その中で自分に、そして自分の音楽に嘘をつかせたくない。ウソをついて歌を歌いたくない。

何不自由なく優等生で、クラスの人気者で暮らしてきた人が悲しい演技で歌うバラードなんて信じたくないって、ほざいていたのはあの日のおれだ。

飾らず気取らず、悲劇のヒーローを演ずるでもなく、等身大の自分を歌ってたいだけなんだ。

路上ライブは続ける。

カードを盗られたのは本当だ。

旅に必要なお金がないのも本当だ。

でも日本に帰れないほど、飯が食えないほど貧しい訳ではないのだ。

誤解されるような文章かもしれんから路上ボードは作り変えよう。

シンプルに、真摯に、音楽と向き合おう。

自分のことがわからなくなる夜。

こうやって文章にすると少しは絡まった思考が解けていく。

明日も歌ってたいって思う。

だから今日もこうして深く考えるんだ。

なんか、さっきまで浮かれていたビールなんて気分じゃなくなって、50円のいつもの芋粥を屋台で食べて、部屋に帰った。

そんなところです。

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