【アンジュナビーチ/ゴア/インド】ゴアのアンジュナビーチで路上ライブの話
ゴア二日目。
薬剤師(偽)のショウコさんに処方された薬ですっかり体調を取り戻したおれはこの日、アンジュナビーチといういかにもクラブピーポー向けな名前のビーチに意気揚々とギターを担いでやってきた。
ゴアというと、ガンガンクラブミュージックの流れるパーティ好きヨーロピアン達のメッカみたいなイメージがあったけれど、
他のインドと変わらず道には野良牛や野良ドッグたちが文字どうり牛歩したりドッグ歩したりしているし、バイクやバスのクラクションが至る所で騒がしい。
前どっかで話したなんかの欧米人の話によると、最近はパーティ好きの若者やバカンス目的の旅行客なんかはゴアに行くことはめっきり減って、一部の自然派のよくわからんヒッピーが住み着いているくらいだ、なんて話を聞いたことがある。
今の彼らの主な観光地の人気は、タイなどの東南アジアに移動したらしい。
時代はながれ、流行は常に動いて行くんだな。
きっと今は四国の片田舎で口を開けばうどんうどんとバカにされる地元の香川も、10年後には湘南みたいになっていることだろう。
金蔵寺の海岸で数人のイケイケの若者達がシェアルーム生活をする番組なんか始まって、名物かまどで午後のティータイムを過ごすことがOL達のステータスになるのだ。
ふふふ楽しみである。
そんことを考えて歩いたらビーチに到着!
海沿いの遊歩道の岩場で、地元のにいちゃんが腰かけて歌っていた。
おれがギターを持っているのを見つけて「こいよこいよ!」と呼んでくれる。
フレンドリーな彼はムンバイ出身で、
ヘイフレンドナイストゥミトゥ!
ヘイバディーハウズゴーイング!!と、会って一秒でなんで友達やバディになれるんだといういつもの疑問はそっとインド洋の波に流しつつ、一緒に弾かせてもらう。
うーん!気持ちいい!
モモさんが素敵な写真を撮ってくれました!
どこまでも広がるインド洋、インド洋!
西日に背中を照らされて汗だくになりながら、しばらく二人で歌う。
そのあと、ショウコさんとも合流して、ビーチをすこし歩いた。
太陽が海に沈むゴアの海岸線。
西日は遠く大海原の向こうに今にも吸い込まれそうで、波の音が優しい。
10歳にもならないかって小さな女の子が、ショウコさんの腕を掴んで「なんか買って!」とビーチ沿いのアクセサリー店の奥へ連れて行く。苦笑いで目配せをするショウコさんと、へらへらと面白がりながら子どもの写真を撮るモモさん。
こういうゆるい空気に包まれてる二人が好きだ。
海の向こうを見ると、ドロップキャンディのように甘そうなオレンジの太陽。
半分が水平線のラインにキレイに切り取られていて、残す半分もゆっくりと落ちていく。
なんか沈む前に歌いたくなって、店の前でギターを取り出して、歌った。
ゴアの海の呼吸と、おれにとっての、歌を歌う、という呼吸。
息継ぎのタイミングのその一秒がとても似ていて、歌ってて気持ちいい。
その空気になんかハマってしまって、次の日も同じビーチの、海の見えるバーの脇に座らせてもらって、歌った。
4時から日が沈むまで歌って、500ルピ、約1000円。
デリーから旅行で来ているという家族が体を揺らしながら聴いてくれた。
白人のにいちゃんはビールを片手に目を閉じて気持ち良さそうで、物売りの少女がやってきてはにかむ。
怖いくらいにただっぴろいインド洋からの波が、まるでオーケストラとのセッションのように、ギターの音に絡んでくる。
おれは歌を歌うだけ、好きなことを好きなようにやって好きに生きてる。そんなおれを囲んで、みんながなんか幸せそう。誰からも愛されるなんて無理だけれど、続けていけば、そんな人たちが少しずつ増えていく。
なんて素敵なんだ。思い上がりかもしれないけれど、これだから音楽はやめられない。
ショウコさんとモモさんが好きだと言ってくれた、アフリカに行きたい、というオリジナルの曲を歌った。
遠い遠い空の向こうの異国への憧れと、現実を見据えて揺れていたサラリーマン時代に作った曲。
現に今、行きたい方へ生きてる自分がいて、歌い返すと自分の歌ではあるけれど新しい見方ができておもしろい。
最後の曲を歌い終えた時には、海にフタをするように薄く広がった雲の奥に太陽はすでに沈んで、青と赤のトワイライトがきれい。
最後まで聴いてくれていた人たちがポチポチと優しい拍手をくれる。
向かいの浜辺のアクセサリー売りのおっちゃんが、ナイスだったよと首飾りをプレゼントしてくれた。
宿で出会った世界一周中の大学生シュウヘイ君も見にきてくれてて、拍手をくれる彼の膝元には丸く太った野良犬がゴロンと寝転がって、だるそうに頭を上げておれを見てた。
そうかここはお前の寝床だったのか。邪魔してごめんよ。
今日もゴアに夜がやってくる。
そんなところです!!!!!!
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