イランの抗議運動と政府の弾圧を見て、おれが今思っていることの話


ナマステ!ぼっちシンガーです。
路上ライブで世界一周や東京での音楽活動を終え、地元の香川にUターン移住。
旅や音楽、香港人妻氏との日常について語るブログだよ!
いま、イランで大規模な抗議運動が続いている。
最初は物価の高騰や経済苦境への不満がきっかけだったが、やがて現体制そのものへの批判に変わっているという報道。
2025〜26年にかけて各地で抗議が拡大し、治安部隊による大規模な弾圧、拘束・死傷者が出ているという報道もある。
こうした報道は、情報統制の厳しいイランの特性上数字の正確さは揺れている可能性もあるが、
「市民に対する暴力的な対応が起きている」という大枠の事実は複数の報道機関や人権団体で確認されている。
個人的には、このニュースに対してはこれまで”どちらかを明確に支持するような立場を取ること”を、意識的に避けてきた部分がある。
というのも、イランをめぐる情報は錯綜していて、アメリカの介入や利権をめぐる思惑によって事態が動かされているだけだ、という見方にも一定の説得力があるように思えたからだ。
一方で、イラン政府が厳格なイスラム体制のもと、人権を軽視した国家運営を続けてきたという指摘も以前からあり、それに対する国民の不満が本心からのものであれば、単純に外部勢力の工作だとも言い切れない。
国民が幸せになれる国家のかたちが一番あるべき姿だと思うんだけれど、それが現在の体制なのか、西洋寄りの自由な、過去の王政時代のような形なのかは、情報統制の厳しい現状からは見極めが難しく、判断を保留してきた。
ただ、今回の抗議運動とそれに対する殺戮を伴う弾圧を見て、目をつぶったままでいるのも、正直つらくなってきた。
ここで一度、イランで起きていることの現状を整理し、自分なりの考えをまとめる意味でも、今回このブログを書いてみようと思ったのである。
以下、まずは事実関係としてイランの民族・宗教的構成を整理しておきたい。
もくじ
今、イランで何が起きているのか(抗議・弾圧・社会構成)
抗議運動の始まりと拡大
2025年12月28日、イランの物価高騰・通貨危機・経済苦境への不満が一気に爆発し、首都テヘランのグランドバザール(商店街)を中心に抗議デモが始まった。
これは急激なインフレ(年率40%以上)やリヤルの暴落など、生活の困窮が背景にあるとされている。
初期の抗議は経済問題が主だったが、やがて雇用不安や政治不満が結びつき、「イスラム共和国打倒」「自由と変革」を掲げる政治的色彩が強まった。
学生や若者、商人の参加が拡大し、政府批判のスローガンが広く共有されるようになった。
2026年1月8日には、政府が国内のインターネットをほぼ完全に遮断する大規模な通信停止措置を敷いたことが確認され、抗議の動きを国内外の目から隠す動きになったと分析されている。
弾圧と死傷者数の実態
イラン政府による治安部隊の対応は極めて強硬であり、死傷者・逮捕者は数千規模に拡大している。
報告によって数字に幅があるが、複数の情報源を総合すると次のような状況になる。
- 抗議活動に伴う死者数
・人権団体 HRANA などのデータでは、約2,500〜3,400人以上が死亡との報告がある。(turn0search19)
・一部報道では、動員されている治安部隊撃破や情報遮断の影響で、10,000人超〜最大12,000人規模の死亡という推計も報じられており、正確な死者数は確認が難しいとされる。(turn0search43) - 逮捕者数
拘束者は**約1万8,000人以上(10,000〜22,000人超)**と推定され、治安当局は抗議参加者やその支援者を大量に拘束している。(turn0search12) - 死刑判決と政治犯化
実際に抗議活動に参加したという理由で再審なしに死刑判決を受けた若者も報道されている。26歳の若者・エルファン・ソルタニは、逮捕後間もなく「神に対する戦争」という重大罪で死刑判決を受け、執行寸前で情報が伝えられた事例が確認されている。弁護士なしでの判決とも報じられており、公正な法的手続きが守られているとは言い難い状況である。(turn0search44)
こうした数字は、政府側が公式な死傷者数を発表しないことやインターネット遮断による情報制限のため、大きな幅を持って伝えられている。
だが複数の信頼性のある人権団体・報道機関でも「これまで数千〜数万人規模の犠牲が出ている可能性」を指摘しており、人道に反する深刻な人権弾圧が横行していることは明らかのようだ。

イラン政府の支持率と支持層の傾向
イラン政府を支持している人々がどれほどいるか、という量的なデータは自由な世論調査が困難なため公式には存在しない。
しかし、独立した調査機関GAMAANの世論分析では以下のような傾向が示されている。
- イスラム共和制の継続に反対する割合:約70%
- 政府の変革を望む割合:約40%
- 政府支持とみられる割合:約20%程度(推定)
- 民主主義支持:約89%(制度として)
- 宗教法中心の政治支持は低い傾向(gamaan.org)
また、都市部の若年層では現体制への不満が強く、保守的・宗教的価値観を重んじる地方の層では政府支持の割合が比較的高いという分析もある。
この違いは、人種・宗教・情報アクセスの差などが背景にあるとも言われている。
なぜなら、イランは単一の民族国家ではなく、多様な民族・宗教から構成されている国であるからだ。
以下は広く引用される人口構成の目安。
- ペルシア人(Persians):約60〜61%
- アゼリ人(Azeris):約16%
- クルド人(Kurds):約10%
- ルール人(Lurs):約6%
- バローチ人(Baloch):約2%
- アラブ人(Arabs):約2%
- その他(Turkic tribes等):約3%(推定値)(worldpopulationreview.com)
宗教では、イスラム教徒が圧倒的多数で、シーア派が約90〜95%、スンニ派が約5〜10%とされる構成になっている。
この多様性ゆえに、「イスラム原理主義を基盤とする支配体制」がすべての民族・宗教グループの支持を得ているわけではない。
例えば、クルド人やバルーチ人などの少数民族は、地域的な文化や言語を守る立場から、強権的な中央集権体制に不満を持つケースが長年指摘されている。
イラン抗議デモに対する個人的な意見

先にも書いたが、イランの政治体制についての個人的意見には、ある程度距離を取って見てきた部分があった。
特に、昨年アメリカがイランの核施設を攻撃した件については、「強国が気に食わない国を一方的に叩く構図」に強い違和感を感じたのを覚えている。
イランは「悪」と単純化してつるし上げ、中東での利権や影響力をめぐる大国同士に利用されているだけなのではないか。
そんなふうに感じて、どちらかと言えば、イラン政府に対して同情的に見ていた部分もあったのだと思う。
ただ、今回の抗議運動の映像や、市民の声を見ていると、そんな上辺だけの見方だけでは足りないと感じるようになった。
「1970年代の王政時代のイランは、いまより自由で開かれていた。男女平等で宗教も自由で、女性もヒジャブなんかつけずに自由に外出できたんだ。」
昔イスラム教の国を旅をしていた時に、欧米人にそんな話を聞いたことがある。
欧米ナイズドされた自由で開かれた社会が素晴らしい、と他方の価値観を認めずに、欧米人が一方的にもてはやしている時点で浅はかだな~なんてその時は思ってた。
実際そんなイラン王朝時代はアメリカの傀儡国家化で国民の信頼を失って転覆したし。
しかし、少なくとも現代の都市部の若者たちや女性にとっては、厳格なイスラム社会よりもそっちの方がよかったのだろうか。
「外出したら死刑」の厳戒態勢の中で命がけで街頭に立ち、抗議する人たちの姿から伝わってくるのは、「西欧文化のような開かれた社会を手に入れたい」などという浅はかな願望ではなく、
「自分たちが、自分たちの生き方を選びたい」という、ごく当たり前の欲求なのだと思う。
この問題を考えるとき、どうしても頭に浮かぶのが香港の状況である。
妻が香港出身なので、2020年以降、急速に自由を失っていく香港をかなり近い距離で見てきた。
巨大な中国共産党という存在を前に、抗議することすら許されなくなっていった社会。
発言や思想が抑え込まれ、「反抗したくても反抗できない」状態に追い込まれていく人たち。
彼らは常に言っていた。「イギリス統治下のままの方が何倍もよかった」と。
結局ほかの国や異なる価値観の人々に主権をコントロールされた先には、みんなが満足する社会はないのかな。
同じ民族、同じ価値観で生きられる、多様性やグローバリゼーションと逆行した社会のほうが、
案外この先の世界では求められるようになってきたりするのだろうか…
などと、そんなことを考えたりする。
混沌の時代の中で思うこと

いまの世界は、明らかに混沌の時代に入ってしまったように感じている。
どの国が正しくて、どの国が間違っているのか、簡単に線を引ける状況ではない。
ただ、それでも、国家が国民の思想や自由を力で押さえつけ、命を奪うことが許されていいとは思えない。
これは西洋的な価値観なのかもしれないし、文化の違いと言われれば、それまでなのかもしれない。
それでもおれ個人としては、すべての人が、民族や思想によって弾圧をうけることなく、少なくとも命と尊厳を守られる社会であってほしいと考えている。
それが正しいかどうかは、正直わからない。
ただ、何も考えずに「仕方がない」と受け流してしまうには、いま目にしている現実は、あまりにも重たい。
そんなふうに思いながら、イランの情勢を見ているのであった。
そんなところです。
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