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伊坂幸太郎『砂漠』読んで学んだ文章テクニックについての話。

2021年5月10日

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写真はスーダンで見たほんとの砂漠。小説内容とは全く関係がない。

伊坂幸太郎の『砂漠』という小説を読んだ。

大学生活を思い出させるような話だった。

ヌルっとしていて、特別な事は何もなくて、それでもそれが心地よくて、

いつまでもまどろんでいたいような、あの時間を思い出させる。

ストーリーに関してはネタバレになってしまってもいけないので書かないが、

文章の書き方で、『読み手を引き込ませる書き方だなぁ』と思ったパートがいくつかあって、

とても興味深かった。

僕もブログという、一応書くことを趣味にしている身として、これらテクニックはとても勉強になったので、

メモ代わりに、記事に書き残しておこうと思う。

セリフから始める書き出し

『災難だったなぁ、北村』
『災難と言うほどでもないよ』

伊坂幸太郎 「砂漠」P1038より引用。


と会話から始まり、そのあとに

ボールの転がる静けさの後、ピンの弾ける音がした。

という状況説明がなされ、そこで初めて、主人公たちがボーリングに来ているのだ、ということが分かるシーンがある。

断片的な会話の一部のみを最初に提示することで、読み手に『災難?なにが?』と興味を抱かせる効果がある。

また、ボーリングの事が、登場人物たちの会話のあとでおまけ程度に描かれていることで、

現在登場人物たちの関心の種はその会話の中にあり、スコアの事なんて対して気にせずとりあえずボーリングをやっているような、うわの空な状態がイメージされる。

ブログでも、一言で興味を引きたいときなんかに、コメントからの書き出しは有効かもしれないな。

突拍子もない書き出し

襲われたのは、ブランドショップを何件か訪れ(中略)西島と別れた後だった。

伊坂幸太郎 「砂漠」P1026より引用。

こちらも書き出しのテクニック。

章のはじめ、何の説明も無しに、いきなり『襲われたのは…』と書かれている。

誰に、誰が、襲われたのか。全く説明されないままに、主人公の説明が続く。

まるで語り手の話を部分的にブツ切りに切り抜いたような書き方に、読者は若干取り残されたような気持になる。

その分、読み進めていくうちに徐々に状況が把握できてくると、伏線が回収された時のような気持ちよさがある。

一般的にまじめで綺麗な文章は、『誰が』『何を』『どうした』で書き記す事が良しとされるが、

その『どうした』『どうなった』の部分から先に書き出す事で、意外性があって面白い文章が書けるかもしれない。

YesかNoで答えない。

「知らない男だったんだよね?」(中略)

「知人に今さら、大統領ですか、って尋ねられたらさすがに落ち込むよ」

伊坂幸太郎 「砂漠」P1041より引用。

知らない男かどうか、という質問に対して、『知人だったら自分を大統領とは間違えない=知らない男だった。』という表現で返答する主人公。

この主人公は、こういう、YESかNOかで答えるべき質問に、ちょっとひねった回答で答える事が多い。

回りくどく答えずに、YESかNOで返事しろよ!と言いたくなる。

しかし、そのひねくれた会話の中から、主人公の皮肉じみていて物事を俯瞰してみている性格が感じられてくる。

まぁよく考えてみれば、答えが明白な質問にYes、Noで答えるだけのシーンなら作品に要らないわけで。

このシーンを描く真意は、回答を聞き出す事ではなく、その受け答えの様からキャラクターを表現する事にあったのかな。

以上。

メモ代わりに、書き方が面白いなーってところを分析してみた。

内容も面白い小説だったので、ぜひ。

砂漠 (実業之日本社文庫)



そんなところです。

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