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【エイラット/イスラエル】路上のシンガーとホームレスと電力会社のおっちゃんの話

2020年2月21日

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今日の旅の一曲!町田直隆の “ずっと16″!
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終了

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………………..

深夜3時。

ジョボボ・・!!

へ?

ジョボボボボ・・!!

ん??

(ぴちょり・・)

濡れてる?

いやぁぁぁぁか!!!!!!

深夜3時!なんか知らんけど突然水をかけられた!

慌てて寝ぼけながら寝袋から出るおれ!

このやろぉぉぉ!!!!芝生のスプリンクラーだ!!

二日連続で芝生公園で野宿をしていたおれ。

午前3時。最悪の目覚めである!

慌てて荷物をまとめて、逃げ出す!

ちくしょう・・許さん・・許さんぞ・・

スプリンクラーの非情なまでの攻撃に、怒りを抑えられないおれは、その水を利用して足を洗い、手を洗い、逆にこの水を利用して生き延びてやる!と果敢にチャレンジするのだけれど、水はくるくると回りながら噴水されているため、片足を上げて洗いながら、支えているもう一方の足でちょんちょん飛びながら芝の上を回るおれ。

この!このやろ!難しいな!それっ!

そして、静まり返る夜の風に吹かれ、気づく。

なにやってんだおれは・・

おとなしくベンチに移動して、寝た…

エイラット三日目!

スプリンクラーとの激しい戦いの夜が明け、おれは清々しい気持ちで朝を迎えた!

過酷な野宿生活を二日続け、お金も大分溜まった!

今日は!今日こそは宿に泊まってやるぞぉおおお!!!!!!

そう、路上ライブで1万円円ほど貯金が出来たおれ。

今日こそは宿に泊まってゆっくり休むのだ!そしてドミの女の子とピザをシェアして食べたりして、二人で割ったピザのチーズがピロンと伸びて、

「わ!すごーい、チーズが伸びて、ちぎれないよっ!」

「うん、君と離れたくない!って言ってるよ!」

とか言って、ふふふ!と笑うのだ!笑ってやる!!!!

そう意気込んだおれ。

早速アゴダで安宿をチェック!!

アフリカでは、行き当たりばったりでそれっぽい場所を探しては突撃し、宿を探していた紀元前バックパッカーのおれ。

しかし、ここはイスラエル。

このような先進国では、安宿はすぐに満室になるため、ネットで予約したほうが確実であるし、かつ割引がかかっていて安い場合もあるのだ!

む!いつもの30%オフで、76シュケル、約2300円の部屋があるではないか。

この値段、エジプトのダハブの宿のじつに10倍の値段であるが、ここイスラエルではかなり安いほう。

今日の空き情報ではここが最安ということで、早速ブックすることにした!

ふふふ。実にスマート。情報通だ。

事前にネットで予約をし、好きな時間にホテルに向かえば、お待ちしておりました!と膝をつくスタッフ達に出迎えられ、用意されたレッドカーペットを歩いて部屋に向かうというわけだ。

いやぁ、やはり斜め上行く情報パッカーは、違うわ。旅の仕方が違よね。

と、イマドキパッカーは誰でも知っている事を偉そうに書く系ブロガーのおれは、

(ふはは、この自然なながれでアゴダを宣伝してからの、下にリンク貼っとくからね!とか言ってアフィリエイトで大儲けだ!!がはは!)

という、ブログには決して書く事はできないような魂胆ものぞかせながら、興奮気味で更新の確定を押そうとした。

が!

え!

なにこれ!?

予約にはクレジットカードが必要なの!!??

現地払いできないの!!??

持っているクレジットカードは三日前に期限が切れている!!!

まじかよ!!

え!残り一室のみ!!??

やばいいそげ!!!

そしておれはいつものように部屋を確保のために、慌てふためきながら宿へ直接向かうのであった。

ネットに出ていたホテルは、観光地のビーチ沿いから少し市の中心へ丘を登った、静かな住宅街にあった。

幸運にもまだ一室のこっているようで、ネット価格を現地払いでもオッケーとの事だったので、泊まる事にした。

スタッフに部屋まで案内される。

うわぁぁイスラエルで初めて宿とまるー!!うひょー!!

まぁ、最安やからな~、期待はできん!水が出ないとか、コンセントないとか、部屋が血塗られているとか、それくらいのことは十分起こりうるやろなぁ・・

とか、全部エチオピアの実例をもとに考えながら、ドアを開いた。すると!!!

驚愕した!

え!!??

なにこれ!!!

こ、こぇぇぇぇ!!!!!

扉を開くとそこはまさに別世界!

ソファ、テレビ付きのリビング、そして別室にミルフィーユのごとくマットが敷き詰められた豪華なベッド、なんとプライベートトイレにシャワーまで!!!

え!?これで最安!??てっきりドミやと思っていたが、まさかのシングルルーム、しかも超高級ホテル並みやん!!!!!

エジプトぶりに、たぶん5日ぶりぐらいにシャワーを浴びる!!

うわっ!!!あったかい!!あったかいよ!!ヒャァ水圧が強くて腕が!腕がもげちゃうううう!!!!!

やばい!

き、昨日までの野宿はなんだったんだという豪遊ぶりである。

洗面所で、ドブ川のアオミドロ拾ってきたみたいな臭いがしていた服を洗濯し、ケトルでお湯を沸かしてコーヒーを入れる。

無駄にテレビでビジネスチャンネルなんてかけて、もう気分は敏腕プロデューサーである!

まいちゃうぜ!!シャツの裾を胸元でくくって、まいちゃうぜぇぇぇ!!???

そして、長袖のポロシャツなどというオシャレブティックは持っていないおれは、代わりにユニクロのステテコパンツをまいたおれは、

死んでいたケータイも、充電できたゼェェ!!!

へ、部屋までWi-Fiが届く!!

とテンションだだ上がりで、誰かと話でもしたくなってきた。

日本は今は夜の9時くらいか!

地元の友達、そうりょと久々に電話した!

働いていた会社との契約が最近切れ、彼はまた新しい目標を見つけて歩き出していた。

そうりょと話をしていると、思いがどんどん前のめりになって行くから好きだ。

時に、壮大な夢の話に、身丈の歩幅が間に合わなくて転んでしまいそうになるけれど、なにもできずに立ち止まってるよりマシなんだ。

たくさん不安要素はあるけれど、今を必死に生きてれば、なにも問題はないぜ!なんて、むさ苦しく語って、胸が熱くなってきた!

時刻は午後5時!

おれにやれることはこれしかない!今日も歌うぞ!!!!!!

いつものように橋の上で、声を上げて歌った!

この日は日曜日の夕方。

金、土曜の昨日までと比べると少し人通りは少ない。

でも、ひとつ嬉しいことがあった。

いつも橋の向かい側で、ホームレスのおっちゃんが物乞いをやっている。

おれが路上を始める前からいるもんで、場所をありがとう!と、昨日少しのチップを置いていったんだけれど、今日、逆におっちゃんがやってきては笑顔で「ナイスソングだ!」と言って、硬貨数枚と珍しい古いコインを入れてくれた。

お返しのつもりだろうか?

うーん、それもあるかもしれんけど、ただ単純に、物乞い中に歌を聴いて、いいなと思ったから入れてくれたのだったら嬉しい。

突然やってきたわけのわからん旅行者が、自分のテリトリーである橋の上で歌い出して、もしおれがおっちゃんならどうだ?

いい思いはしないだろう。

なんだお前は!出て行け!

なんて思うことはあっても、ナイスだよ!と笑顔を見せる事なんてないだろう。

おっちゃんの器の大きさと、同じ路上に立つ者としてこの街になんだか受け入れられた気がして嬉しかった。

暗くなって、いつものサックス吹きがやって来たので、片付けて場所を譲った。

ホームレスのおっちゃんは、知らない若者にビールをおごってもらって、楽しそうに飲んでいた。

街に日曜日の夜が訪れる。

今日のチップは134シュケル、約3900円!

ありがとう!!

帰りに、初日の路上で出会ったモウが歌っているところに出くわした!

彼の白いわんこ、ペキニーズのベニちゃんを台に乗せて、

「みんな見てって!!スィンギングドッグだよー!!」

と観客を煽り、歌い出す。

ベニちゃんの座る台には、マイクがくっつけられていて、犬が歌ってるように見せてるんだけれど、興味ねぇよ、みたいにそっぽを向いたり、眠りだしたりする姿がかわいい。

「おれのベストフレンド、ユーキーとともに歌うぜ!!」と突然紹介されて、慌ててギターを取り出して、一緒に歌った!

跳ねたリズムで、ノーウーマンノークライを歌うモウ!

リズムが違うと、雰囲気も変わる。彼の性格にそっくりの、最高に陽気で、でもどっか優しさのある、いい歌だった!

「よっしゃ!ビールの分だけチップが貯まったから、ちょっと買ってくる!よかったら荷物見ててくれる!?おれのギターで歌っててもいいぜ!もし入ったら、チップは君の分だ!」

と自転車でハイテンションでかけていく彼!

彼はバスキングの収入だけでこの街で暮らしている。

決して裕福な暮らしでは無いだろうが、毎日の暮らしに、一本のビールをつけるくらいの生活はできるみたいだ。

また歌おう!

彼と別れて、宿に帰ると、まさかの!部屋に知らないおっちゃんがいた!

扉を開けたら、

「ハロー」

とベッドの方から声が聞こえて、ビビって漏らすかと思った・・

どうやら、格安で泊まることができたこの部屋、ベッドの部屋と、ソファで寝るのとの、ドミトリーらしかった!!どうりで・・豪華すぎると思ったんだよな!!

もちろんリビングに設置されたソファが、格安の値段で泊まるおれの寝床だ!

くそう!!騙された!!あのスタッフ、鍵渡す時はそんな事なんにも言ってなかったのに!!!!

とかいう思いは全くなく、久々のしつないで、しかもふかふかソファで寝られて、もうなにも不自由はなかった。

ベッドのおっちゃんは、電力会社で働くビジネスマンで、日曜日だというのに仕事が遅くまであったらしく、かなり疲れた顔をしていた。

それでも、日本人に弁護士の友達がいる事や、奥さんの事など、いろいろ話をしてくれた。

ハードワークをこなす忙しいサラリーマンと、陽気なその日凌ぎのバスカー。

イスラエルの、両極端な世界を見た気がした。

どっちが人の生き方として正しいのだろう、なんて考えた時に、大学時代頃までは、辛い思いをしてまでお金に執着して働く必要は無い、なんて心地いい事を言いたがっていた。

でも自分もサラリーマンを経験して、旅人という生き方も知った上で、今はそんなサラリーマン達の努力があっての日本という国があり、こうやって旅が続けられるという事をひしひしと感じる。

仕事を一心に背負って、結婚して責任もできて、這いつくばって生きる人。

それほどかっこいいものって無い。

おれにはおれの、生き方があった。

だれかには、まただれかの生き方がある。

これが正しいなんてもんは無い。

それを決めるのはたったひとつ、自分のこころの奥だけだ。

できればそんな、一生懸命な人たちのそれぞれの人生、その一切を没愛したいなぁ、なんて思う。

それを覗きに行く旅なのかもなぁ。

なんか、久々に日本語で語れたし、出会いもあった、素敵な日になった。

そんなところです。

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