風俗街で路上ライブの話
二日前、下町のカオサンから、都市部の方へ引っ越してきた!
このオンヌッという駅、出てすぐにセブンのソーセージの大きな広告がある。
突然家に現れたヒゲの男。お母さんに「この人が新しいパパよ」と紹介されたけれど、新しいパパはろくに働きもしないただのソーセージ中毒者だった。一家の未来を憂う少女、しかし大好きな母が愛した人を認められない、そんな自分にも嫌気がさす。少女の思いをよそに、今日も狂ったようにソーセージを頬張るパパ。ソーセージを取り巻く愛と憎しみのストーリーを、少女の表情がよく表しているように見える。
カオサンは観光地として昔ながらの古くさい東南アジアが残っているけれど、一歩センター街に出てみると、もうそこは東京や大阪と何にも変わらない。
東南アジアが汚くて貧しい国、なんてイメージはもう完全になくなったな。
先進的で巨大なビル群。
おしゃれな高級ショッピングモール。
犬もええもんばっか食べさせてもらっとるんやろな、日本では見たこともない大きさだ。
二日間、いろんなところでバスキングにチャレンジした。
モノレール駅の歩道橋下、マーケットの隅、夜の歓楽街。
昼間から夜まで、ほんとに路上ライブしかしていない。
唯一、昨日の夜、久しぶりの友達とご飯に行った。フィリピン留学の時に一緒だった、韓国人のミウン。8月からバンコクで働いているというので、連絡して美味しいローカルのご飯屋に連れて行ってもらった。
英語もタイ語も話せて、日本語も日本人同然に話せる語学の才能が半端ない彼女だけれど、それでも会社ではまだまだ思うような仕事が出来ずに大変なんだという。
そうやって世界をまたにかけて働いているという事だけで僕からすればものすごくキラキラ映るけど、そのステージが普通の光景になった時、やっぱり人はずっと悩み続けるんだろうな。
でもやっぱりすごいわ。頑張ってほしいな!
なんで旅するの?とか、やりたい事をやり残して妥協で人生を生きちゃいけない、とか、久々に暑苦しい事あれこれ話せて、楽しかった!
また会おう!!!!
そして、路上の方は、まずは結果、二日間で1010バーツ、約3400円。
1日300円とかしか稼げなかったクラビの頃に比べると、ちょっとは上がってきて嬉しい。
地味に、一番儲かったのは大きな幹線道路沿いのモノレールの乗客が降りてくる、歩道橋下。
大量の車、バイクの音と排気ガスで、クソうるさくてクサくて長時間はできないけれど、人通りは多い。
面白かったのは、バンコク一の夜の歓楽街、ハッポン通りとタニヤ通りのあたりでの路上!
吉野家、、、ん??
ネオンきらめく街の看板は、ここは日本か!?というほどに日本語で溢れていて、一歩街を歩けば、水着姿の若い女の子たちが10人以上も店の前で客を誘ってる。
いらっしゃいませ、可愛い女の子いますよ?
僕の前を歩くサラリーマン達が銀座のママさながらの立ち振る舞いのタイ人のおばちゃんに誘われて、にやついてる。
太ったアロハシャツの日本人のおやじ達は、女の子達を品定めするかのように手でアゴをクッとあげて店先の女の子の顔を確認している。見ていてものすごく下品だ
。金があるからと、本当に女の子を"買う"感覚なんだろう。彼女達がいつまでも日本人にすがってお金を媚びるしかないとでも思っているんだろうか。女性軽視もいいとこだ。周りの女の子達のおやじ達を見る冷めた目線を横目に、路上できそうな場所を探す。
通りを抜けたところに、山頭火ラーメンという店があって、その前にも屋台街が並んでいるんだけれど、そこにちょうどギターケースを置けるくらいのスペースが空いていた。
隣の焼き鳥屋さんに弾いていい?とジェスチャーすると、珍しく快諾してくれた。(タイでは基本3回聞いたら2回は断られる)
歌いだすんだけれど、なかなかお金は入らない。というか全然入らない。
理由は明白だった、僕が歌い出してすぐに、目の前にかなり貧しそうな身なりの母親と子供がやって来た。
母親はタトゥみたいな模様の入ったハンドバンドを手売りしていて、僕の前で止まってくれた人たちに容赦なくそれを売りつけようと声をかけるもんで、みんなめんどくさがって避けていく。
いつもならすぐ場所を変える所だけれど、その彼女も子供も、僕の歌う姿に興味津々で見てくれていて、隣の焼き鳥屋のおばちゃんも水を差し入れしてくれたりとすごくあったかく受け入れてくれているのが嬉しくて、結局10時まで2時間ほど歌った。
途中、小太りのスーツ姿にポマードガチガチの、日本で言ったらヤクザ風の男がやって来た。なんか歌ってよと言うのでカントリーロードや、子供達が知ってるというのでドラえもんの歌を適当な歌詞で歌った。
ガッハッハと豪快に笑った男は、20バーツ札をギターケースに入れると、それからしばらくハンドバンドの母親と同じように僕の前で座っていた。
目の前を旅行者の団体が通る。男は顔色を変えて、「へいへい!いい女の子いるよ!見るだけでいいから来なよ!」と強引に一人の欧米人の腕を掴んでいる。
「ノー!」と一蹴されて、やれやれ釣れねぇな、という表情で戻ってくる。
彼の子供だろうか、寄ってきた足元の子供の頭を撫でてやっている。
さっきまでの強引な客引きの顔から、次はお父さんの顔になって、また僕のギターを聞きながら変なリズムで体を揺らしている。
子供達は元気だ、さっきの母親のボロボロのTシャツの子供も、客引きの子供も、ちょっと大きな体の屋台の子供も、横の広場でみんな一緒になってサッカーを始めている。
新聞紙をガムテープでぐるぐるに巻いたお手製のサッカーボール。
タバコをふかしながら優しい目でそれを見守る客引き。
しかし遠くから次は日本人の団体が歩いてくるのを見つけると、すぐさまお次は流暢な日本語で食らいつきにいく。
今度は上手く成功したのか、それから彼は僕がそこを離れるまで帰ってこなかった。
おばちゃんや子供達にバイバイまたねと手を振って、通りを後にする。
帰り道、バーのサッカー中継に群がるガキんちょたち。
アジア有数の歓楽街の片隅で、そこで生きる人たちの普通の日常を感じられた気がして、すごくおもしろい時間だった。
てか、どいつもこいつも道行く日本人みんなに手当たり次第声かけるくせに、小汚い服装にギター担いだ風貌のせいか?おれには誰一人声かけてこねぇ!それどころかタイ語でなんやかんや話しかけてくるけど!
ローカルに馴染めているという事で、嬉しいような、悲しいような、そんな複雑な夜!!!
そんなところです!!
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