浅野いにお『デデデデ』完結!最終話を考察する話。【門出たちは生きている?凛や亜衣がいない?ひろしが痩せている?】
ナマステ!ぼっちシンガーです。
路上ライブで世界一周の旅を終え、現在は東京で音楽活動中。
好きな事を鼻息荒く語るだけのブログだよ!
大好きな漫画、浅野いにおの「デッドデッドデーモンズ・デデデデデストラクション」、
通称「デデデデ」がこのたび、8年間の連載を終えてついに完結した!!
昔からずっと浅野いにお作品が大好きで、ビレバンで本やグッズを買いあさっていたサブカルクソ野郎なおれにとって、これは一つの歴史の終焉である。
そう、おんたんと、門出の、愛おしくもふざけた日常と、彼女たちを取り巻くディストピアの終焉。
それを見守り続けてきたおれたちの、8年間の終焉。
おれは熱くなった目頭を花粉のせいにしては春晴れの街を歩く。
神妙な面持ちで本屋に立ち寄っては、満を持して発売されたばかりの最終巻を手に取る。
さぁ…どんなバッドエンドでも、ハッピーエンドでも、いい。
たとえ行きつく先が世界の果てだったとしても、おんたんは、門出は、絶対なのだからっ!!
うぉぉぉぉぉぉん!!さみしぃぃぃ!!!!終わらないでぇええっぇえ!!!
ネタバレ注意!!
以下、作品のネタバレをこれでもかと含んでいます。これから読む予定の人は注意してね!
もくじ
「デデデデ」最終巻を読んだ感想
率直に言うと、
「これは賛否両論生みそうだな~」
と思った最終巻だった(笑)
でも、おれはたまらなく感動しました。まじでよかった。
本当に、なんか心にじんわりと残り続ける、心震わせる、最終話だったと思う。
この、善と悪、明暗もはっきりしないけれど、なんかやさしい、36.5分の生身の体温で生きる世界観。
これこそ、おれ達が愛している浅野いにおの世界なのだと。
そんなことを考えたのであります。
以下、内容を追いつつ感想。
11巻でダイナミックな地球崩壊のカタストロフィが描かれた後、門出のパパさん目線で、文明崩壊後の世界が描かれる。
母艦爆発後の世界の日本は無政府状態、日本でアメリカと中国がドンパチやってるわ、小比類巻は武装組織のリーダーになってるわでめちゃくちゃ急展開。
そして、読者の誰もが疑問に思ったと思う。
「あの大爆発の後で、おんたんや門出はどうなったんや?」
と。
普通の感動ポルノなSF大作なら、大人になった門出とパパが再開できて親子の絆泣ける~!とか描かれそうだし、
亡くなってしまったというなら、悲しみに打ちひしがれた門出パパが過去に戻ろうとするその後の展開にも納得がいく。
しかし、この謎は最後まではっきり明かされないのである。
8年間追って来た主人公二人の生存が不明て!そんなのありか!?(笑)って感じだが、
結局二人の安否は分からないまま、門出パパは大葉のタイムマシン(時間軸書き換え装置)で、また別の第三の時間軸へいっちゃう。
侵略者もいなければ、誰も死んでいないいないその世界では、門出はスピリッツの編集者になっていて、花沢先生の愚痴を言ってるし、おんたんはロボット会社に就職してFUJINの新商品スピーチを任されている。
お互いに「門出ちゃん」「凰蘭」と呼びあう、ちょっと違った関係性の二人の元に、二人そっくりの声が聞こえてきて、ベンチの上には「いそべやん」という見慣れない漫画が…
お話はここで終了。
一読しただけでは理解が追い付かん。
でも、どんな世界線でも二人は一緒で、二人が一緒にいてくれるならなんか大丈夫、そんな無敵感が愛しい。
そう思える優しい最終話だった。
しかし、胸の奥に残る疑問。なにかぽっかりと空いた穴。
そう、作品の大半を占める「侵略者がやってきた世界」で生きていた門出達はどうなったの?って事である。
それを考察してみて、やっぱりこの最終話は最高のハッピーエンドだな。
と確信したおれであった。
母艦爆発後、門出達はどうなった?
合宿先から車で東京へ帰る途中、海老名サービスエリアに立ち寄った門出・おんたん一行は、そこで東京方面から立ち上がる巨大な光の塔を目にする。
そのシーンを最後に、この世界軸の門出達の登場は無くなってしまう。
彼女たちは一体どうなってしまったのか?
母艦が爆発したことで発生した衝撃と地鳴りは、石川県に帰っていたふたば達をも強烈に襲うほどであったので、より東京に近かった門出達は無事ではなかったかもしれない。
無事生き延びられてみんなで再会、みたいなシーンもなかったのでバッドエンド的な見方も出来てしまうが、おれはこう思う。
門出達は生きている。
そして、母艦爆発後の世界軸でも、未来では幸せに暮らせている。
なぜなら、最終巻で描かれているストーリーで間接的に、そんな未来をほのめかす演出がいくつかされているからだ。
まず一つ目。
母艦爆発後の世界で目を覚ました門出パパ。
門出達を探して東京を目指す途中、熱海で外国の軍隊同士による戦闘に巻き込まれる。
その戦闘の最中、機体に「D(デーモンズ)」と書かれたロボットが登場し、乗っているのが二人かもしれないなんて話を、まことから聞かされる。
たしかに二人は大の戦争ゲームマニアであったので、凄腕パイロットになって生き延びていたとしても不思議ではない。
そして二つ目。
一番印象的なのが、門出パパがついに過去へ転送される時にふたばが語った言葉である。
「向こうの門出と凰蘭によろしくお伝えください。いつか私たちも会いに行くって。」
そしてこのシーンの直前では、侵入者のこの精神シフト技術の応用で、より実用的なタイムマシンの研究が始まっている、と話している。
つまりこのシーンが意味するのは、
ふたば達がいつかこの世界軸で門出や凰蘭を見つける事が出来たなら、未来で開発されるはずのタイムマシンに乗って、そっちの門出達に会いに行くよ!
と誓っているわけである。
そして最終話、別の時間軸で平和で平凡な社会人生活をおくる門出と凰蘭が聞いた、自分たちにとてもよく似た声。
そう、門出パパがシフトされたこの世界を、別時間軸の門出達が覗きに来れたという事は、
この時間軸にパパがシフトしていることを知る人(ふたばやまこと)に、門出達が出会っているということ。
つまりは、母艦爆発後の世界でも門出やおんたんは生きていて、無事ふたば達と再会できたという事を示している。
しかも、壊滅的被害を出して再起不能とみられていた人類ではあったが、
侵略者の技術を応用して、実用的タイムマシンを開発できてしまうほどの復興を果たせた
=平和で豊かな未来が訪れているのではないか?という事が推測できる。
きっと、ふたばや大葉、まことも一緒に、このくそみたいに平凡で幸せな時間軸を、覗きに来ていたんだろう。
そして最後に添えられるメッセージ。
「私たちは、生きていく。」
くっ…泣かせるぜ…どんな苦境に直面しても、地球がクソヤバくても、
「君は絶対だから」って何の根拠もなく肯定してくれる存在が一人いるだけで、きっと人生は何とかなる。
最高に回りくどくて、最高に優しい、そんな最終話だったと思う。
最終話に凛や亜衣がいないのはなんで?
さて、おおまかなストーリーの考察はこんなところなんだけれど、このほかにも気になったシーンについて書き残しておこう。
それがこのシーン。
最終話、侵略者が来ずに平凡な社会人編を迎える世界で、門出、凰蘭、この世界では生きているキホちゃん達がレストランに集まる。
そう、高校時代の仲良し5人組である…
…って、あれ!??
BL好き腐女子の凛がおらんやんけっ!!!
そして、亜衣ちゃんもなんか違…え?別人かこれ!??
そう、あんなに仲の良かったはずの凛ちゃんと亜衣ちゃんが、なぜかこの世界軸ではいなくて、
全く知らない子が友達として描かれているのだ!!
なんでや…一緒にツチノコ獲りに行ったりしたのに…クリスマスパーティもしたのに…
所詮時間軸が違えば、友達になれないような薄い関係やったのか…!!
と悲しみに打ち震えたおれであったが、理由が判明した。
そもそも、侵略者が来なければ凛も亜衣も、門出達の学校に来ていなかったのだ。
その真相が語られているのは3巻。
クラスの男の子に誘われた東京観光デートで、亜衣は「8.31までは大田区に住んでいたが、A線被害を免れるために親戚の家に引っ越してきた」と語っている。
そして、「幼馴染である凛が家が遠いのに同じ高校に進学してくれた」、と。
つまり、侵略者が来なかったこの世界では亜衣が大田区から世田谷区へ引っ越すことも無かったので、
門出達の学校へ行くことも無かったわけである。
こんな昔に語られた設定もしっかり回収してくるとは、やはりいにお作品は読みごたえがある。
ひろしが痩せてるのはなんで?
最終話でなれなれしく門出のイヤフォンを外す男。
このムカつくイケメンだれやねん!!ま、まさか門出の愛人…!??って思ったら…
え?ひろし!?? 凰蘭のお兄ちゃんの!??
そう、この世界軸ではひろしは、太ってもいなければ名誉自宅警備員でもない、
ただのイケメンエリートサラリーマンなのである!!最強かよ!!ムカつく~!
ひろしのこの違いに関しても、侵入者が来るか来ないかが大きく関係していると推測される。
11巻のワンシーン。
ブサ犬とともに東京脱出を図っていたひろしだったが、地球終焉の時を悟ったか 、凰蘭に留守電メッセージを残す。
そのなかで、自身が自宅に引きこもるようになった理由として、
「お前はいつでも訳の分からんとっ散らかった妹だったからな。お前が本当の自分を見失わないように道しるべになるべく、おれは家に引きこもっていたんだ。」
と語っている。
そう、世界を壊してしまったのは自分のせいではないのかと、正体不明の不安を抱え、それを振り払うために奇想天外な自分を演出している、そんな凰蘭が、ひろしは心配で仕方がなかったのかもしれない。
7巻あたりの 過去の回想シーンでは、凰蘭は元々、内気で引っ込み思案な女の子として描かれていた。
訳の分からんとっ散らかったことを口走るようになったのは、門出が死んでしまった時間軸から、「侵略者の来る世界」へシフトしてきた際に、
いじめられる門出を守るために、奇想天外な、発狂少女な性格を開花させたという過去がある。
だが、最終話の「侵略者の来ない世界」での門出は、 未来から来た父の助言を受けて、自分から凰蘭に近づき、仲良くなったと考えられる。
つまり、門出が学校で一人ぼっちになる事も無かったため、凰蘭も発狂少女にはならずに、そのまま普通の女の子として成長していたことで、ひろしも安心して社会に出る事が出来たということだろう。
また、門出が死んでしまった世界から凰蘭が時間軸をシフトする際には、ひろしも夏期講習の合宿所があったあの港町に同行していて、
「運命を変えろ。門出を守るために、おまえ自身も変わるんだ。」
とけしかけて、凰蘭を「侵略者が来る世界」へ見送っている。
もしかしたら「侵略者が来る世界」で 凰蘭を待っていたひろしにも、別時間軸からのなんらかの記憶が伝心していて、彼もまた
「凰蘭が、そして世界がこうなってしまったのは自分の責任かもしれない」
という思いを背負い込んでいたのかもしれない。
とりあえず、デブで自宅警備員だったひろしも、イケメンサラリーマンのひろしも、いいやつ過ぎて泣けるぜ…グスッ…涙
まとめ
以上、デデデデ最終巻を読んだ感想と、細かな考察をしてみました!!
なんせ8年という長期連載であったため、最初の方の話とか忘れかけてるんで、まだまだ気付いていない伏線回収とかいっぱいあると思う。
また読み返してみて、なんか見つけたら記事にしよう。
また、僕の稚拙な読解力でなんとなくこんな意味かな~と考えた考察なので、
「これってこういう意味じゃね?」とか、「それは違うんじゃね?」とかあれば、
ぜひぜひコメント欄で教えてくれると嬉しいです。
とにかく、僕の中ではめちゃくちゃいいハッピーエンドだったと思ってる。
いにお作品にしてはめずらしく。
長い間追ってきてよかった。
やっぱりいにおさんが描き出すクソくだらなくて汚くて、それでいて素晴らしい世界が、
僕ァ大好きなんだなァ。
しばらくはデデデデロスにデストロイしながら、浸りながら眠りたいと思います。
最後にこれだけは言わせてくれっ!!
門出とおんたんは、絶対やでっっ!!!!!!!!!
そんなところです。
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コメント一覧
さきほど最終話を読んでから検索しこの記事にたどり着きました!
めーーーっちゃすっきりしました、大大大ハッピーエンドでよかった!
考察ありがとうございました!
やすさんコメントありがとうございます!僕もいにお作品には珍しく(?)ハッピーエンドで嬉しかったです。門出達のその後も垣間見れて、今も彼女たちがどこかで普通に暮らしている気がして、余韻に浸りまくりな最終話でした。とはいえ、僕のつたない読解力で感じた事ですので、いにお氏の真意とは違うかもしれませんが…一考までに!
はじめまして
門出とおんたんがどうなったのか、最後の声は何だったのか…自分では想像がつかなかったので、この記事を読ませていただき「おおお…!!」となりました
考察ありがとうございます。
私も超超超ハッピーエンドだと思います!
にろさんコメントありがとうございます!
自分の拙い読解力によるものなので、果たしていにお氏の真意を考察できているのかどうかは謎ですが…おなじデデデデ好きな皆さんに感想を共感頂けて、とてもうれしいです!今までのいにお作品のなかでも一番優しい最終話だった気がします。長い間読み続けてきてよかった~と思える、いい作品でした!
こんにちは。まとめて読む派なので、最近イッキ読みしました。
作者さんが描かない部分は、描かないことに意味があるのだろうと思っていますので不満はありません。
もうすこしあの世界を見たかった気持ちはあります。
もしよろしかったら…
第3時間軸では「イソベやん」が無いのはなぜなのでしょう。。。
最後にもう一度なにかしらのかたちで「イソベやん」をカギとして使いたかったのだろうとは思うのです。
無いはずのものが有る最後は、想像をかき立て、キレイで心地よいと思います。
でも、あの世界の中での理由付けが分からなくて考えています。
パパさんが目覚めた時点で無くなっていたのだから、それより前の時間に他の誰かが戻って、すでに世界を変えていたのでしょうか?
ポテチやんさんコメントありがとうございます!
イソベやんがいなくなっている点、確かに気になりますよね…
新しい世界で、門出が花沢先生の担当になって、新しい漫画の企画としてSFはどうですか?とプレゼンしますよね。
結局花沢さんに却下されて「ゾンビ映画で一発当てて調子に乗ってやがる。告訴すっか…」との名言がでるシーンですが(笑)
あの時話していた企画の内容が実にイソベやんっぽいなぁとか思ってて、まさかイソベやんの生みの親は門出なのでは…!?
とか勝手に想像して楽しんでたのですが、そうなると侵略者が来る世界との時間のつり合いが合いませんね。また読み返すときの要チェック項目ですね。
1年前のコメントですが失礼します。
あえて「イソベやん」を出さなかった理由は第3時間軸が今まで登場した並行世界より、我々が生きる現実とより近い世界であることを表したかったからではないでしょうか?
根拠としては第3時間軸に登場した漫画「ずんだッチ」のキャラクターの見た目は現実の「ドラえもん」に近づいており、最終話では門出がオウランと自分の名前を使ってアナグラムでドラえもんを表現している。
つまり、我々が今生きている世界は作中に登場した並行世界と隣り合わせであり、誰かのおかげで成り立っているということを表現したかったのではないかと個人的に思っています。