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【ナイロビ/ケニア】アホがスラムに迷い込む話

2020年5月13日

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ナイロビ滞在が長引いている!

国境でビザが取れないスーダンへのビザをナイロビで取ろうとしているのだけれと、遅漏スーダン大使館めがなかなかビザを出さないのだ!!

やれクレジットのコピーをもってこい、パスポートのVISAのコピーをとって来い、と、毎回毎回後付けで追加書類を要求してきやがる!

これではもうさすがに、
“鳴かぬなら、
「無理に笑ってんだろ?泣きたい時はおれの胸の中、飛び込んできていいんだぜ?ほら、こっちこいよ?」ホトトギス。"

の句が全然五七五じゃないことで有名なおれでもさすがに激おこプンプン丸である!

今日も、今回こそはVISAをとれるはずだ!と向かってみると、
「やっぱり飛行機のチケットを購入しないとVISAは出せないわ。」
と突き返された!

この前は飛行機は取らんでええって言うてたやろがぁぁあ!!!!!

とトボトボと宿まで帰ってきたおれ。

くそう。

こんなストレスのたまる日はウィンドウショッピングでもして気持ちを発散するか。。

と、趣味は友達とショッピングに隠れ家カフェ巡りのおしゃれ女子大生なおれは、ネットで見たギコンバマーケットというところへ行ってみることにした。

なんでもここは、ナウいブティックがチョベリバな洋服専門のストリートらしく、いわばナイロビの代官山といったところだろうか?(行ったことないけど)

ダウンタウンの宿から、いつものように無意味にギターを背負っててくてくと歩き続けること20マカロン、ゴミ処理場を抜けると、服やズボンや靴が無造作にドババッ!と置かれた台がひたすらに続く、長いマーケットが姿をあらわす。

….うん。ただのきたねぇ服の山だ。

高校の時に高松で買ったポロシャツを未だに夏服のスタメンとして着ているほどファッションに興味のないおれ。

正味ショッピングなんてしても微塵もテンションは上がらないので、仕方なくオシャレ女子大生とギコンバデートに繰り出したら、の設定で脳内デートを繰り広げるも、

「えーこのワンピ、ポッケのマリメッコがちょーかわいいー!」

「そうだね。」

「このシュシュもやばいよ!ほら!裏側が水玉模様なのー!」

「そうだね。」

「・・・ちょっとなに!?ユウキくん、さっきから、そうだね、ばっかり!私とショッピングするの、そんなに退屈!?」

「そうだね、、あ!じゃなくて!そんな事ないよ!全然そんな事ない!どれもかわいくって、ジョシ子ちゃんにはどれが似合うかなぁなんて、考え事してたんだ!」

「そ、そうなんだ。ならいいんだけど・・それでさっ!私スカート買いたいんだけど、このタイトめの黒のショートのか、この白のロングスカート、どっちが好き??ロングの方が、春服には合わせやすい気がするんだけど、このショートスカートの、チャックの部分がお花のアクセになっててちょーかわいいのーっ!!見てみて!!」

「あーほんと。でも買って他の服と合わないなら意味ないから、ロングスカートでいいんじゃない?」

「えーそうかなっ!?でもこのチャックちょー可愛いんだよ!!ちゃんと見てる!??」

「あー・・なら黒でいいんじゃない?」

「ちょっとなにそれ!?すっごく適当じゃん!!私、次のユウキくんとのデートでなに着て行こうかなって、こんなに真剣に悩んでるのにっ!!なんか、ひどいよ・・・!!」

「ご、ごめん・・・」

…..と喧嘩して険悪な空気になってしまった。

まず女子の言う可愛いとはなんなのだろう?赤ちゃんや子犬が可愛いというのはおれにも理解できるが、裏地のマリメッコが可愛いとはなんぞや?というかまずマリメッコとはなんぞや?ともんもんとした表情で歩いていると、店屋のオヤジに声をかけられる。

「ヘイそこのにいちゃん!どうしたそんな深刻な顔をして、まるで最近トイレに行ったらおしりから出血してて、でも恥ずかしくて誰にも相談できないような表情じゃないか!うちは楽器屋なんだ!ちょっと寄って来なよ!」

「おい!!!それだけはやめろって言うたやろが!!!違う!ただちょっとおしりを怪我してただけだ!痔じゃねぇぞ!痔なんかじゃないんだ!楽器屋だと!?おうよ寄らせろ!!」

と、おれはまるでなにか秘め事をブログかなんかで全国のみんなに公表されてしまったような恥ずかしい気持ちで赤面しながら、店内に入った。

店内にはケニアの伝統楽器だという牛の皮で作った太鼓やようわからん弦楽器、ぺらぺらのギターもあった。


あれだ、あの、なんとかって言う波の音がする楽器。なんか眠くなってくる落ち着く音。

これを子守唄に、演奏する美女のお膝にひざまくらされて眠りたい、いやむしろ美女にひざまくらされてたらそれだけでもいいや、と思わされる素敵な音色だ。

うーん、やっぱり服とかよりもこういう変な楽器屋とか、怪しい小物屋とかのほうがおもしろくておれは好きだなー。やっぱジョシ子ちゃんとは合わないかなぁー。

と、付き合ってもいなければまず出会ってもいない女の子を想像のなかで見限ったおれは、楽器屋を出て、帰ろかな、と歩き出す。

すると!

ん?

通りから一本入った路地に、なにやらドブ川があって。

その川を渡った奥にはいかにもなスラムの家々が見える。

代官山やとか適当に言うてしまったが、この地域はダウンタウンのさらに奥、かなり貧しい人達の暮らすエリア。

ギコンバマーケットぐらいは観光ガイドにも載っている開けた場所であるが、その周りは決して旅行者が遊び半分で入って行くような場所ではないのだ。

だめだぞ。

キベラスラムの時はみんな優しかったが、あの時はガイドもいたし他の日本人メンバーと一緒だったんだ!

でも今は一人きり、いつ強盗や、下手したら殺されるかもしれないんだ!

絶対行っちゃだめなんだ!!!

テクテクテク・・!!!!

意志とは反対におれの足はスラムへと向かっていた!!!!

おーーいっ!!!!!とまれ!とまれぇーい!!

(まぁ真昼間やし、人通りもあるから大丈夫やろ。)

とか思ってた気がする。

いや、これは冗談抜きでほんとに危ない!

本当にこんな事はしてはいけない!

今思えばすごくバカなことしてるんだけれど、この時のおれの中ではそれより好奇心が勝ってしまっていた。

なに写真撮ってんだ!と襲われんように、道に迷って地図を見るふりしながら隠し撮り。

なかなか汚い、しかし、そこにも普通に生活している人達がいるんだなぁ、なんてしみじみ眺める。

壁ごしに子供達からチャイナ!ギターマン!と声をかけられる。

橋を渡って、道をずかずか進む。

途中までは、汚い道端のチャイ屋や焼きとうもろこしの屋台が出てたりして賑わいがあったけれど、さらに奥はもう完全なる居住エリア。


灰色の雲に覆われた空に重い空気が漂っていた。

さすがにそれ以上はいけんで、引き返していると、トラックの荷台でニタニタこっちを眺めてきていた少年たちに声をかけられる。

「ヘイギターマン!レゲエは弾けるか!?俺たちに聴かせてくれよ!」

おうよ任せろ!と一曲、いつものボブマーリーを弾くと(任せろといってもボブマーリーしか知らない)、やんややんやと近所のおやじやおじいちゃんや少年少女が目を輝かせて集まってくる。

こういうエリアの人達の、好奇心は尋常じゃない!

まぁそうだよな。こんな完全ローカルの路地裏でわけわからん外国人が歌ってるなんて、香川の片田舎、丸亀の駅前でジェイソンムラーズが路上ライブしてるようなもんだ。

みんな、

「イェーイ!お前なんてジェイソンムラーズとは月とゴミムシほどの差だが、いいぞチャイナ!もっとやれ!」

と優しく盛り上がってくれる。

のは嬉しいけれど、混雑して細い路地だから車が通れなくなっちまってる!

すぐ、ごめんねー!とギターをしまうと、目の前のおっちゃんに、

「ヘイゴミムシ!楽しいじゃねぇか!向こうにおれの店があるんだ!そこなら広いから思う存分歌えるぜ!来いよ!」

と誘ってもらう。

ここでも、海外の訳のわからんスラムで知らないおじさんについていってはいけないという危険信号よりも、おもしろそう!という好奇心が勝ってしまう。

ほんまに、賢い旅人は絶対真似しちゃだめだぞ!バカだこいつ!

そして、

(これで殺されたりしたら、ワイドショーでこのブログでこんな事書いてたのを取り上げられたりして、ネットで「クレイジージャーニー厨おつwww」とかってこれでもかと叩かれまくるんやろな。。)

とか思いながら落ち込み気味に歩いていくと、路地裏の路肩で変なゴムの切れ端みたいなのを売ってる通りに出た。

その中の一つがおっちゃんの、一応"店"らしくて、歌え歌え!と言うので5曲ほど歌ってみた。

目の前のコンクリの廃墟に声が跳ね返ってきてよく響く。気持ちいいなぁ。

あたりのにいちゃんがおもしろそうに盛り上がってくれたり、家の陰から女の子が警戒しながら顔を出して見ててかわいい。

歌い終えてギターをしまうと、おっちゃんが、お礼だ!とチャイにパン、ブーメランのように長いバナナまで買ってご馳走してくれた。

自分の生活も厳しいだろうに、優しいなぁ。

ありがとうよ!

こちらこそ!

と男握手をしてさようなら。

いやぁ、毎回毎回、こういうエリアへ行くと何かしら楽しい事が起こるので、危ない場所、という認識が、麻痺してきてしまっている気がする。

ほんとに、なにかあってからでは遅いのだ。

いろんな世界に住む人たちと音楽を通して繋がる、というのはこの旅のテーマではあるのだけれど、死んでは元もこもこみちだ。以後、気をつけよ。

でも、今日に関して言えば、人の生き様が作り出す混沌が似合う街、そこにあったのはめんどくさいくらいの人間味と、ピースだった!

わりと好きだな、ナイロビ。

そんなところです。

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ケニア

Posted by gamoyuki