【ナイロビ/ケニア】ナイロビで大道芸人と気持ちばかりのコラボする話
ナイロビ4日目!
今日も路上ライブをしてやろうと飛び出したおれ!
しかし、夕方のダウンタウンの歩道は、溢れかえるほどの人だかり、なかなかいい場所が見つからんなぁ、ここはスペースが少なすぎる、ここは警察が!なんてあれこれ理由をつけて歩く。
くそう!!!!!
わかってんだよ!!!
本当は、怖いだけなんだ!!!
昨日はりょーくんタクくんが付いてきてくれてたからなんかすんなり路上に入れたけど、やっぱこえぇよナイロビ・・・
警察に止められて、ワイロ要求されたらどうしよう!とか、ギャングの奴らに殴りかかられたらどうしよう!とか・・・
これからアフリカ縦断後、ヨーロッパでこのギターだけで生きていっていこうってのに、そんなんでどうすんだ!
覚悟決めやがれこの野郎!
と、自分を追い詰めてみるんだけれど、なんか今日は、「おらー!歌ったるぞ!おれの歌を聴け貴様らー!!」という情熱というか、表現欲というか、そんなのが湧いてこない。
なんだよ、疲れてんのか?
時刻は午後6時。
だいぶ太陽も西の空に傾いて、大都会ナイロビの、高層ビルの隙間から差し込んで、街をオレンジに染めている。
あーもう!
こうやって、飛び出したはいいもののどっちつかずの気持ちになってしまう曖昧な自分がまた出てきてしまった。
じっとりとまとわりつくような心の重さを抱えながら、ビジネス街の噴水のある広場の前で、ぼーっと壁にもたれかかっていた。
通り過ぎる人達を眺める。
キッチリとスーツを着こなしたお兄さんが、高そうな腕時計をせわしなく気にかけながら足早に歩いていく。
綺麗に手入れされた編み込みの髪を揺らしながら、紫のスーツのお姉さんもヒールを鳴らして歩いていく。
カツカツカツカツ‥ カツカツカツカツ‥
だれもが何かに追われてる。
または追いかけている。
何に追われて、何を追いかけているんだろう?
それに捕まった時、あるいは捕まえた時、
なにが俺たちを変えるんだろう?
動きまくる大都会のど真ん中で、一人ギターケースを抱えて立ち尽くす、なんだかおれだけが取り残されているような気分。
小学校2年の子供の頃、九九の暗記のテストで何回も追試を食らって、先生と二人きりになってしまった放課後なんか思い出す。
傾く太陽が大きな窓から差し込んでて、先生が教卓の前で待ってて、おれは窓際の自分の席で泣きそうになってる。
つまらずに九九が言えるまで何度も何度も、やり直しを食らっては席について練習して、練習して。
殺されるんちゃうかというおおげさな絶望感で繰り返す、ヒチヒチシジュウク、ヒチハゴジュウロク、ヒチクロクジュウサン、、、
今でも覚えてるくらい、嫌な時間だった。
言わなきゃ!言わなきゃ!
迫り来る強迫観念。
歌わなきゃ!歌わなきゃ!
なんだよ、楽しく行こうぜ。
のんびり行けばいいじゃない。
なんて、誰かに声をかけて欲しい気分。
「へいフレンド!ギターひくのかい?」
ハッと声の方を見ると一輪車を抱えた青年と、その隣にもう一人。
「うん」
「よし、俺たち今からショーをやるんだけれど、良かったら手伝ってくれよ!」
彼らは大道芸人だった。
人ごみ行き交うこの噴水広場で、
「さあさあ始まるよ!見てって見てって!」
と大声をあげる。
気にもとめず歩いていく人たち。
邪魔だなこいつ、と青年を避けて歩くサラリーマン達。
あぁ、もう笑えるくらい、圧倒的異物感!それでも彼らは気にせず大声を上げる。
やがて一人の優しそうな顔のおじさんが立ち止まって、つられるようにポツリポツリと会社帰りのサラリーマンや買い物帰りのおばちゃんが一人、また一人と立ち止まる。
彼らが陽気に話し出す。
なにを言ってるのかわからんが、時折二人で掛け声のように決めセリフを言って、みんなハハハと笑ってる。
一人が一輪車にのって、その肩ににも一人が乗って漕ぎだすと、もう人ごみは輪を作って彼らを見守っていた。
さっきまでの遺物的な、おかしな光景は無くなってて、そこはエンターテイメントの舞台となった。
一輪車で一通り漕いだ後、簡単なジャグリングをやっている。
いちいち決め台詞を言ってて、みんなキャハハと笑っている。
そんな面白いのか。
呼ばれたはいいがおれもそんな観客の輪の中に混じって、彼らのショーを見ているだけだったんだけれど、
「紹介するぜ、ギターマンだ!」
みたいなこと言って
(きてきて!)
と目で合図された。
なんかようわからんまま、手を上げて登場して、ノーウーマンノークライを歌った。
みんなテンション上がってるもんで、手拍子して迎えてくれて、その間に彼らが「楽しんでくれたならチップを!」みたいなこと言ってお金を集めてる。
すごい!20シリング硬貨(20円)がポンポン飛んでくる!
ありがとうー!と挨拶をして終了!
ばらける人ごみの中で、改めて挨拶をした。
「ありがとうギターマン!俺たち、これから二回戦やるんだけど、よかったらくるかい?」
「もう暗くなるから旅行者は危ない、帰らなきゃ。でもいい経験できたよ!」
彼らの名前はサユンとユセフと言うらしい。
服装からしてそんなに裕福な場所で育ったって感じじゃないけれど、言葉とパフォーマンスで完全にオーディエンスの心をつかんでて、立派だった。
かれらの帽子の中には多分7、800シリングは入ってるんじゃないだろうか?
男二人でも十分三食食える額だ。
がっつり男握手して、また街であったらやろうぜ!おれもストリートでギターを弾いてるんだ!と言葉を交わして手を振った。
正味、ジャグリングも一輪車での芸も、そこまで大した事はやってないのだが、二人のコンビネーションとトークで、あんなに無機質だった都会のサラリーマンたちの足を止めさせて、笑顔を作ってた。
どこで覚えたんだろうか、ただただ手を出して小銭やパン切れをねだるだけのストリートチルドレンも多い中で、彼らのように、人に喜びを与えながらお金を稼ぐ奴らがいるって事が嬉しかったし、すごい!と見習う部分が多かった。
と、同時に、やられたー!!!
と。
今日、おれも歌うつもりだったのに見せつけられたー!!!と。
負けられんな。
ナイロビの夜は本当に危険だ。
昨日もホテルの近くのビルから発砲音が聞こえてた。
暮れかかる太陽に急かされるように、家路を急ぐ。
悔しいー!今頃になって、おれの歌を聞いてくれって、情熱が渦巻いてくる。
明日はやってやる!
見てろよ!
そんな熱さをありがとうサユン、ユセフ!!!
そんなところです。
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