【ナイロビ/ケニア】ナイロビの夜とねぇちゃんの話
日の暮れたナイロビの街。
5年ほど前まで、この街は昼間でも横断歩道を待っている間も羽尾いじめ強盗なんかが頻発してたらしくて、みんなタクシーでしか街を移動できなかったほど、治安が悪かった。
でも、政府の治安改善への対策で、ここ5年ほどでかなり危険なやつらが捕まって、かなり落ち着いたらしい。
でも、今泊まっている日本人バックパッカーに人気の宿、ニューケニアロッジは、危険と言われるダウンタウンのど真ん中に位置しているため、毎日日が暮れる午後7時までには絶対に宿に戻るようにしている。
なんでわざわざそんなとこ泊まるん!!
ってお思いかもしれませんが、たっかいんだよ!!!他の宿!!!
安全と言われるビジネスタウンは、最安で2700シリング、約3000円である!
日本やん!極貧漬物パッカーのおれには絶対無理!!
という事で、一泊750シリングのドミがあるここで、慎重に慎重に暮らしているのである!
っても宿の前がダウンタウンの大通りで、暗くなってから裏路地に入って行ったりしない限りは問題はなさそうなんやけどね。
今も、宿の屋上から暗くなったその大通りを眺めているが、女の子が一人でケータイをいじりながら歩いてるのとか見ると、前評判ほどは治安は悪くないんだろうな。
もちろん俺たちは周りから見たら完全なる旅行者。
彼女らと同じような行動をとってたりしたら一発でやられるという危機感も持ってないといけないし、本当になめてたら危ない場所には変わりないんだが、今日会った日本語の上手なおっちゃんが言ってた。
「ここ数年、ナイロビを訪れる日本人は随分減っちゃった。確かに5年前なんかは本当に危険な町だったんだけれども、それが原因で、"地球の歩き方"知ってるだろ?あれに、
(絶対にダウンタウンは近づくな!)
とか、
(ギャングや盗賊がそこら辺をうろついてる!昼間でも移動はタクシーを!)
とか書かれたもんだから、誰も来なくなっちゃったよ。
今は本当に平和でいい町なんだけれどなぁ。」
うーん、確かに、自分の住む愛する町をこれでもかと悪く書かれたら、気分は良くないよな。
地球の歩き方も、実際に起こったケースを元に、安全に旅行できるようにと慎重な書き方で紹介してるのは良くわかるから、仕方ないんだけれども。
現時点でおれがここナイロビで感じた事は、評判ほど恐ろしい場所じゃなくて、基本的に人はフレンドリーだし、昼間なら人通りの多い場所は全く問題なく歩ける。
むしろ賑わっているダウンタウンよりも、より人通りの少ない郊外の方がちょっと歩くのは怖いと感じる。
おれはここまでなんの被害にも合っていないからこそこんな事が言える訳で、常に警戒心は最大級に持っていないといけないけれど、今泊まっている宿も素晴らしい環境でスタッフも親切なのに、そんな風なイメージで見られているのはなんかもったいない。
ナイロビの場合は一種風評被害みたいな雰囲気もあるので、たいして視聴率もないこんなブログではあるが、
ナイロビ、気をつければいいとこやでー!!!!
と、声を大にして言っておこう!!
あ!!しまったおれがお勧めする町はみんな行きたがらないという前例が!!おれが言う方が風評被害か!?
そんな夜。
おれは屋上からこのダウンタウンの景色を眺めるのが好きだ。
俺たちは夜外は出歩けないから、こうやって夜の世界を眺めるだけでも刺激的だ。
昼間と比べて人通りが少なくなると、車の運転が狂ったように荒くなる。
公共バスやタクシーも御構い無しに、沿道に乗り上げたり、一方通行を逆走したり、歩道をすごいスピードで飛ばして追い抜きをかけたり、やりたい放題!
よくあれで事故にならんな・・
シャッターの締められた商店の前に目をやると、売春婦のねぇちゃんが過ぎ行く男たちに一人一人、声をかけていってる。
精一杯笑顔を作って、男の腕に絡みつく。
離せ!と腕を振りほどかれて、とぼとぼと元の場所に戻ってくる。
金持ちそうなスーツの男を見つけて、また絡みついていく。
また振りほどかれる。
響くクラクションとお金持ちそうな若者のギャハハと笑う声、雑踏のなかで、彼女の姿だけがまるで無音映画のように浮かび上がって見えてしまう。
どんな気持ちなんだろう。
なんでそこまでするんだろう。
自分の体を知らない男に売るって、どんな思いなんだろう。
相当な勇気で声をかけて、腕を振りほどかれて、愛のかけらもなくて。
汚い仕事だな、とか、みじめだな、とかそんな風には全然思わない。
苦しいだろうけど、痛いだろうけど、生きるために、彼女も必死に戦ってんだな。
でも、AIDSが蔓延するこの国。
彼女は知ってるのだろうか?
自分の体を売る事で、自分の命を死に追いやるかもしれない事を。
いや、もしかしたら全部知ってるのかもしれない。
それでもそれしかないのかもしれない。
体を大事に!
とか、
自分を安売りするな!
とか、あったかいご飯を食べられて、寝る場所がある俺たちだから、余裕があるから思えるのかな。
やがて彼女は1人の、コートを羽織った細身のおっちゃんの腕に抱きついて、暗い暗い通りの向こうに消えていった。
いつからか断られてばっかの彼女の事を応援している自分がいたけれど、いざ連れて行かれると、本当にこれでよかったんだろうか?なんて思う。
いまから走って行って男から奪って、抱きしめてあげたくなる。
いや、だれ?って感じよな。
なら代わりに、お金くれるの?って感じよな。
どうかおっちゃんが、コンドームを持ってますように、なんてなぜかおれがバカみたいに焦ってる。
愛のないセックスにコンドームを。
できれば見栄っぱりのチップに少しの愛を添えてほしいな。
彼女がエイズにかかりませんように。
できれば、いつか本当の愛のあるセックスに出会えますように。
声も聞こえない顔もよく見えなかった彼女に感情移入してしまってヘンテコな気持ちになる夜。
後で、宿のオーナーとこの話をした。
一回500シリング(600円)くらいなんだって。
どこまでもどこまでも暗い闇と、無理におちゃらけた笑顔のようなネオンサインが、ナイロビの町を照らしている。
世界は、とんでもなく広い。
そんなところです。
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